ヨーロディア世界編シーン31
敵をなんとか退けた二人。
果たして。
私達は何とか敵を退けたの。
◇
◇
◇
「エンポリオ君!?大丈夫!!??」
彼の様子を伺うと、苦痛の表情を浮かべている。
左腕を押さえているエンポリオ君。
よく見ると彼の腕からは真っ赤な血が滴っているのが見える。
「止血…止血しなきゃ!!」
私は自分のバックの中を物色したけど包帯の様な気の利いた物は入ってはいない。
「何もない…どうしよ。」
「あっ!カルマ…さん…大丈夫…ちょっと休めば僕は…だから…。」
「ダメよ!!!!!怪我をしたのは私を庇ってくれたからだもん!!!」
私の声に驚くエンポリオ君。
「えっ……………………カルマ……さん。」
「私の為に…こんなになって……」
いつしか目から温かいものが流れて…そして落ちる。
「カルマさん…。」
「あ!!そうだ!!ちょっと待ってて!!」
ふと…ある事を思いつく。
私の長い髪を結っていた物。
そう…それはリボン。
私は髪からリボンを外すとエンポリオ君の酷い出血部分の止血をする。
元の世界でもこっちの世界でも私は人をほおって置けないの。
怪我人を見ると応急処置はこれまで何度もしてきた。
私は慣れた手つきで彼の止血を終わらせる。
「よし!これで応急処置は大丈夫よ…じゃあ!病院探して行きましょ??」
「あ……う…うん。カルマさんありがと。」
「ううん…私こそ…危ない所をありがとう。」
私達は微笑み合う。
ヨシッ!と私は立ち上がる。
エンポリオ君も痛みを堪えながら立とうと
するもその怪我の影響からふらついてしまう。
「あっ………。」
「エンポリオくんっ!!」
「カルマさん……。」
彼の肩を支えると私達はゆっくりと歩き出したの。
◇
◇
◇
私達は病院へとゆっくりと向かう。
エンポリオ君に肩を貸してるけど彼の足も吹き飛ばされた衝撃でまだ片足に痛みを感じるみたい。
その重みは大分私の身体にも負担がかかる。
でも…今はそんな事言ってられない!
そう考えながらも私達は先程の広場から街中に入りそして…この街を知るエンポリオ君の指示する方へ歩いていく。
するとそこには…比較的大きめな病院があったの。
私達は病院の扉を開くと。
そこは。
なんと!!あの『病』が発症してるであろう人達が沢山…皆苦しそうに診察待ちをしていたの。
私達の目に映ったのは、まさに地獄絵図。
「これは………」
私が焦っているとエンポリオ君が口を開く。
「カルマ……さん…僕は大丈夫…だから。」
そう言い彼は立ち去ろうとする。
すると歩き出そうとした彼は足に痛みを覚えたようで片膝をついてしまう。
「うぐっ!!??」
「エンポリオ君!!??」
そして私は、また彼の腕をとると、再び歩き出したの。
◇
それから暫く歩いた私達。
すると突然エンポリオ君が立ち止まったの。
「どうしたの??」
「えっ!?あ、いや…ちょっとここで休もうかなと。」
そして彼は立ち止まった家の玄関先に座り込んだの。
「大丈夫??」
「はい!なんとか…少し休憩すれば。」
「あっ!そうだ!!私ちょっと他の病院あたってみてくるからエンポリオ君はここで待ってて!!」
私は彼を一人残し、走り出したの。
◇
◇
◇
そして…エンポリオは。
僕をここに残して走っていったカルマさん。
彼女は、なんて優しくて素敵な子なんだ。
僕はこれまで色んな面で自分に自信がなくて女性となど、ほとんど接した事がなかったんだ。
「こんな僕の為にあんなに可愛い子が頑張ってくれるなんて。初めてだ。しかもここは…偶然なのか。」
そう実は、この場所は僕の実家だったんだ。
既に、この家には誰も住んではいない…僕がこの地を去ってから両親は何者かによってこの世から消されてしまっていたのだ。
まあ…それを知ったのは家を飛び出してから数年後の話だけどね。
僕はこの家を老後にでも住もうかと思い確保はしていた。
そして、僕は何とか力を振り絞り家の中に入り休む事にする。
「あ!そういえば……………。」
僕はカルマさんが巻いてくれた彼女のリボンを外すと目印としてドアノブに巻く。
「よし、これできっと…分かるハズ。」
そして僕は家へと入り。
彼女が戻るまで休憩をする事にしたんだ。
◇
◇
◇
その頃…カルマは病院を転々と回っていた。
私はエンポリオ君を残し走り回る。
入る病院入る病院がとても彼を受け入れてくれそうな場所はなかったの。
すると私はいつしか街外れまで来ていたの。
そして小さな病院をやっと見つける。
「ハァハァ…ここが…最後の病院かも…お願い!なんとか。」
私がドアを開けると中は、また患者の山。
とても受け入れてはもらえなさそうな状況…ここに来るまでの病院でも、ずっと話もまともに聞いてはもらえなかった。
すると一人の看護師さんが近づいてくる。
「大丈夫ですか??」
「あ…私は大丈夫なのですが…この状況でこんな事言うのもなんなのですけど……包帯と傷薬を分けては貰えませんか??」
彼女を見た私の目は潤んでいて…まともに彼女を見れてはいなかったの。
最後の希望をかけてお願いしてみた私
いつしか私の身体は震えていたの。
すると。
「いいですよ…。」
「えっ!?」
私の耳に優しい声と笑顔で応えてくれた看護師さん。
「いいですよ!どれくらい必要ですか?」
「ありがとうございます!!」
いつしか私の目からは涙が流れていた。
◇
こうして私は包帯、傷薬などをもらいエンポリオ君の待ってる場所まで走ったの。
気づけばいつしか私もフラつき足も棒のようになってしまっていた。
すると…先程の場所にエンポリオ君の大きな身体は、なかったの。
「エンポリオ君?????」
私は彼を呼ぶ。
「エンポリオくーーーーーん!!!??」
辺りを見回しても彼の姿がどこにも無い。
すると彼が座っていた家のドアノブに見た事のあるものが。
「これは…わたし………の……エンポリオ君。」
するとガチャリとドアが開く。
ゆっくりと開いたドアの中から顔を覗かせたのは…にっこり笑うエンポリオ君だった。
「カルマさん…ありがとう……おかえり。」
そして…私の目から……涙がこぼれ落ちた。
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