ヨーロディア世界編シーン59
エンポリオは自分の思いを胸に。
エンポリオ視点
僕達の戦っている相手…ディーノ兄弟。
こちらもボロボロになっているけど、ここで負ける訳にはいかない。
見た所…奴らの魔神のマシーンボディは、僕の技術よりも、はるかに上だった。
それは機械工学に精通したものならば、見れば分かるものだった。
だけど…。
「クックック…お前達が、どう頑張った所で、俺達に勝てるはずがないだろう?」
「それはどうかしら…。」
カルマさんは反論すると、ロッジに向かい斬りかかる。
「たぁぁぁーーーーーーっ!!!」
ガキィィィーーーーーーーーーんと、その衝撃からの風圧がこちらまで届きそうだ。
すると、アンナさんの声が聞こえてくる。
「貴方の相手な私達よ!!」
アンナさん達はもう一人の敵、キグナスと戦っていた。
素早いカルマさんの動きに、それを見ていたキグナスは…にやりと笑みを浮かべる。
(なんだ……あのキグナスの余裕そうな顔は…)
僕はキグナスの表情に一抹の不安を感じた。
だけど流石はカルマさんだ。
その攻撃にスキはない。
そして向こうでは、サキノちゃんの姿も。
「はぁぁーーっ!カラーウルフ!いっけぇ!」
そう…皆が戦ってる。
あんな小さなサキノちゃん…そしてあの子達も、ここにはいるんだ。
あの子達とは、僕達の遙か後方に退けたレオン君とソフィアちゃんの事。
僕は彼らを見ていると…幼き自分が重なる。
幼い時に奪われた両親。
僕にとってのそれは、あの子達と同じだった。
だけど僕は、父さん譲りの力を得た。
「父さん………僕は……。」
僕の魔神具『バトルメイス』と同化している魔神フェローズは、努力家で熱血感溢れる熱い男だ。
僕は…バトルメイスを振り上げていく。
すると…敵であるロッジが叫ぶ。
「おんなぁ!!!はっはっは…中々やるじゃねぇか…だが、そんなんじゃ、まだまだ俺様には届かないぜぇ。」
「くっ!!だけど、私も負けない!!!」
全く体躯の違う、ロッジとの戦いに苦戦するカルマさん。
次の瞬間。
カルマさんは身構えると…彼女の技が繰り出される。
「フェリス…ムーン…スラスト!!!!!」
激しいレイピアによる突き攻撃。
すると…ロッジの身体に、次々とヒットしていくカルマさんの攻撃。
それはロッジの鋼鉄のボディにも、僅かながら効いている気がする。
「くっ!なにっ!!??」
「はぁぁぁぁーーーっ!!」
カルマさんは押していた…その時。
「いくわ!!麒麟ちゃん!?」
アンナさんの声に、僕は視線をそちらに向けると魔神麒麟はアンナさんのボウガンから放たれる。
巨大なキグナスの魔神ケンタウルスもマシーン化している。
「あいつもマシーン化してる…しかも両方ともその技術は凄い。」
二人の魔神の高度な技術力の結晶に、こんな時にも関わらず、僕はつい見入ってしまう。
しかし。
「麒麟ちゃん!!今よ!!」
『よぉし!!僕がいっくよーーー!!!』
その声と共に魔神麒麟は、まるでミサイルのように飛んでいく…そしてケンタウルスのボディに激しくヒットする。
「うぐぐ…………………。」
ケンタウルスも更に、その身体を後退され始める。
そこへ。
「アンナお姉ちゃん!!カラーウルフ!!!」
「サキノちゃん!お願いっ!!??」
サキノちゃんのカラーウルフが飛び上がるとその身体に炎を纏う。
「イエローファイアーーーーーー!!!!!」
更に黄色に変色した炎が、ケンタウルスの身体を包み込む!!!
激しい炎に包まれるケンタウルスは、悶え動く。
そして、ズシーーーーンッと地に倒れるケンタウルス。
「これは。」
ボロボロになった二人も…こうして必死に戦っている。
そしてカルマさんも。
「はぁぁーーっ!!!!!」
カルマさんの…フェリスゆずりの剣技は流石だ。
ミノタウロスの鋼鉄のボディを徐々にだが、押し出していく。
「ぐっ!いつまでも…調子に乗るなよ……。」
ロッジがそう一言呟いたのを、僕は聞き逃さなかった。
これは。
ロッジが反撃の狼煙を上げた気がした。
僕は、再びバトルメイスを構える。
バトルメイスから感じる力は、僕の相棒フェローズの力。
僕はもう…マジェストになったんだ。
ずっと、僕が憧れ続けてきたマジェスト。
そう…そして今ここに、マジェストになって…その力で人を守りたいと希望の目で見ている…幼い彼が見ているんだ。
「うぉぉぉーーーーーっ!!レオン君!!?」
「エンポリオ…さん。」
「よく、見ているんだ……これが君が目指す…」
僕の身体中に光が注ぎ込まれ…そして力が溢れだしてくる。
「あーーーん?貴様!?なんだその力!?」
そう…このディーノ兄弟との、以前の戦いの時には、まだなかった…この力。
「マジェストの力だ!!!!!」
僕の魔神フェローズのその力は…物質に対しての『硬化』と『軟化』
鋼鉄をも粉砕可能なこの力は。
「フェローズ!『硬化』!!!」
「金剛鬼力!!!」
僕のメイスは硬化により光り輝く…そして力を圧縮させたメイスを構えると攻撃に移る。
そして僕のメイスによる激しい攻撃!!!
それは…激しくミノタウロスの身体を叩き潰していく。
やがてミノタウロスの鋼鉄の身体はボコボコに潰れていく。
「はぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!!!!」
「ぐおおおおっ!!?ぐはあああーーっ!!」
そして…ミノタウロスの体は吹き飛んだんだ。
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