始まりは道端で…………
「358番…358番…落ちたな。」
高校受験合格発表…その日僕橘柳二は高校デビュー出来ず、学校生活と言うなの青春は今まさに終演を向かえようとしていた。
「橘ぁ…お前本当にさ…」
ため息をつきながら僕の肩を叩くエルフの男子が居た。
「クライム…良いんだよ、この時代、僕みたいな人族よりもクライムみたいな他種族を優先することになったからな…仕方ないことさ。」
と、言うも…正直悲しい所もある。
僕達の意見よりも他種族を優先するため、現在は僕達人族が自由に暮らせる範囲は絞られているのだ。
「だが…中卒だろ?どうするんだ?」
クライムが僕にそう質問をしてきた、だが僕には一つ手があった。
「大丈夫さ、僕には宛がある。」
そう言い僕は一枚の名刺をクライムに見せる。
「それって…ガレオン土木カンパニーの名刺か?」
『ガレオン土木カンパニー』土木カンパニーと名が付く様に、土木工事を基本とする会社で、身内が無い者が集まる会社でもある。
通称『ならず者の集まり』なんて言われているが、実際の従業員は皆礼儀正しく、ここら地域の土木関係の9割は、この会社が担当しているのだ。
「うん、既にこの人からも内定は貰ってるから問題無しってやつだぜ。」
「流石だなお前…ん?おい、あの人何してるんだ?」
そこに居たのは白いタキシードを着たおじさんが腹を抱え、その場にへたりこんでいた。
「っ…食中毒かも…!クライム!あそこのコンビニから紙袋を貰ってきて!!」
「お、おぅ!!」
僕が慌ててその人に駆け寄った為危険性を知ったのか、クライムは慌てながらもコンビニへ向かう。
「おじさん大丈夫?」
僕はおじさんに近寄り話しかける、顔が蒼白い、相当な時間我慢をしていたか…周りが声をかけなかったか…それとも『両方』か…だが今は関係ない、この人の様子を見ることに集中しよう、話はその後だ。
「うっ…ぐっ…」
何かを話したいのだろうか…口をパクパクを開閉しているが、話せないのだろう。
「おい!紙袋持ってきたぞ!!」
と、タイミング良くクライムが紙袋を持ってきた。
「ナイスだクライム!おじさん、ちょっと食べたもの吐いてもらうよ…」
「ぁ…?ぉえっ…」
そう言い僕は、おじさんの口の中に手を突っ込んだ。
「クライム、今の内に救急車に電話しておいてくれ。」
「お、おう!」
クライムはひとつ頷くと、電話を取り出し、病院へ連絡した。
「おじさん、吐瀉物出そう?」
顔色を伺うが、どうやらこの程度では吐かないようだ…ならば強行手段をとるしかない。
「おじさん…ごめんなさい!!!」
そう言い僕は…腹を殴った。
「ぅぅぅ…ぉぇぇえええええ…」
すると、おじさんは急に吐き気を見せたかと思いきや、一気に吐き出した。
「すみません、後で謝罪はしますので…」
そう言いながら、いまだに吐き続けるおじさんの背中をさすりながらそう言う。
「あ!救急車だ!こっちです!」
どうやら病院の対応は速かった様だ、これはありがたい。
「こちらが患者様で…?」
「はい、症状から見るに恐らく食中毒…または意図的に盛られた可能性があります、友人が用意した紙袋に吐瀉物を出させました、検査をお願いします。」
そう言い紙袋を渡し、おじさんを任せようとしたのだが…
「申し訳ありませんが…どの様な状況だったか聞きたいので、お二人も一緒に来てもらってもよろしいでしょうか…?」
とのことだった。
「………だってさクライム、親に連絡したらどうだ?」
「………おう…連絡しとくわ。」
クライムはそう言い、救急車に乗った後、直ぐに連絡をした、少し音漏れしていたので聞き耳を立てると、母親らしき人の声がした、とても心配そうにしていたが、僕が居ることを話すと、その人は安心したようだ。
「ふぅ…柳二の名前を言っただけでこれかよ…お前に対する信頼度半端じゃないな…」
「人当たりは良くないとな?」
などと話をしていると
「う…ぐぅ…ぁ…あ?」
おじさんの意識も回復したようだ。
「お…おはようございます。」
「………救急車のベッドとはなぁ…」
どうやらこの人も大丈夫の様だ…問題は無さそうだ。
「…………………………。」
「………………………………。」
「………………………………………。」
「…………………………………………………。」
こちらをまじまじと見つめるおじさん。
「………えぇ…えっと…な、何でしょう…か?」
圧に耐えきれなくてこちらから話しかけてみる
「あんた、名前は?」
___どうやら名前が聞きたかったようだ。
「あ、えっと…橘…柳二と言います」
「柳二…柳二??」
「どうしたんですか?」
僕はおじさんに質問を投げ掛けるも、おじさんは何か考え事をしているようで、それ以降人の話を聞かなかった。