第一話 転校生の来訪
はじめまして。千田リヒトと申します。
初めての投稿なので拙いところも多々あると思いますが、温かい目で読んでいただけたら幸いです。
転校生が来ることぐらい、いくら隠そうとしても漏れてしまうものだ。ましてや、今は5月のはじめ。時期が微妙だ。それも相まって、雪花のクラスは浮足立っていた。
そして転校生が来る日の朝。いつもどおりに登校してクラスに入る。クラスにはもうすでに登校していた女子がいたので、「おはよう」と声をかけたが、その女子はひどく驚いて、ぱっと顔をそむけてしまった。
けれども、雪花は気にしないそぶりをした。少なくとも、表面上では。よくあることだったからだ。忌まわしい、その桜色の眼のせいで。
自分の席につくと、知らず、ため息が漏れた。さっきの事が、少し尾を引いていた。
いままで、数え切れないほど同じようなことがあった。しかし、いつまでも慣れないなと改めて苦笑いする。「少しくらい、慣れてもいいだろうに」と思うのは、我儘なのだろうか。
もう、うんざりなのだ。ありえないはずのこの桜色の眼のせいで、どれだけの好奇の目にさらされ、いわれのない陰口をたたかれたことだろう。
そりゃあ、視力が悪いわけではないし、目が霞むといったこともなく、目としての機能は問題ない。けれど、明らかな「異常」ではある。それが、とてつもなく居心地を悪くしていた。
いつの間にか、クラスメイトは皆そろい、朝のチャイムが鳴った。少し遅れて、担任、続いて転校生がクラスに入る。
クラスに静かで、かつ大きな動揺が奔った。転校生の髪は、何故か前髪の一房だけ萌黄色に染まっていたからだ。
教室に、「まさかの不良だったわけ?」「髪の毛染めてるとか…やば」といったささやき声が満ちる。
雪花も、例にもれず驚いた。しかし、不良だと思ったからではない。
確かな根拠があるわけではないにも関わらず、確信を持って「仲間だ」と、「あの髪色は地毛なんだ」と感じたからだった。
「一房だけ」だなんて、常識的にはありえないことだろう。しかし、彼女は知っていた。自分というありえないことの実例を。そして、自分自身でも把握しきれていない心の奥深くで、彼という存在を。
転校生と目があった、なんていう物語みたいな展開があったわけではない。
だが、雪花の心のどこか奥深くでざわめく何かが、雪花の意識を永遠にも思える一瞬へと取り残し、呆然と転校生を見つめることしかできなくさせた。
如何だったでしょうか。感想などあれば教えて下さい。
読んで下さりありがとうごさいました。今後も投稿していく予定ですので、どうぞよろしくお願いいたします。