ヨーロディア世界編シーン84
フィガーロにより噛まれてしまったサキノ。
果てして。
サキノは、涙を流し声を絞り出す。
それは俺の目の前でフィガーロに背後から抱きしめられ…彼女の首に奴の鋭いキバが突き刺さった瞬間だったんだ。
「サキ…ノ……。」
「おにぃ……ちゃん。」
口をパクパクさせ…奴の牙を喉元に突き立てられたサキノの目からは涙が流れる。
微かに聞こえた彼女の声と流した涙。
そして…その光景に俺は…叫んだ。
「サキノーーーーーーーーーーーっ!!??」
◇
◇
◇
俺の身体は震えた。
大切なサキノが目の前であんな事に。
すると、俺の意識は目の前の光景に引き戻される。
奴はサキノの首元に食らいつき…そして恍惚の表情へと変わっていく。
サキノの口の端からすーっと垂れてくる血。
「おお…これが…聖獣の血…ことの他…美味である。」
フィガーロはそう呟きつつもサキノの血液に酔いしれている。
捉えられたサキノは目と口を開き吸われていたがやがてガクリと首を落とす。
「サキノ!!??」
「ククク…見ろ…見ろ見ろ見ろ…ーーーっ!!…。」
そう言い放つとドウーーーーーーッとその力を解放させたフィガーロ。
その力は…あまりにも巨大になっていたんだ。
「おお!!これが獣人の血か…それも聖獣ともなると…これは中々。」
「くっ!!?てめぇ…俺の大事な仲間を!!サキノを!!!!!」
するとフィガーロは余裕な笑みを浮かべる。
「この僕はね…この血をいただく事でその者の力を分析し…全てを知る事ができるのだよ…そしてそこからその力を自分の力へと変える事ができる…ここではユーロ…そしてこの聖獣の血を飲めたんでな……くくく。」
「フザケルナよ…。」
「フン!…弱い奴の遠吠えなどいくらでも吠えるが良い…しかしお前達にはよい素材ばかり揃っているではないか…ここでお前達全員を殺すのは少々勿体ない気もしてきたな…ふむ…それにな…我が魔神ドラキュラは最高硬度に近いとされているボディ…そして血液を操る事のできる凶悪な力をもっている…故に貴様ら等…敵では無い…そしてこうしてまだ生きている小娘の…人質もいるしなぁ…さぁ…ここで負けを認めるが良い。」
フィガーロのその言葉に…俺はすぐ様飛び込めずにいた。
「くっ!?ゆるさねぇ。」
その時。
突然ボコっ!!ッという音を立てフィガーロに飛びかかった男がいた!!
「エンポリオ!!!??」
「はぁぁぁーーーーーーっ!!?僕も、まだお前に屈しないぞーーーーー!!!」
エンポリオは飛び上がり機械魔神具『バトルメイス』を振り翳す。
「なにっ!?奴もマシン兵器を!!??」
「そうだ!!!僕はエンポリオ・イヴレーア!父レオナルド・イヴレーアの意思を継ぎ…その魔神を破壊しにきたんだーーー!!!」
「イヴレーアだと!?」
エンポリオの魔神フェロームが飛び出す!!
「フェローム!!??あれ?そのスタイルは」
エンポリオも驚いている。
『フフン!自分はどうやら、また進化したであります!』
敬礼をするフェロームはフェレットでありながらもミリタリーオタクというそんな男だ。
「フェロームレベルツー!!レベルアップした自分はもっと強いのであります!!」
「クックック…何をするのかと思えば残ったのはこんな魔神だと??フン!イヴレーア家でも親父は確かにこの僕のドラキュラを作った男だ…認めるが…ガキがこの程度の魔神しか作れないとはな…。」
その声にエンポリオは震える。
「父さんは…確かに世界一の科学者だ…お前達に利用されてそんな魔神を作ったけれども…誇り高き科学者なんだ!!!」
「フン!だが貴様はそうではないであろう?まあレオナルドは殺しておいて正解だったがな…この魔神を超えるものなど…誰にも作らせるものか。」
エンポリオはギリリとその拳を握る。
「僕は…僕は…きっとマジェストとしても…ここにいる誰よりもまだ弱い…だけど…だからこそ!!」
エンポリオのバトルメイスはキラリと輝く。
「フェロームレベルツー!!『軟化』」
「何をするのかと思えば…確か情報では硬化させるんだろうが??」
「いや…これでいいんだ。」
すると。
突然魔神ドラキュラの腕が、ぐにゃりと下がると、その力を緩める。
その瞬間…サキノの身体は、すり抜け落ちる!!
「な!なんだと!腕の力が!?」
「クロノ君!!??今だ!!」
「ナイスだ!!エンポリオ!!!」
俺は地を蹴りサキノ救出に向かう!!
そして、弱ったサキノをキャッチすると皆の元へと連れていく。
「クロノ君!!サキノちゃんは私に任せて!」
「頼む…マリア。」
その瞬間!!
激高したフィガーロは暴れ出す!!
「貴様ーーーーーーーーっ!!???」
「ぐっ!!??」
エンポリオの身体は、奴の魔神ドラキュラにより首を捕まれ高々と持ち上げられている。
「エンポリオ!!!??」
「ぐっ!!ぐうぅっ!!??」
締めあげられるエンポリオの身体。
そして、彼ほどの巨体をも持ち上げるドラキュラのパワー。
俺達に為す術は、ないのか!?
◇
◇
◇
お読みくださりありがとうございました!