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王子のお願い

夜会裏話を書こうと思って☆*°

短編でこっそり書こうとしたら、独立した話として設定を入れて長くなっちゃった。

んで、3話位で、終わります。

お遊びなので、苦手な人はスルーして下さい。

良ければ、長編の方をご一読下さい。

学院の教官室は、えも言われぬ緊張感が漂っていた。


「え、っとー。」


部屋の主は入口に立ったまま、自分のデスクの椅子にふんぞり返っている男子学生を見つめていた。


狭い部屋には学生の他にいかつい男たちがみっしりと付いている。


「まあ、座ってくれ、教師殿」

前髪が目にかぶって、表情が読めないもっさり男は、肉に埋もれて無い首を曲げて、面談用の応接セットを促した。


だれの部屋じゃ!

という言葉を飲み込んで、部屋の主が引き攣った笑みを作って、カーテシー。


「…ごきげんよう、フェーベルト王子殿下。本日は何用でいらっしゃいますか。」


「他人行儀だな。俺にはあんな事やらこんな事やら「わ、わぁーっ!ふ、不敬はお詫びしますっ!平にヒラにぃーっ!」」


カーテシーを更に深くして膝をガクガクさせながら、女教師は叫んだ。


全く(あおい)ったら!

好き勝手したツケを私に回すのね!


そう。

アオイの身体と記憶には、転移者だった神埼碧、いや結婚して伊勢になった碧が滲みている。


彼女は、突然アオイと同調(シンクロ)して、それまでの私=アオイ・リーゼンバーグのベースと、碧のスキルで、無理難題を解決した。

そして、身分を超えて、侯爵令嬢や王子と懇意になる、という以前のアオイならば考えられない事をやらかした。


(しかもこのもっさり王子をビンタするやら、恫喝するやら、コーチと称してバッタもんの卓球仕込むやら…やるだけの事やらかして、それでも王子から信頼されてるってのが碧の凄いとこよね。)


今は

「もうアズーナには来ない。アオイ後は宜しくっ!」

と、この身体から出て行った碧だが、碧のスキルはそのままにアオイに引き継がれ、今に至る。

と言っても、まだ、数日しか経っていないのだけれど。


アズーナ国第1王位継承者の、えらーいエラ〜イ王子は、もっさりと、


「俺にビンタ道を教えて下さったコーチ殿なればこそ、と伺ったのだ。」

と、切り出した。


あー。

私の不敬はスルーなのね。

はー。



碧はもうアオイに憑依(ひょうい)していないけど、記憶はベッタリ張り付いているから、以前と違う思考言語が湧いてでる。こんなフラットに王家と付き合っていいのか分からないが、王子に敬語を使わせる男爵崩れは、私位ではないだろうかしらん。


えーっと。


アオイはソファにストンと腰を下ろした。


ビンタ道とは、実は碧の世界の卓球である。旅先で王子に指導したのだ。


…もっと、指導しろってことかしら?


「…ここに居る者は、信頼に足る従者ばかりだ。俺の極めて内密な願いを聞いてはいただけないだろうか。」


一国の王太子候補、次代の国王が、男爵上がりの女教師に敬語である。このとんでもない状況を作ったのも、私の身体に転がり込んだ碧なのだ。


「……困り事ですか?」

「ああ。」


フェーベルト王子は、無表情なまま、私の椅子で右左とクルクルしている。…何をもじもじしてんだか。


「……かよし」

「はい?」

「仲良しだと証明するには……」


はあ?


何言ってんのお!


あんたとアゼリアは、ラブラブじゃん!

美女ともっさりアザラシだけどさー!



アオイのニヤニヤを見た王子は


「違う!アゼリアとクレアだ!」

と、前髪に覆われた顔の下半分を赤くした。


「…は?…仲いい、ですけど。殿下もご存知の通り」

「いや、そうなのだが…それを他人に証明するにはどうしたらよいかと。」


んん?

もっと詳しく殿下!




はーぁ。なーるほどねー。


そりゃ、アゼリアも思い切った事をやったもんねー。

淑女試験。

公爵令嬢に宣戦布告ねえ。

で、スキル全開で、絶賛バトル中と。

何何?お茶会にサロンに、夜会かあ。その力量を競うわけね。

素敵。アゼリアの十八番じゃん!

まー、負けるわきゃないわよね。あの子なら。


「勝てば良い、というものでもないのだ。そもそものクレアとアゼリアの確執という醜聞を払拭しなければ。」


「成程。世間が彼女達の仲を納得する必要があると。うーん。」


王子の婚約者、アゼリアは4月から3ヶ月、この王院学院に属していた。大得意な文科は良いのだが、幾何や理科に弱く劣等意識が引き金で、王子の学友のクレア伯爵令嬢と拗れてしまった。


その確執を裁かんと、このもっさりがしゃしゃり出て、あろう事か2人を断罪しかけた。


それを力技で封じこんで、和解に持ち込んだ手腕から、何故か関係者の高位貴族の子息子女がアオイを慕っている、という顛末(てんまつ)なのだった。




私達お友達でえす☆*°

というのも、嘘くさいしー。

男と女なら、ラブラブ〜〜って見せつければお終いなんだけどなあ。


ん?


んん!


アオイのニヤリ、に、王子はやや引き気味に

「さ、策はあるのか。」

と、切り出した。


「ふ、ふふふふ……

殿下。私にこの件、一任して頂けますか?」


ガタリと、王子は仰け反ったが、流石に王子、威厳は残したまま

「…王家として、できる限りの援助を約束しようぞ。ただし」


「ただし?」


「期限は3日。

夜会前日には妹のムシュカをクレアに引き合わせねばな。ムシュカは多分夜会の切り盛りをする立場なのだ。…俺は貴院には入るわけにはいかない。

夜会の参加者の面前で、2人が親密であることを示して頂きたい。」


可能ですか、と問う王子に、女教師は二ヘラァ〜とした。


夜会…最高のシチュエーション…


「コーチ殿?」


締りのない口元を拭って、アオイは、\( ´・ω・`)┐しゅたっ!と、右手を天にかざし、


「殿下!おまかせあれ!

アゼリアに相応しいようにクレアを仕込んで見せますわ!」


と、爽やかに約束した。


お、おう…と、王子は応じて、

かたじけない、と礼を述べた。


夜会まで、あと3日。




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