ヨーロディア世界編シーン45
次にドイツェルンに到着したのは。
「エンポリオ君…ここが………!?」
「うん!着いたよカルマさん…ここが北の街…ドイツェルンだよ。」
私達はエンポリオ君の車でやっとドイツェルンに辿り着いたの。
車を降り街中を見渡す。
すると…至る所がボロボロで瓦礫の山があちこちにでき、そして歩く人々はどこかフラフラと歩いている様に見える。
街中あちらこちらに立っている兵士達。
「凄い物騒ね。」
「そうだね?カルマさん…ハグれないようにしてね…この街には物乞いとかも多いしさ。」
エンポリオ君はそう返してくれる…すると…私の目に映った一人の少女の姿。
「あれっ!!??カルマさん!!??」
エンポリオ君が私を呼ぶ声が聞こえたけれど私は少女の元を目指していたの。
「カルマさん!?」
エンポリオ君の声がさっきより近くで聞こえてきたのは私に着いてきたからだ。
私の目の前には…ボロボロの洋服を身につけ…道行く人に声をかけていた一人の少女が立っていたの。
「カルマさん…言ったばかりなのに。」
「あ!エンポリオ君…ごめんね…どうしてもあの子がほおって置けなくて。」
「まぁ…そこがカルマさんのいい所なんだけどね?」
「ありがと…ちょっと声かけてみるね。」
私は震えながらこちらを見ている少女に声をかける。
「お嬢さん?…お姉さん達に、ここで何してるのか話せるかなぁ??」
すると…少女は驚いた表情を見せると口を開いたの。
◇
少女の話。
彼女は生まれてすぐに親に捨てられ孤児院のお姉さんに拾われたという。
そして彼女は孤児院で暮らしてきたが…とある事件が起こり…逃れる様に出てきた…という話だったの。
◇
「ねぇ…とある事件って言うのはどういうことなのかな?お姉さんに言える?」
私がそう問いかけると少女は俯きぷるぷると震える。
すると彼女は、ぐすぐすっと涙を流し始める。
「えっ!?」
「わたし………。」
◇
少女が再び語ってくれた話。
それは涙と嗚咽まじりで話してくれたの。
彼女がいた孤児院では貧しいながらも一人のお姉さんが世話をしてくれていたという…そこで暮らしていたのはお姉さんも入れて七人の少年少女。
長兄的な一番年上だったのは『レオン』という少年。
そして彼女は一番年下…名前は『ソフィア』。
お姉さんはソフィア達の本当の母親のように育ててくれたという。
そんな穏やかな暮らしを送っていたこの子達に突然の悲劇が起こる。
この街では十歳になると誰もが徴兵されるらしいの。
すると孤児院の話をどこで聞いたのか…『レオン』という少年が徴兵される年齢で、ここに匿われているという噂はどこからともなく役人の耳に入ったのだろう…突然施設に兵隊はやってきた。
この街では徴兵は当然と言えば当然の話。
だが…お姉さんはその少年を逃す為に身を呈して庇ったらしい。
その時ソフィアだけは寝ていて偶然その場にいなかった。
ソフィアは突然入ってきた兵隊の怒号に目を覚ますと何が起こったのかを確かめに行く事にした…そして彼女が行ってみるとそこで事件が起こったらしい。
「そっか…そんな事があったのね。」
「うん……私は怖くて…動けなくて、こっそり見ていたら…皆そして…ママも撃たれて…恐ろしくて部屋に戻ろうとしたけど…震えて動けなかったの…その隙に『レオン』お兄ちゃんは逃げたみたいで…兵隊さんはお兄ちゃんを追って出て行ったの。」
少女は小さな身体を震わせながらその時の恐怖を思い出し涙を流しながら話してくれている。
そして…ぽつりぽつりとまた少女は続ける。
兵隊さん達が去った後。
少女は血溜まりの部屋に足を踏み入れる。
自分とずっと一緒に暮らしてきた同年代の子達が倒れ真っ赤に血塗られた光景。
彼女が歩くと血溜まりにより足は液体に触れぴちゃりぴちゃりと音をたてる。
そして部屋中…錆臭い香りが漂う。
少女は自分達を育ててくれていた母親の様な女性の元へ辿り着く。
今はもう…動く事もなく、その優しい笑顔は二度と見せる事は無い彼女の元へ座り込む。
すると少女は様々な感情を震わせ只々泣いた。
そして…ひとしきり泣いた後、彼女はその場から逃げるようにそこから去り…現在に至ったのだ。
◇
「そんな事があったのね…辛いのに話してくれてありがとう。」
「うん…ぐすっぐすっ。」
私の声に泣いてた彼女はやがて落ち着きを取り戻してくる。
するとエンポリオ君はその大きな身体で彼女に目線を合わせる。
「『ソフィア』ちゃん…これから僕とお姉ちゃんと一緒に…そのレオンお兄ちゃんを探そうか??」
「エンポリオ君??」
私の問いににこりと笑顔を向けてくれる。
「カルマさん!いいだろ?いこうよ!」
「えっ!?でも……」
「カルマさんなら…きっとこうすると思うから先に僕から言ってみた!」
エンポリオ君のその言葉に救われる私。
彼はもうそこまで私の事を分かってくれている。
「うん!エンポリオ君!ありがと!」
「うん!よぉし!!」
「えっ!?キャッ!!??」
ソフィアが驚いた声をあげるとそのままエンポリオ君に肩車をされる。
驚いた表情の顔は次の瞬間。
「えっと…『ソフィア』?」
「えっ!?」
「じゃあ…僕がパパでお姉ちゃんはママって事でいいかな??」
「えっ??エンポリオ……君??」
私はその言葉に顔が赤くなる。
「うん!やったぁ!パパもママも一気に出来ちゃった!」
「もぉー…エンポリオ君…勝手にそんな…」
私が続きを言いかけたその時…『ソフィア』ちゃんが笑顔を見せてくれていた。
とても幸せそうなその表情に私は言いかけた言葉を飲み込んだ。
そして。
「『ソフィア』ちゃん!ママも一緒だからね!お兄ちゃんを探そうね!?」
「うん!!」
◇
◇
◇
こうして私達は歩き出した。
彼女のお兄ちゃんを探す為に。
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