ヨーロディア世界編シーン54
ボロボロのエンポリオ。
そしてきたない強敵。
はてして。
私達の目の前で、力尽き倒れたフェリスとフェローズ君。
そして私達も。
◇
「くっ…あ……エンポリオ……君……………。」
「カルマ………さん………………。」
私達の身体は吹き飛ばされ、壁に叩きつけられてしまう。
いつもならこれくらい何でもなかったはず…でも今は…『ソフィア』ちゃんを人質として捕らわれてしまっている私達は敵の思うがままになっている。
「ククク……いいねぇ…どんなにお前達が強くてもなぁ…こっちは不死身だ…それにこっちには切り札もある…そして今の俺は…別れていた身体を共に戻す事により……。」
「…………………………………………………。」
ゴゴゴとゲルハルトのゾンビの身体は変化していく…。
さっきの戦いで傷を負っていた、その身体は飛んできて足元に転がっていたのだ。
ゲルハルトは足元からその身体を取り込んでいく。
見る見るうちに肉片は、その身体に吸収されていき……そして。
これまでとは違う巨大な力へと変わっていった…そして奴の身体に受けたダメージは見る見るうちに神々しく回復も…していったようだ。
「うがぁぁぁぁぁーーーーーーー!!!??」
ゲルハルトは叫ぶ。
その力を誇示するかのような咆哮は辺り一面に音が響き渡る。
先程までも、その力は脅威的なものだったがその力よりも益々パワーアップしたようだ。
するとゲルハルトはニヤリと笑うと口を開く。
「クックック…どうだ…さっきは貴様らに俺様の真の力を発揮できなかったが…こうなったからは………。」
急激に溢れ出すゲルハルトの力。
人智を超えたその力に私達は身体が勝手に震え出してしまう。
しかも今現在、人質を捕らえてしまっているその状況に私も次第に絶望感が生まれる。
「もぅ…これは……ダメ……かもしれない……。」
「マ…マ………………。」
「………ソフィ…ア…ちゃん。」
その時…気を失っていたソフィアちゃんが目を覚まし私に声をかけてくれていた。
「ママ……パパも……………ごめん……ね。」
「ソ…フィア………ちゃん??」
「わ…たしが…つかまっ…てなかったら……たたかえる……の……に。」
そう言ってくれたソフィアちゃんの目から涙が溢れ出す。
「わたしが!!捕まらなかったらパパもママもこんなにならなかったぁーーーーー!!!!」
「「………………………………………!!!???」」
私はその声に、声がつまる。
こんなに小さくて力もない、あのソフィアちゃんが…こんな事を言ってくれるだなんて………。
その気持ちだけで私は震えを感じる。
するとゲルハルトは醜悪な笑みを浮かべる。
「クックック…はぁ?お前…何言ってるんだ?お前には元々親はいねーじゃねーか…だからあの孤児院に拾われてたんだろ???」
ゲルハルトのそのあまりにも身勝手な苛立つセリフに私は悔しくて仕方がなかった。
するとゲルハルトは更に言葉を続ける。
「そう…だなぁ…お前は大きくなったらいい女になりそうだしな…そして…そこの女も俺様に命乞いでもしてみろよ…そうしたら…お前ら二人だけは助けてやるか……さぁ…女…。」
ゲルハルトは、そこまで言うとその瞬間。
「うぐっ!!??」
私の身体に突然の何かが巻き付いてきたの。
すると私は身体の自由を奪われる。
「うあっ!くぅぅぅっ!!??」
「ママ!!!??」
「カルマさんっ!!??」
魔神が倒されてしまっている私達…絶望感が私を襲う。
そこへ。
「カルマさんっ!!??」
「カルマおねぇ……ちゃん。」
「ソフィア……。」
駆けつけてくれたアンナさん達。
すると…ゲルハルトは笑い出す。
「ククク…遅かったなお前達……だが…一足遅かったようだな…これから俺様はこの女を俺様の物にするんだ…そこで大人しく…見ていろよ。」
ゲルハルトのその声に誰も動く事が出来ずにいた。
「おい……。」
「はぁ???」
ゲルハルトは後ろを振り向くとそこにはボロボロのエンポリオ君の姿。
彼は血まみれのその姿でゲルハルトを睨みつけている。
「僕は今まで…人を憎むなんて事を…本気で思った事は無かった…まして人にキレるなんて事も無かった…。」
「だからなんだよ?もう、てめぇに戦う力なんてないだろーーーがーーーーーー???」
ゲルハルトの怒号が辺りに響く。
「あるさ…戦う力ならまだ!!!!!」
エンポリオ君は叫ぶと取り出した魔神具『バトルメイス』を構える。
「あるんだーーーーーーーーーー!!!!!」
カチリと何かのスイッチを入れるエンポリオ君。
辺りに眩い光が溢れ出す。
◇
◇
◇
エンポリオは果たして??
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