ヨーロディア世界編シーン78
マリアとユーロの絶体絶命のピンチ…果たして。
「はぁはぁっ…マリア……今何かを感じなかったか??」
「はい、……ユーロ様……これは。」
すると私達の視線の先に感じた何か…それは。
氷像におさまったはずのフィガーロ。
だが周辺から何かの気配を感じる私達。
その時。
「ぐっ!ぐはっ!!???」
「ユーロ様っ!!??」
ユーロ様が突然の吐血。
これは無理をした代償だろう。
そのままユーロ様の身体は床へと沈んでいく。
そして、はぁはぁと肩で深い呼吸をするユーロ様。
私はユーロ様の元へ駆け寄る。
すると私の目の前で吐血を繰り返すユーロ様。
もうここまでとは、酷すぎる事になっている。
私は今…深い悲しみ…そして悔しさの感情しか湧いてこなかった。
私のセイレスペガサスはこの時の為の力なのに。
すると私の視線の先にあったのは折れてしまった私の魔神具。
だが一体…これはどういう事なのだ。
本来なら魔神具も破壊された時点で私の身にも何かが起こるハズなのだがそれが見受けられない。
もしや…セイレスペガサスはまだ生きて…。 私は、もしやと思い引きずる身体を何とか起こし…そして折れた剣の元へ向かい歩き出す。
足には激痛が走るが今はそれどころでは無い。
いつしかあの男フィガーロの攻撃で私も随分ボロボロになっていたようだ。
そして、ようやく私は剣の元に辿り着き手を伸ばした…次の瞬間。
私の身体に異変か起きる!!
「ぐっ!がっ!!」
身体の中に突然感じる熱さ。
これは一体。
すると私は突然の吐き気をもよおすと一気に外へ。
「ぐはっ!!がはっ!!!」
私が吐き出した…その正体はなんと…『血液』。
だがその苦しさはその血液を吐き出した時点で治まる。
これはどういう事だ。
「くっ。何が…おきたの。」
「大丈夫か!?」
「はい…ユーロ様は……はっ!!??」
私は驚き身構えた瞬間。
恐るべき事が目の前で起こったのだ。
私の吐き出した血液。
それがさも、スライムの様に…蠢き始める。
私は嫌な予感がする。
これって…血液って…まさか。
すると私が吐き出した血液は…蠢くと…徐々にそこから大きくなり形取られていく。
さもスライムが人に変化するようなその様。
赤くドス黒いスライムはやがて人型を大きくしていく。
「クク……ククク……あーっはっはっはっは!」
すると人型に戻ったそいつは大声で笑い出す。
そして。
「おお…ユーロ…そしてマリアとか言ったな…褒めてやろう…このフィガーロをここまで追い詰めた事を…。」
「くっ!?フィガーロ!!???」
「まさかとは思ったが…よもや……。」
フィガーロのこのしつこさにユーロ様も力無く震える。
「ほぉ…今のは危なかったなぁ…今の冷気をまともにくらってはこの僕も危うく凍らされる所だったぞ。」
「くっ!!まさか貴様!!??最初から…。」
フィガーロは笑いだし応える。
「ククク…貴様…マリアという母体は中々居心地が良かったぞ…この僕は…そう…そこで戦ってた奴は言わば僕の人形だったんだよ。」
「なにっ!!??」
「僕の人形とずっと戦ってたお前達はとても滑稽だったぞ…そしてこの僕は母体の中に身を潜め観察していたって訳だ。」
私はこの時…本当の恐ろしさを感じてしまっていた…。
そしてふとユーロ様の方へ目を向けていくと…病によるダメージだろう。
ユーロ様も肩で息をしていたのだ。
絶望的なこの状況は私の身体をあっという間に弱らせる。
やがて私の目は虚ろになっていたのだろう。
フィガーロはニヤリと笑みを浮かべる。
「ククク…お前たち二人がここで諦めてしまえば楽になるぞ…そうだなぁ…この僕は自分で言うのもなんだが…優しいと言われるのでな…ユーロ…お前の死は決定だが…女…貴様は僕の召使いとでもなるか!??どうだ??」
フィガーロは私に問いかけている。
その言葉に私は呆然と聞いていた。
こんなにも圧倒的な力の差。
こんな事があってしまうのか。
私は何のためにユーロ様の守り手としてこの場にいるのだ。
苦しむユーロ様。
彼はこのヨーロディアに必要な人なのだ。
力…そして人柄はこのヨーロディアを温かな光でつつみ、そして人々を導いてくれるだろう。
そんな彼を…私がここでこの生命をかけてでも守らなければ。
「我が…魔神……ペガサスよ…最後の力を…ユーロ様を回復せよ。」
すると…光り出す私の剣の欠片。
「なんだと…そうは……させるか!!!!??」
ガバッと私の首を握りしめるフィガーロ。
その力に私の呼吸もままならない。
私は…このまま…死ぬのか。
その時。
「うぉぉぉーーーーーーーーーーーっ!??」
「はっ!??だ、だれだ!!??」
突然聞こえてきた第三者の誰かの声。
ここ…聖なる神殿に誰かが近づいてくる。
すると。
ボゴーーーーーーーンッ!!パラパラパラっと天井に何かが突っ込んだ激しい衝突音と落ちてくる瓦礫。
「だ、だれだ!!??」
私達は天井を見上げる。
すると。
何かから飛び降りてくるその姿は。
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