ヨーロディア世界編シーン52
サキノは頑張った。
そして。
サキノちゃんの決死の攻撃はゲルハルトの身体を攻撃する!!
「ぐはぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ!!」
その瞬間。
私とカルマちゃんの身体も解放される。
「解けたわ!!サキノちゃん!?」
「アンナさん!サキノちゃんをお願い!私はハンナさん達の身体を保護します!」
「分かった!」
私達は次なる攻撃に備えようと身構えながらもしぶといであろうゲルハルトがまた起き上がるのではないかと考えてしまう。
ゲルハルトはその身体を燃やされる。
先程までとは違いその炎は赤からやがて…黄色の炎へと変色している。
それは。
サキノちゃんのパワーアップを物語る。
「凄いわ…サキノちゃん。」
すると私の声に反応するようにアイツは。
「ぐっ……ぐぬぬ………ぐああああっ!!??」
ゲルハルトは身体からプスプスと煙を上げている。
肩で息をしながら悶えるゲルハルト…。
すると。
次の瞬間…サキノちゃんの身体はゆっくりと倒れていく。
「サキノちゃん!!???」
私は走り出しサキノちゃんの身体を支える。
フラフラとそして震える身体はいつ気絶してもおかしくなさそうな程に疲れ切っていたの。
私が支えるとサキノちゃんの身体は私に全体重をあずけている。
「サキノ……ちゃん…………。」
「お……ねぇ…………ちゃん…………。」
「大丈夫よ…私達を自由にしてくれて…本当にありがとう…………。」
「うう…ん……私…がんばったんだぁ……。」
「うん……」
「お姉ちゃん…も……皆も大好き……だもん。」
「サキノちゃん…私もサキノちゃん大好きよ。」
「ありがとう…お姉ちゃん。」
するとサキノちゃんからガクりと力が抜ける。
「サキノちゃん…………。」
私は気を失ったサキノちゃんを静かに床に寝かせ立ち上がる。
「ぐっ………貴様ら……………。」
「貴方は…私の大切な妹をこんなに痛めつけてくれた。」
「なんだと……。」
ゲルハルトは私を睨むと身体から力を解放する。
「ぐあああああああああああーーーっ!!?」
ぐにゃぐにゃと足元の肉塊は彼の足から吸い付いていきその肉体を再構築していく。
「………………………………………。」
「アンナさんっ!!???」
ハンナさん達の身体を寝かせたカルマちゃんの声も聞こえる。
「カルマさん…ここは私がやります。」
「アンナさん……分かりました。」
カルマさんは私の思いをきっと感じ取ってくれたんだと思う。
そして…私の手にはいつしか天空のボウガンが握りしめられていたの。
(麒麟ちゃん……ありがと…お願い…力を貸して。)
私はそう祈りを込めるとゲルハルトに向かい走り出す。
するとゲルハルトは口を開く。
「ククク…何度倒しても…俺様は復活する。」
「….……………………………………」
「それが…このゾンビマスターだ!!!!!」
「サキノちゃんは…私達を守る為に…その力の全てを出し切り…私達を救ってくれた…そんな彼女の為に…私は負けない!!!!!」
私の身体に風が舞う。
すると…麒麟ちゃんが私の頭上からすーっと降りてくる。
(アンナァ……サキノ…僕もだいすきぃ。)
「うんっ!私も。」
麒麟ちゃんの笑顔に私も笑みが零れる。
そして麒麟ちゃんはすーっとボウガンの中に消えていく。
風が巻き起こり私の身体を包み込む。
「なん…だ……その風から感じる激しい力は……。」
こちらを見ていたゲルハルトが叫ぶ。
「何だって…言ってるんだーーーーー!!!」
ゲルハルトに向かい私の身体はボウガンを構える。
ボウガンから感じる麒麟ちゃんの力。
いつも以上に強力に感じるその風は。
突然…止んだの。
ゲルハルトはニヤリと笑みを浮かべると私にすかさず飛びかかってくる。
だけれど……。
ゲルハルトの身体はふわりとまるで時が止まったかのようにゆっくりと動いている。
そう…いうなればこれはスローモーションというものに近い。
私の怒りを感じ取った麒麟ちゃんの圧倒的な力は空間をも支配していた。
風により重力は歪みゲルハルトの身体は巨大な風船…といったところだ。
「麒麟ちゃん…いくわ…………。」
『風鈴』
カランカランッと風の音が辺りにコダマする。
そして。
一気に風はゲルハルトの身体の周囲に激しく巻き起こる。
ズシャシャシャーーーッ!!っという激しい風はゲルハルトの身体を切り刻んでいく。
「ぐぎゃあああああーーーーーーーっ!!!」
ゲルハルトの身体は切り刻まれると…滞空している。
「やっ……たわ…………。」
私はそう確信する。
ところが……次の瞬間。
ボコっボコっとゲルハルトの身体は再生する事無く宙に漂う。
すると、聞こえてくるゲルハルトの声。
『ぐああああーーっ!許さん!許さんぞーーーーーーーーっ!!!!!』
その一声を残すと飛び去る肉片と化したゲルハルト!!!
「向こうは!!!???」
「エンポリオ君の行った方向だわ!!!」
カルマちゃんはそう叫ぶと飛び出していく。
そして私は…すーっと身体から力が抜けていった。
「アン…ナ……おねぇ…ちゃん………。」
「大丈夫…よ……サキノちゃん…少しここで…休もう。」
私の意識は飛んでしまっていたの。
◇
◇
◇
サキノ…そしてアンナからも大ダメージを受けたゲルハルトは逃亡を図る。
果たしてどうなる!?