ヨーロディア世界編シーン44
初めに目的地のドイツェルンに辿り着いたサキノ達。
果てして。
初めにドィツェルンへ辿り着いたのは、サキノとアンナ。
彼女達の目に映ったその地は、まるで地獄絵図だった。
いつしかこの地は軍によって占拠され…国民は疲弊し、街中は兵が闊歩し住民は、ほとんど外を歩いていない様に見える程…荒んだ街中。
「アンナお姉ちゃん…。」
「大丈夫よサキノちゃん…ここにいるからね!」
「うん。」
サキノちゃんの握る手が…私に不安感を示していた。
私の目にも、この街の状況からは恐怖しか感じとれなかったの。
倒れている人々も数名程見かける…だけどその者には誰一人として声をかける事はないみたい……一般常識では考えられないその状況は…この街の危機を感じさせる。
それを今は見てる事しかできない事に只々…無力感を感じてしまう。
兵士達もそこら中に転がる遺体には目もくれず街中を闊歩している。
すると私達が見ている目の前へ、一人の少年が姿を現す。
私達はその少年を眺めていると…ちょこちょこと彼は倒れている男の服のポケットを物色し始める。
すると何かを見つけた様子で少年はにやりと笑う。
「あっ!?お姉ちゃん!!??」
「ええ……。」
少年が走り出そうとしたその時。
「えっ!?えええーーーっ!!??」
突然少年は叫び声をあげる。
この時…少年の服を咥えて持ち上げていたのはカラーウルフだったの。
彼は驚きの表情で声を上げている。
私達はそんな彼から事情を聞くべく捕らえると…誤魔化すようにその場を立ちさるのだった。
◇
◇
◇
少年を連れて、とある場所へとやってくるとカラーウルフは咥えていた少年を離す。
ドテッとお尻から落ちた彼は痛めたお尻を抑えていた。
「いてて…なんだよ!アンタ達!!!???」
「さっき…あの人から…何を取ったの??」
サキノのその声に少年はキッと睨む。
「うるせぇ!!さっきの男は死んでたんだぜ??別にそんなヤツから俺が何を取ったって自由じゃねぇか?」
「ダメ!人の物をとったらダメって母さんに教わった事あるもん。」
「母さん??」
少年は私の顔を見ていたの。
私はサキノちゃんの言葉に思う所はあったけれど…少年に目線を合わせる。
「君…なんて名前??」
少年は私の顔を見ている…次第に彼の目は泳ぎ…照れた表情をすると…呟く。
「……『レオン』」
こうして私達は少年『レオン』の話を聞く事にしたの。
◇
かつて…この街は平和な街だった。
少年には当時両親もいた。
ところが、この街に突然一人の男が現れたとの話。
この国は、独裁者とも呼ばれる一人の男によって支配されている…その男は人の心を掴むのが上手く、街の権力者達を丸め込むと…今度はこの街を力と暴力で支配していったのだ。
人々は恐るべき政治に屈するしかなく皆々が『ウォルフ』の支配に涙をのんだ。
だが…これはまだ国民にとって…地獄の始まりだったのだ。
◇
恐怖政治を行った『ウォルフ』。
彼は武装国家を作る為にあらゆる兵器を作り出す為、労働力がどうしても必要だったのだ。
それによりこの国は労働力として国民を余程の事がない限り生命までは奪う事はなかったのだ。
やがてこの国は次々と兵器を作り出した。
機械工学のあらゆる有能者を集め、この国は高い攻撃力を誇る兵器を可能なまで作り出した。
そして、この国はその情報を外部へと漏らさぬが為に…有能な研究員達は永遠に幽閉されたのだ。
すると今度は兵士の数を増やす為に徴兵を始める。
国の男達は十歳になると徴兵される…そして訓練を受けると、この国の完全なる兵士としてその命を国の為に使い果たされる。
この少年の父親もまたそうして兵士として連れていかれ、家には二度と帰る事はなかった。
「僕は…数日前に十歳になったんだ…でも…連れていかれた父さんの死を知っていた母さんは徴兵から僕を逃がしてくれたんだ…僕はそれから孤児院に引き取って貰えたんだけど…突然…現れた兵隊達に……僕は逃げて逃げて逃げて…今…。」
少年の表情は陰り、そして震えていた。
「僕は…この街を出たい!!この街を出てマジェスト協会って所に行って…僕は力が欲しいんだ!!」
彼の言葉に私達は驚く。
「力を持ったら…どうするの?」
サキノちゃんは少年にそう問いかける。
「僕の父さんも母さんも…そして僕を引き取ってくれて優しくしてくれた孤児院のおばさんも…この街の…僕の為に死んでいったんだ…だから。」
少年は身体の震えがさらに増す。
「僕みたいな誰かを増やさない為に!!!!」
「「……………………………………………!?」」
私達は彼のその言葉に…にこりと微笑む。
「じゃあこの街からお姉さん達が君を逃がしてあげるわ!」
「うん!『レオン』君!だから大丈夫だよ?」
「えっ!?」
「お姉さん達はちょっとだけ皆が持ってないある『力』を持ってるの。」
少年は先程の事を思い出したのだろう。
ハッと驚きの表情を浮かべると口を開く。
「お姉さん達ってまさか……。」
私とサキノちゃんは、にこりと微笑む。
「そうよ…私達は君の言うマジェスト。私はアンナよ。」
「私はサキノだよ!そして『レオン』くんも…いつかサキノ達と一緒に君も戦うんでしょ?」
少年は涙でぐしゃぐしゃにしたその表情と共に微笑むのだった。
『うん…………。』
こうして私とサキノちゃんは少年をこの街から逃す為に立ち上がるのだった。
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