ヨーロディア世界編シーン87
遂にフィガーロは消え去り、ヨーロディアの大地は。
そしてユーロは。
俺は、フィガーロの身体を…一刀両断していた。
血しぶきを上げ、そして…フィガーロの断末魔の声は…奴自身と……魔神ドラキュラの身体をを斬った事を意味していたんだ。
斬られた事により身体の維持ができす…更に燃え上がる事で存在自体が困難になる、フィガーロと魔神ドラキュラ。
やがて…灰となり…サラサラと消えていったんだ。
◇
◇
◇
「くっ!!??」
「クロノ様っ!!??」
俺の元にフラフラと駆け寄ってきたのは、リオだ。
俺を、抱き抱えるリオ…彼女の目からは涙が零れる。
「皆…無事か。」
「はい!皆…なんとか……大丈夫です!」
すると、マリアはフラフラと立ち上がる。
「皆…フィガーロは…勇者クロノが倒してくれました…ですが…傷の深い皆を本来なら治療できたハズの私…なのに…ごめんなさい…私に今…魔神が…。」
俺はその時、ふと…頭に思い浮かんだのだ。
(あの時…確か魔神は声をかけてくれてた…よな。)
「マリア…もう一度折れた剣の柄を手にしてみてくれないか?」
「えっ!?わ…分かりました!!」
そう言うと、マリアは折れ残った剣の柄を握る。
すると。
スーッとマリアの頭上から光が差し込んでくる…そして、そこから舞い降りてきたのは。
「セ…セイレス…ペガサス……。」
まるで、天使が舞い降りてきたかのように…マリアの魔神は降りてきたんだ。
すると…マリアはセイレスペガサスの顔を撫でる。
「ありがとう…本当にごめんね……。」
マリアのその一言に、セイレスペガサスは背中の翼を広げると。
翼をふるい飛び上がるセイレスペガサス!
『癒しの光』
ぱぁぁぁーーーーっと光出すセイレスペガサス…すると辺り一体に光は届く…やがて俺達の身体の傷を癒していったんだ。
そして。
◇
◇
◇
「ぐっ!!?くうっっ!!」
「ユーロ様!!???」
俺達はユーロの元に集まっていた。
そして…未だ目を覚まさない妹サキノ。
ユーロのその力も…もう既に風前の灯火といった状態だったんだ。
「はぁ…はぁ…マリア…。」
「はい!ユーロ様!!?」
マリアのセイレスペガサスの力ですら…回復しないユーロの身体。
「よいか…マリアよ…これからはこの俺の代わりに…このヨーロディア…マジェスト本部を頼む。」
「ユーロ様!?そんな事仰らないでください!?」
すると…ユーロは俺に目を向ける。
「クロノ……よ…そして皆……このヨーロディアの為に…その血を流し…戦ってくれた事…本当にありがとう……。」
「ユーロ様っ!!??」
エンポリオは、その巨漢を震わせ…ユーロ様の元で只々…涙を流していた。
「エンポリオ…お前も…本当に強くなった…。」
「はい!僕…ちゃんと!マジェストになれました!」
「ああ…これからのエンポリオにも期待してるぞ。」
「はい!」
そこへ、立ち尽くしていた…アンナの姿。
「アンナも…我がマジェスト協会の為に…ずっとありがとう……。」
「………う………ううっ………はい。」
すると…サキノに目を向けていた、俺とリオ…そしてカルマに声をかけてくるユーロ。
「その娘…フィガーロも言っていたが…聖獣と呼んでいたな…。」
「ああ…でも…傷は回復してるけど…目を…覚まさないんだ…。」
そう言った俺は…腹の底から…悔しく上手く話せていなかった。
「も…もしかしたら…我が同胞…最後の古代魔神『フェニックス』を従える獣人…『アキニー』の元へ行けば…目を覚まさせる何かが…分かるかも知れぬ…アフリエイト…ケニージアを…訪ねるといい…きっと力になってくれる。」
「そう…か……ありがとな!おっさん!」
「ああ…俺こそ…このヨーロディアを救ってくれた事…ありがとう…だが。」
そう言うと…起き上がろうとするユーロ。
「ユーロ様!!???」
よろけるユーロを支えるマリア。
するとユーロは…それを拒む。
「マリア…この地…ヨーロディアは俺が最も愛した国だ…俺は、この地の為に…最後に…何かを残す。」
ユーロは立ち上がると…天を見つめる。
そこには、俺達の乗ってきた機械魔神の残骸が突っ込んだ大穴が空き…天高く青い空が見えていた。
「いつの間にか…魔神の姿も消え…青い空が見えてるの。」
「ユーロ様??」
「あの大空を見ていると…癒しだ…俺はこのヨーロディアが好きなのだ…やはり俺はこの地の民の為に…最後に。」
ユーロは…そう呟く。
震えていたユーロの身体は次第に震えが止まっていた。
すると…すーーーっと両手を広げ上げていく。
天へと…その思いを願うかのように。
すーーーっとユーロの頭上に姿を現す魔神タイガ。
透き通る姿の彼女。
その時…魔神タイガは俺に微笑んだかの様に見えた。
そして。
「魔神タイガよ……今こそ…この俺の残りの生命を使い…このヨーロディア全域の『病』を消す力となってくれ!!!」
「えっ!!??ユーロ様っ!!??」
「「ユーロ様!!??」」
「おっさん!?…いや!ユーロ!!!???」
すると…すーっとユーロの身体も次第に透けていく。
やがて、ユーロとタイガの透き通った身体は重なっていく。
「俺の生命で…この地の民の苦しみが…癒えるのならば…この生命に意味が…ある。」
そして。
「ヨーロディア…に『平和』を。」
キラキラと消えていくユーロと魔神タイガ。
そして二人は…その力をヨーロディア全域に降らせていき……消えていったんだ。
まるで…病を消し去っていく…かのように。
「「ユーロ様ーーーーーーーーー!!??」」
◇
◇
◇
光と共に消えたユーロと魔神タイガ。
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