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刺激的で化学的で素敵でブラックで


 4月2日、今日から新しい年度が始まる。

 私、梅田果穂は今日から大学4年生だ!


 私たちの学校では化学科を専攻している学生は4年から研究室に配属される。


 これまでは化学についての基本的な知識についての学習がメインであったが、これからはその知識をさらに深め、活かしながら研究活動を行っていくのだ。


 私が配属される研究室は有機化学合成研究室。

 簡単に言えば、医薬品や機能性化学品の新しい作り方を開発するところらしい!


 ゆっくりと息を吐きながら研究室の扉の前に立つ。

 緊張感と楽しみが混ざり合った感情が揺れ動き、心拍数の上昇が自分でもわかった。

 隣にいた親友の京橋愛里実(通称アルミちゃん)は心配そうに声をかけてくれた。


「大丈夫?果穂ちゃん?」


「大丈夫だよ、アルミちゃん。ただどうしても緊張しちゃうな。なんたって今日から一年、長くて三年、もっと長くて5〜6年はここにいることになるんだから!」


 そう言ってアルミちゃんの方を見ると、真っ青な顔で私を心配しており、アルミちゃんの優しさに吹き出してしまった。

 アルミちゃんは私が笑ったのを見て、少し安心したように顔を綻ばせる。これで二人の緊張が解けたように感じた。


 さて、もう一度扉に向き直る。呼び出しのベルに手が伸びる。

 あと数センチ…!


「あれ?お前らもしかして今日から配属の…」


「ひゃわぁぁぁ!!!!」

 驚きのあまり自分でも情けない声をあげてしまう。

 声の方を振り返ると金髪の女性が驚いた顔でこちらを見ていた。


「おいおい、何もそんなビビらなくても…」


 金髪の女性の物腰は柔らかかったものの、その姿は肩にかかる長さの金髪、龍のイラストがバッチリ入った革のジャンパーに、ズボンはジャージと、見た目は完全にヤンキーそのものだった。

 驚きは恐怖に変わり、体が強張る。


 ふと横を見るとアルミちゃんも驚きと恐怖で声も出ていないようだった。小動物みたいで可愛い。

 ここは私がなんとかするしかない!


「わっ私達は!今日から…!その…!4年生で…!研究室は今日から…!えっと…!」


 恐怖と緊張で言葉に詰まる。金髪の女性が不思議そうにこちらを伺っていると、緑のパーカーを着た男性がやってきて女性に声をかけた。


「おい、いきなり後輩をいじめんなよ。」


 金髪の女性はいじめてねーよ!と反論したが男性はその言葉を無視して私たちに声をかけてくれた。


「俺は我孫子亮二あびこりょうじ。修士一年だから君らの一つ上だな。

そんでこのエセヤンキーが西九条セレナ。同じく修士一年だ。見た目はこんなだがそこまで怖いやつじゃないから安心して」


金髪の女性は誰がエセヤンキーだ!とか、こんなとはなんだ!とか、口を挟むものの、彼を遮ることはしなかった。


 彼は簡単に自己紹介してくれた後、カードキーでロックを解除し、私たちを研究室の中へ入れてくれた。


 ここから私の、私達の研究室生活が始まるのだ!

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