ヨーロディア世界編シーン32
カルマは目覚めると。
私が目ざめると、そこはどこかの部屋のベットの上だった。
「あれ??ここは………?」
辺りを見回すと見知らぬ部屋の中。
小綺麗に片付いた部屋。
でも中は、ゆっくりと休めるように温かくて心地いい空間だったの。
すると…いい匂いが漂ってくる。
「えっ?ここって??」
そう呟くと、誰かの足音が聞こえてくる。
足音の主は階段を登ってくるようだ。
私は思わず布団を握り身構えてしまう。
そして部屋のドアがゆっくりと開いていく。
すると…そこから顔を出したのは…エンポリオ君だったの。
「エンポリオ君!!!???」
「お!?カルマさん気がついたんだね?良かったあ!!」
彼は嬉しそうに、こちらに近づいてくる。
「あ…うん!エンポリオ君は身体…大丈夫なの??」
「うん!カルマさんが止血してくれたし、貰ってきてくれた薬のおかげですっかり良くなったよ!ほら!!」
包帯が巻かれた腕を上に振り上げ見せてくれる彼。
ムキムキと力強い筋肉が見えたの…だけど。
「むん!!ほら!!ね?もう痛く…んんっ!?」
痛みで腕を抑えるエンポリオ君。
「もぉ!何してるのよ!!!」
「ぷっ!あはは!!!!!あーでも痛いーー」
「痛いーじゃないわよ!もう心配してあげないんだから!」
拗ねる私に焦る彼。
「ああっ!ごめん!本当にごめん!カルマさん!?許して!?ねっ!?」
彼の必死な顔を見て安心した私は笑いが込み上げてきたの。
「あはっ!あははっ!!エンポリオ君…必死なんだもん!」
「酷いですよ~カルマさん!?」
すると安心した私のお腹の音がぎゅるるとなってしまう。これは先程の美味しそうな匂いが原因。
「ええっ!!?エンポリオ君……聞こえちゃった??」
「はい!もぉ……バッチリ!!」
「もぉ〜やめてよね!?」
顔が熱くなった私は…怒ったふりをする。
すると…にこりと微笑むエンポリオ君。
「さぁ…カルマさん…ご飯出来てますから食べましょ!?」
「うん!!」
◇
◇
◇
こうして私達は彼の手料理を食べながら語る。
エンポリオ君は、この家で生まれてずっと一人っ子で育つ。
両親は普通の生活をしながらもエンポリオ君を大切に愛情をかけ育ててくれたという。
元から恵まれた大きな身体を持つ彼。
この国の機械工学の研究員だった自慢の父、そして料理が得意な母により彼の今の肉体は出来上がる。
だが、その肉体とは裏腹に虫も殺せないほど優しい彼は学校へ通う様になるといじめにあってしまう。
そんな彼は友人も少なかった為に、一人夢中になった事はロボット等を作る事。父が好きだった機械工学に憧れ…やがて真似るようになり…色々な物を作ったりしていた。そして手先が器用な事も父から受け継いだらしく機械いじりが本当に得意になったらしい。
「そうなんだねぇ!凄いなぁ。」
「それほどでもないけど…父さんの影響で本当に機械が好きになったんだ。」
「そっか…」
「うん、それでね?」
エンポリオ君は続ける。
◇
そんな中でも平和に過ごしていたんだけど…。
ある時。彼に悲劇が起こる。
父が突然家に帰らなくなったのだ。
心配する母と自分…当然職場である研究所に連絡しても帰ったという話、それから愛する父を失った母親は病に倒れ…そして。
ある時…研究所から白骨化した父が見つかったとの連絡をうけ彼は行ってみるとそこには骨と化した父親の姿。
それから母は更に精神的にもダメージをおったのだろう…見る見るうちに病は悪化し亡くなってしまったと言う話だった。
「まあ、それから僕は一人何とか生きて、ある時エルザックさんの話を耳にして憧れて今こうしてこの世界に入ってきたって訳なんだ。でも僕は、まだまだ弱いし恥ずかしながら、戦いも正直恐いんだよね。あはは、何か…かっこ悪い話しちゃったな。」
エンポリオ君は笑いながら話す。
「そんな事ないよ!!エンポリオ君は弱くなんかない!だって私を身体をはって守ってくれて…本当にかっこよかった。」
「ありがと。カルマさん。」
「私もね…実は……。」
そして私もここまでの話を彼に全て話したの。
彼は私に全てを話してくれた。そんな彼に私も全てを話さなきゃって思って。
「でもね…私もまだまだ弱いんだよね。」
「カルマさん…そっか…ちょっと待ってて。」
するとエンポリオ君はスっと椅子から立ち上がる。
そして奥の部屋に消えていく。
「エンポリオ君??」
数分後…彼は戻ってくる。
すると彼が私に差し出してきたなにか。
「これは!??」
「これは僕がカルマさん専用に作ったサイバースーツ…僕もマジェストになれてから実感したけど戦ってみて分かった事。僕達の弱点は…この生身の身体なんだ。それを補う為のスーツ…今まではタダの頭の中の空想だったものをこれから僕達が戦う為に…形にしたんだ…これがあれば僕達は奴らに勝てる!!」
私の目に映った彼がとても眩しく見える。
「うん!次は必ず…勝つわ。」
「あ!カルマさん!あとね…こんな事言ったらなんだけどさ…僕の両親はもういないけどさ…。」
「えっ??」
「君の両親は…きっとどこかで生きてると思う!!」
私は彼の自信に満ちた笑顔に心がホッと落ち着く。
「うん!ありがと…エンポリオ君。」
◇
◇
◇
二人の絆は深まる。
強敵相手に戦わなければならない二人を待つものとは!!??
お読み下さりありがとうございました。