嘘をついてたんですかぁ~!?
「ユーリア・オルファウス公爵令嬢!私は貴方との婚約を破棄する!!」
卒業パーティーの最中、凛とした声が会場に響き渡る。
「!」
急な婚約破棄を告げられたユーリアは、驚きのあまり目を見開き固まっている。
マーリンガ国の第二王子、アルツ殿下の横には小さいながらにスタイルの良い、守ってあげたくなるキャラなのにお色気もあるよ!系な女性がたたずんでいる。
彼女はこの学園唯一の平民、ミア。
「殿下、婚約破棄とはどういうことでしょう?」
気を取り直したユーリアが、落ち着いた声で問いかける。
「どういうことだと?
ユーリア、私が貴方の悪行を知らぬとでも思ったか?
此処にいるミアを排除するために貴方がやってきた様々な行い、私は全てを知っているのだ。」
全てを見通す王族の眼。
その鋭い視線をユーリアに向けつつ、アルツはハッキリと告げた。
「貴方は私の婚約者に相応しくない!」
「そ、そんな!
そんなことわたくしはしておりません!
ミアさんを排除するだんて…!」
ユーリアが急ぎ否定の言葉を口にしたその時。
「ひどーい!嘘をついてたんですかぁ~?」
張り詰めた空気をぶち壊す、能天気な声が響き渡った。
アルツがミアに優しく微笑みかけ、言葉をかける。
「大丈夫だ、ミア。
ユーリアの嘘などすぐに暴かれる。
何も心配する事はないんだよ」
「ひどいですぅ。アルツさまぁ。
婚約なんてしてないって言ってたじゃないですかぁ!」
「…え?」
「…え?」
アルツが、いや、会場に居る全員がミアの言葉に固まる。
「ミアさん、何が嘘なんですか?」
逸早く気持ちを落ち着かせたユーリアがミアに声をかける。
「皆さん、婚約者が居る方とは馴れ馴れしくしてはならないと教えてくださいました。
それをアルツさまにお伝えして、馴れ馴れしくしないように気を付けようとしたんです。」
ミアはユーリアに向かってハキハキと答える。
「でもアルツさまは、自分は誰とも婚約はしていない。皆、婚約者の座を狙っているから牽制のためにそういっているだけだと仰って…」
「…何ですって?殿下がそんなことを?」
周りがざわめき始め、アルツは慌てて言う。
「いや、騙そうとしたわけではないのだ。
婚約者が居るとなると、ミアが一緒に居にくくなると思って…。
そ、そうだ!
この学園にはミアしか平民はいないから、王族としてだな!
生活しやすいように気を配ったということだ!!」
アルツはひとり頷きながらなにやら言い訳を始める。
しかし、ミアは止まらない。
「じゃあ~、呼び方はどうなんですかぁ?
私が殿下とお呼びしようとしたら、逆に不敬だからと言ってたのは本当なんですかぁ?」
「!?」
周りのざわめきとアルツの汗が止まらない。
そこにユーリアの冷たい声が響く。
「殿下?どういうことですの?」
ミアはまだ止まらない。
「話し方もハキハキと話すと身分の高い方の気分を害する可能性があるから、語尾を伸ばして話した方がいいと仰っていたのは、本当なんですかぁ?」
「不敬になるから、身分の高いご令嬢とはあまり口を利いてはいけないって言うのは…」
「平民だから、勉強のために毎日アルツさまとお昼をご一緒しなくてならないって言うのは…」
「休日は平民の暮らしをお伝えするために、アルツさまとお出かけしなくてはならないと言うのは…」
次から次へと出てくる殿下の言動に、ユーリアでさえ開いた口がふさがらない。
アルツは意味のわからないことをモゴモゴいうし、周りのざわめきはますます強くなる。
とうとう見ていられなくなったアルツの影の護衛が、アルツを王宮へ強制連行し、騒動は終わった。
残された人々は。
「ユーリア様、これまでのご無礼な態度の数々、誠に申し訳ありませんでした。」
「良いのよ、ミアさん。
わたくしこそ、貴方のことを誤解していたわ。
今日で卒業だけど、貴方のことを知りたいわ。
ゆっくりお話しましょう!」
ユーリアは周りを見渡し、声をあげる。
「皆さん、お騒がせしました!
ここからは皆でパーティーを楽しみましょう!」
一生の思い出となる卒業パーティーとなりましたとさ。