ヨーロディア世界編シーン67
サキノを救ったクロノは。
はたして。
俺が斬ったのは…ディーノ兄弟の兄…キグナスの腕の全て。
キグナスの叫び声は、辺り一帯に響き渡る。
「ぎゃあああああああああーーー!!!??」
俺は、サキノから手を離す。
「お兄ちゃん…。」
「サキノ…もう大丈夫だから…ちょっと離れてろ。」
「うん…お兄ちゃん…やっぱりサキノ…」
そう言うと、モジモジ恥ずかしそうにしているサキノ。
「どした??」
「ん!にゅっ。」
俺の問いに突然、俺の手を引くサキノ。
バランスを崩しそうになる俺。
「おわっ!?なんだ!?」
次の瞬間…俺の目にはサキノの桃色の唇が見えた。
「ちゅ!」
「あ……。」
「助けてくれてありがと…お兄ちゃん大好き」
そう告げたサキノは、顔を赤らめる。
突然の事で、思わず照れてしまう俺。
次の瞬間…後ろから殺気を感じる気配が二つ。
一つは…リオ。
そして…もう一つは。
魔神の腕を斬り落とされ…怒り狂ったキグナスだった。
「貴様、これくらいで俺達を倒せるとでも思ってるのか!?」
「ああ!思ってるぜ??」
「いいか?お前達が死ぬ前に、これから絶望的な話をしてやろう…」
「はぁ??何言ってるんだ??」
すると…ニヤリと笑ったキグナスは語る。
「クックック…今更…だがな…俺達…ディーノ兄弟は……囮だ。」
「なにっ!!??」
「………………………!!!????」
俺、そして皆も奴の言葉に衝撃を受ける。
すると…何かを察したエンポリオが叫ぶ。
「どういう事だ!!???」
「ククク……いいか…俺達のボス…『フィガーロ』様は狡猾だ…まずはこのヨーロディアに魔神を使い…『病』を起こした…もちろん始まりは貴様らのボスであろう…『ユーロ』それから魔神はこの地にバラ撒くために飛び立った…そしてあの時…俺達兄弟はお前らにマジェスト協会で顔見せしたのだ…まあ初めはユーロにトドメを刺すつもりで行ったのだがな…そして案の定、自分の病が深刻だと察したユーロはまんまとヨーロディアの国民を案じ…調査を名目に、お前達を各地に放った…。」
そこまで語ったキグナスにアンナは問いかける。
「それじゃあ…これは罠だった……そういう事なの!!??」
「ふん…今頃気づくとはな…だが…もう遅いぜぇ…………。」
ニヤリと醜悪な表情をすると…奴は続ける。
「今頃…俺達のボス…「フィガーロ」様は直々に……ユーロにトドメを刺しに向かっただろうなぁ………クックック。」
「馬鹿な……じゃあ今頃ヨーロディアのマジェスト協会本部は。ユーロ様とマリア様は!?」
エンポリオの問いに応えるキグナス。
「今頃…どうなってるかなぁ…女の方は…命乞いでもして泣き叫んでるか……そして…ユーロは死んでるか…だなぁ。」
「くっ!!??行かなきゃ!!!!」
「ああ!エンポリオ!行く為の最速手段って何か無いか!?」
「クロノ君…でも…今から行っても僕の車でも…この『ドイツェール』からでは最速でも三日くらいはかかってしまう!」
「リオ!?スクエルではどうだ!!??」
すると…リオは残念そうな表情をしている。
「スクエルで移動してもすぐにつけるわけでは…。」
「お兄ちゃん!カラーウルフも一人乗りだし!」
「ああ…わかってる…くそっ。」
打つ手なしか。
俺は拳を握るもいい手が浮かばない。
すると…奴は下卑た表情で言葉を並べる。
「クックック……この企ては初めから仕組んでたものだ…お前らが飄々と我らの企てに乗っかってきてくれてたのには笑いしか出てこなかったぜ…愉快だったぜ!?必死に必死に戦ってたお前らに俺は笑いが込み上げてきてた…。」
「なんだと。」
「これが現実だ…我らが組織『フィリアーム』に逆らった事…全員……あの世で悔やむがいい!!!」
するとキグナスの身体は、ガシャリガシャリと機械化し巨大化していく。
「うらーーーーっ!?さぁ…死ぬがいい!!我が魔神ケンタウロス…『マシン…アローTheレイン』!!ん?!!!」
よく見ると、魔神ケンタウロスの身体の動きがぎこちない。
「なん………だ??」
『………チッ…そういう事か。おい!クロノ…』
『ん?………。』
俺は雷武より、とある話を聞きかけた…だが今はそれどころでは無かった。
雨の様に宙から降り注いでくる矢の雨は、俺達に向かい降り注ぐ。
流石にこれは…ヤバい。
「ちっ!何か身体が少しおかしいがまぁいい…ふん!……お前達はもう終わりだ…そしてお前達のマジェスト協会も無くなる…絶望しろ…絶望しろ…絶望しろーーーーー!!??」
その瞬間…また俺の中に聞こえる雷武の声…それは先程の続きだった。
『アイツの魔神…おかしな身体に変えられてるよな…。』
「は?なんだ突然…雷武。」
『俺達魔神は元々自我を持ってる奴が多い…』
「お……おう?」
『それをあんなおかしな身体に変えられてる…。』
「どういう事だ?」
『あのケンタウロスはずっと、訴えかけてきてたのだ…あの身体を…勝手に変えた奴が許せないと。』
「それは。」
『奴も誇り高き俺達と同じ魔神。その身体《誇り》を好き勝手に変えた…本来強さとは…己が努力し身につけるもの…それをおかしな力で身につけた力など…認めたくないと…それを機械化させる事によって強要した奴らが許せないって事だ!!!』
「雷武…わかった。」
『行くぞクロノ…ケンタウロスの身体を解放させてやる。』
キグナスは動き出し矢と共に自身の攻撃も加えてくる。
機械を変形させ俺に襲いかかるキグナス。
「喰らえーーーーっ!!??」
「武神流…魔神『亜羽多竜』」
俺が刀を回転させる…すると…雷武の身体は分裂する。
次の瞬間…刀の刀身は多重に分裂している。
俺は刀を握り返すと奴に向かい飛ぶ!!
そして、俺の刃は…奴の右肩に斬り込むと振り斬っていく。
「はぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!??」
そして。
俺の刀の刀身は、カチャっと鞘におさまる。
「うぎぁぁぁーーーーーーーーーっ!!??」
全ての矢は叩き落とされ…そして…奴の身体は粉々に消え去ったのだ。
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