ヨーロディア世界編シーン68
ディーノ兄弟を倒したクロノ達は。
「うぎぁぁぁーーーーーーっ」というキグナスの断末魔がこの地に鳴り響く。
そしてキグナスの身体は…消えていくのであった。
すると…横たわるケンタウロスから…何かが抜け出てくる。
俺達の目の前には、すぅーっと薄らと姿を現した何か。
それは消えかかる…魔神ケンタウロスの姿。
『魔神…雷武……。』
『何だ……。』
『以前…俺があそこにいる天空の魔神と同じく天然魔神であった頃…お前の話を聞いた事があった…。』
『なにっ………。』
『話では…もっと…傍若無人で…恐ろしい…奴だと聞いていたのだがな…。』
『フン!噂だろ。』
『なぜか…機械化された事で俺はいつしか…魔神としての誇り…そして自我を忘れてしまっていた…俺は元々人間とも相性は良かったのだ…かの魔神対戦でゼルドリスに敗れるまでは。そして俺は敗北後…力無く逃れる為に『ケニージア』に隠れ住んでいた所を…フィガーロにより囚われ…そして機械魔神などと…あの鉄の肉体に変えられてしまっていた…だが俺は戦っているうちに昔の出来事…とある戦士と共に人間の為に戦った…俺はそれをいつしか…思い出していた…楽しかった…心からの友人と切磋琢磨していた日々が…お前達を見ていて、それを思い出した…最後に思い出させてくれた…。』
『てめぇ…さっき…動かなかったのは…もしや…お前の意思だったのか?』
すると…更にうっすらと透明化していく魔神ケンタウロス…不思議とその表情は笑った気がした。
『お前達ならば…あの『フィガーロ』…そして『魔王ゼルドリス』を打ち破る事が出来るかも知れない…世界がそうなれば…またいつか…。』
「ケンタウロス………。」
『…………………………。』
『俺も…お前らの様な友が…もう一度…ほしい…。』
そう言い残し…完全に消え去るケンタウロス。
「行っちまったな…ケンタウロス……。」
『ああ……。』
「よし!これからもよろしくな!雷武!」
『ああ!任せとけ!』
すると…後ろから声をかけてきたのはアンナだった。
「あれ?今思ったんですけど…クロノさんと雷武さんって本当に仲がいいんですね?私も麒麟ちゃんともっと仲良くならなきゃ!」
その一言に俺達は顔が真っ赤になり…一気に我に返る。
「『ンン!!???』」
「俺が…コイツと仲がいい…だって??」
『誰がこんなクソガキと仲がいいだと??』
するとバサリと翼を広げる雷武。
『こんなクソガキ知るか!!お前達!滅ぼすぞ!?』
「てめぇ!そんな事させるか!?クソドラゴン!!??」
『なんだとーーー??』
「なにーーーーーー??」
「すとーーーーっぷ!!!」
『キュッ!!』
俺達の前に立っていたのは…リオとスクエル。
「わぁったよ…。」
『…………チッ。』
「二人とも仲良くしないと怒りますからね!」
「おお!リオさん凄い。」
呆れ顔だったアンナは、リオを褒め称えたのだ。
すると…思い出したかのように叫ぶアンナ。
「あ!こんな場合じゃなかった!すぐにでも出発しないと『マジェスト本部』が!!??」
「そうね!!でもどうやって…間に合わせなきゃ!!!」
「くそっ!?雷武!?ここへ来た時みたいに飛べないか!!??」
『ああん??わりぃ…ちと…力を使いすぎたぜ。』
俺達が困惑していたこの状況…万事休すか…そう思った……その時。
『皆!お待たせ!!!!』
気がつくと…そこに姿がなかったカルマが戻ってくる。
「カルマ??どこにいってたんだ??」
「ええ…皆ちょっとこっちにきて!?」
俺達がカルマについて行くと…そこには俺達の攻撃で吹き飛んで動かなくなったケンタウロスのボディに何かしているエンポリオだった。
「エンポリオ??どうしたんだ??」
俺がそう問いかけるも、その表情は真剣そのものだった。
すると口を開いたのはカルマだった。
「今…エンポリオ君はさっきのクロノ達の話を聞いて…せめて…この魔神だけでも生き返らせようって…」
「でも…アイツ…この機械の身体には怒っていたぜ?」
すると…エンポリオは口を開く。
「クロノ君…確かにそうだね…でもね…僕は機械だって…悪くは無いと思う…機械だって…扱う者の心次第だと…僕はそう思ってるよ。」
俺はそれ以上、何も言えなかった。
確かに…エンポリオの言うように『心』次第だ。
◇
それから暫しの時…エンポリオの声で俺達は移動が可能になる。
「できたーーーーー!!!」
「エンポリオ!!??」
「エンポリオ君!!??」
「これは僕達を『マジェスト本部』まで運んでくれる機械魔神『ケンタウロス改』!!これなら僕達は一気に飛べる!!』
「おおーーーっ!!すげぇぜエンポリオ!!」
「本当にすごい。」
「よし!これなら!!!」
「おう!皆!!いざ!!『マジェスト本部』へ…行くぜ!!」
◇
◇
◇
こうして俺達は『ヨーロディア、マジェスト本部』へと向かったんだ!!