ヨーロディア世界編シーン51
皆のために立ち上がるサキノ。
果たして。
アンナ視点
私はゲルハルトに変わり、いつしか生み出されたゾンビに捕まってしまっていた。
あまりにもゲスなゲルハルトに皆が怒りを露わにしていたと思う。
その時…サキノちゃんの身体から凄まじい力が溢れ出したの。
「サキノちゃん!!??」
「サキ……ノ……??」
私達の目に映ったのは。
なんと…獣人化したサキノちゃんの姿。
「う……ううううぅぅ……………………。」
彼女の体毛が全身に生え揃いだし…いつもぺたんっと収納されている事が多い耳はピンッと立ち上がり四足で構えるサキノちゃん。
その声も低い唸り声のような声をあげていたの。
これは彼女の新たな進化…なのかもしれない。
「獣人………だと??」
サキノちゃんの獣人化したその姿に驚きの表情を浮かべるゲルハルト。
すると…ふぅふぅと息を吐きながらサキノちゃんはゆっくりと息を整えている。
「サキノちゃん!!??」
「サキノちゃん!私達の事…分かる!!??」
私に続きカルマちゃんがそう問いかける。
その時…彼女は一瞬…こちらを見た気がしたの。
「サキノちゃん………?」
「私達の事分かってるの…かも。」
「アンナさん?」
「あれは…自分の…本来の獣人の力を解放したのかも知れませんね。」
私の中でそんな考えが浮かぶ。
私はここに来るまでサキノちゃんのこれまでの話を聞いてきた。
自分が犬の獣人である事。
両親はサキノちゃんを庇いながら天国へ行ってしまった事。
そして逆らう事も出来ずにいた所をクロノさん達に救われた事。
サキノちゃんは元々、戦いなんて好きじゃない…絵が大好きで…美味しいものが大好きで…。
そして元気いっぱいな彼女。
そんなどこにでもいる普通の女の子なの。
彼女は優しくて…こんな私を姉と慕ってくれて…とても素敵な愛すべき存在。
そんなサキノちゃんは今…覚悟を決めるかのように…皆の為に、獣人の姿に身体を変化させているの。
するとそんなサキノちゃんに奴は叫ぶ。
「なんだぁ??その姿は…ただ獣人になっただけじゃあねぇか?脅かしやがって。」
ゲルハルトはそう言うとそんなサキノちゃんの元へ近づいていく。
「サキノちゃん!??」
「やめて!今のサキノちゃんは何も分かってないはずよ!」
私のその声にニヤリと口を開くゲルハルト。
「そうだよなぁ??ただ獣人に変化しただけじゃ…この俺様は…たおせねぇぜ??」
そう言い放つと…ゲルハルトは自分の身体を変化させていく。
ゾンビである奴の身体が急に溶けだす。
すると、奴の身体は足元から溶けて崩れていく。
「えっ!?なに?」
「ゾンビとして…身体を溶かした……の…?」
すると。
溶け崩れたゾンビの身体は次第にモコモコとその肉塊を形づくりまた…身体を再構築していっているようだ。
やがてその身体は肉体を生成していく。
そしてそこに立っていたのは。
「くくく……我が名はゾンビマスター……そしてこちらの身体は『ゾンビウィシュ』である!!!!!」
巨大な怪鳥の姿のゾンビ。
今まさに…その化け物は中へと飛び、私達を見下ろしていたのだ。
動けない私達を残し…サキノちゃんは立ち向かおうとしている。
「どうだ??俺様がここまで進化したらもうお前達に勝ち目は無い…後悔して…俺様のゾンビと化すがいい!!」
すると、空中でホバリングしているゾンビがサキノちゃん目掛け襲いかかる!!!
「「サキノちゃん!!!???」」
その瞬間。サキノちゃんの身体は光り出す。
そして彼女の身体から何かが飛び出す。
すーっと…サキノちゃんの身体に舞い降りる何か。
それは。
「カラーウルフ!!???そして…牙。」
サキノちゃんの口からそう聞こえた気がした。
すると、サキノちゃんと同化していく…謎の魔神具であろうか…その牙とカラーウルフ。
サキノちゃんとカラーウルフの声が重なり…耳に届く。
『牙狼……弍……炎』
「う……あううううう……………っ。」
その瞬間…カラーウルフと同化したサキノちゃんの身体は炎を身体に纏わせる。
「ふん!それがどうした??小さなお前に、この俺様を倒せる力がある訳がなかろう…。」
ゾンビウィッシュは急降下しサキノちゃんを狙う。
ギュンッとその攻撃は凄まじくサキノちゃんの身体を軽く粉砕しそうな勢いだ。
サキノちゃんは、その身体のメラメラと燃えている炎を更に巨大化させる。
すると、これまでの炎とは明らかに違うその力は…言葉にすれば…そう…『爆炎』
「ううううぅぅーーーっ!!!!!!」
爆炎を纏ったサキノちゃんは奴目掛け飛びかかる。
そして…飛び散る炎はゾンビ化した彼女らの動きを止める。
ゾンビ達から解放された私達。
そして私達は叫ぶ。
「サキノちゃん!!!!?!?」
「サキノちゃんーーーーー!!!」
◇
◇
◇
お読み下さりありがとうございました!