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金欠大学生がゲーム内コインを現金に換金できるアプリで豪遊する 【初物書き】

作者: パパイヤ

俺は大学3年生、金欠だ。

漢字で書くと金欠。読みは「きん かける」だ。

好きなものはソシャゲ。今はパズルゲームにはまっていて、講義中も家に帰ってもボムボム消しまくって快感を得ている。

好きなキャラが全然当たらなくて給料日に1万だけ課金するのが俺の楽しみの一つだ。

「あー、金欠だー。確率アップして当たんないとかクソゲーだな!」

給料日の翌日、課金したが目当てのキャラが当たらず、俺は憂鬱ながらも大学に行った。講義を終え、昼休みに食堂で水と一番安いランチを食べていると、隣にキラキラした女子が座ってきた。

「隣、いいかしら。」

金髪に重たそうなピアス、黒いキラキラのジャケット、金ぴかのベルトにおろしたての真っ白いスラックス。真っ黒な底上げ靴を履いて、肩からは何かわからないが大人が持っているブランドもののバッグを下げていた美女。

手に持っていた料理は学食ではなく自前の弁当で、よく運動会のときに持ってきた重箱弁当だ。

明らかに金持ちな恰好をする彼女に臆した俺は、「あっちの席に行こーっかなー」なんて言って立ち去ろうとするが、金髪美女に睨まれた。

どうやら彼女、友達がいないらしい。まあ、こんだけ着飾っている人が隣にいたらどんな人でも嫌味に感じるだろうからな。

「なーんてね、面倒だからここで食べよう。」

「そうしなさい。」

それが彼女との出会いだった。


それから数日が経ち、俺らは同じ学部の同じ学年であり、同じボッチということもあり、講義やら食事やらゲームやらを一緒にする、いわゆる友達くらいの関係になっていた。

ちなみに彼女の名前は「金づる美」。

なんでも超有名ゲーム会社の令嬢のようで、今まで金欠とは無縁の生活を送ってきたのだという。俺とは真逆の人種だ。

「なんで俺なんかと友達になろうと思ったんだ?」

俺は前々からあった疑問をぶつけたりもしてみた。どう考えても俺らは真逆で、隣に並んで歩いていると周囲の視線が痛いし。

「まあ、なんとなく、ボッチ臭がしたからかなー。しゃべってみたら気が合うし。それに・・・金持ってなさそうだったし。」

「ボッチ臭はちょっとわかるけど、金持ってないってのが理由なのは解せないが・・・?」

そんな疑問に彼女はだんまりだった。



「なあ、金かしてくんない?」

俺はいつものようにづる美に金を貸してもらおうとちょっと腰を低くする。

「あのさー、君のは金を貸してじゃなくて、金ください、だよね金欠くん。食堂であった日から一度も金返してくれてないよね!」

「あれ?そうだっけ?」

「君のだめな性格はこの数日でもう治らないことがわかったわ。だから、とっておきの秘密の稼ぎ方を教えてあげる。」

「え!?」



俺はづる美にとっておきの稼ぎ方を教えてもらってから、大学にも行かず、ひたすら家でソシャゲをしていた。

なんとあいつの親が開発したこの「ゲーム内コイン換金アプリ」という非現実的な最強アプリは、その名の通りゲーム内で稼いだコインを現金に換金できるというアプリだったのだ。

「うおー!100万達成ー!」

1日中引きこもって今日1日で稼いだお金は100万。昨日はバイトがあったから50万、その前は80万と、かなりの額を稼いでいた。

「パズルを消し、ストーリーを進め、モンスターを狩る。そんな娯楽でやっていたゲームが現実に役立つときがくるなんて、まるで夢みたいだ!」


それからは、今まで行ったことのない高級な服や料理、風俗店など、金がなかったころの俺では考え付きもしないような金の使い方をした。

貸し切りのジェット機に乗ってヨーロッパに旅行に行ったり、アメリカのカジノにも行った。世界中の富豪たちと遊んだりもした。雇った金で海外の美女を両脇に抱えてコンビニの商品を全部買い占めたこともあった。

「無駄遣いって気持ちいい~~!」

日本に帰ってきてからも大豪邸を立て、札束の温泉につかり、万札で尻を拭いたりした。

ひとりで豪遊していると、そのうち大学の友人である、づる美と最近連絡を取ってないことに気づき、「恩人だしなー。一応礼でもしとくか」

と久々に大学に行った。


「よー。元気かよ、づる美ぃ。」

「お幸せそうね。というか随分性格が変わったんじゃない?」

づる美の指摘はごもっともで、俺はかなり傲慢になっていた。

美女を抱き、旨いものばかり食べ、ゲームする。そんな毎日を送っていたら誰でも性格のひとつやふたつ、捻じ曲がるだろう。

「この世は金がすべてということに気づけたよ、づる美ぃ~~!」

「ふふ、そうね。」

最近の出来事や自慢話などを話す俺を、づる美はとても楽しそうに聞いてくれていた。

だが、唐突にづる美はトーンを低くし、変なことを言い出したのだ。

「そういえば、そのアプリね、わかってたとは思うけど、犯罪だからね。」

彼女は薄く笑みを浮かべ、そのまま帰っていった。

「何言ってんだお前、冗談なんだよなー!おい!待てって!」

俺は焦ってづる美を追うが、外に出た瞬間に警察が待ち伏せていた。俺はだまされていたことを知った・・・。



刑務所に入り、懲役50年となった俺は、今年で71歳。

やっと解放されたと思っても、行く当てもない俺は、なけなしの荷物をもって実家に帰った。両親だけは俺を見限らないでくれていたのだ。


「やっぱり俺は貧乏暮らしの方が幸せだ。」

そう言った金欠は実家に帰った後、週4の深夜のコンビニバイトをし始めた。

「ああ、金がないって幸せだわーー。」

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