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~それは城を奪い合うデスゲーム~  作者: りんご
第Ⅲ章 クラン作り
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第081話 策士(11)


 満月の月明かりに照らされたモトヤは、地面に膝をつき、この世の全てに絶望したような表情をしていた。目はくぼみ、口は半開きのまま、目蓋の上あたりが数秒おきにピクリ、ピクリと動いていた。


 人生スキル【異なる道(ディファレントルート)】の発動を終えたマオは、そんな表情を浮かべるモトヤに対し語り始めた、遥かなる上空から。


「ここからじゃ表情はあまり見えないけど……、この能力を発動した時のあちら(ミシャラク城)の惨状は想像がついたみたいね」


 人生スキル【船場吉兆(ささやき女将)】の効果により、すぐそばからマオの声が聞こえてきた。


 しかし、聞こえはすれどもモトヤの頭の中には上手く言葉が入って来なかった。負けたのだ。完膚なきまでにマオに叩きのめされたのだ。今まで築き上げた物の全てを土台から壊されたのだ。仲間の命のほぼ全てを奪われたのだ。モトヤは全く動けなかった。何故だかわからないが先ほどから上手く手に力が入らないのだ。それに立ち上がろうとしても膝から下が震えて上手く立てないのだ。


 もう限界だった。


 心は既に折れていた。



 そんなモトヤに残ったのは後悔の念だけだった……。



 アリスの言葉を聞かなかったという後悔……。マオの言葉を聞いてしまったという後悔……そして自分という人間に対する……後悔……。



 アリスは最初から言っていた。



 マオは危険だと……殺せと……。



 ――なのに……俺は……………目の前にぶら下げられた果実の誘惑に……負けた………、アリスの言葉は感情的で愚かな意見だと思いこんだ……。



 ――違った……違ったんだ……。本当に愚だったのは……………俺だ……。



 両目に涙が溢れ、頬をつたった。




 ――皆……俺に殺されたようなもんだ……。



 ――皆……俺を信じ……俺についてきてくれたのに……ナナ……パプア……、皆……、皆……俺に…………殺された…………。


 ――俺の愚かさに……殺された……。




 だからこそ知りたかった。



 何故こんな目にあったのか。



 その方法を知りたかった。



 何故2回目の爆発が起きたのか…………どうしても……知りたかった。




 マオの語る計画は上手くいっていた。むしろ完璧に思えた。




 =1=トールマンからナナに爆弾を飲ませることで爆弾を手に入れる。

 =2=ナナからマオに爆弾を移す。

 =3=マオからトールマンに爆弾を移す。同時に爆発権限も手に入れる。

 =4=トールマンが白老を巻き添えにバルダー城で爆発する。




 この全ての過程をルカの嘘発見器で確認したのだ。間違いないは無いはずだ。だが…………実際には次の=5=が起きた。



 =5=トールマンが爆発した数時間後、バルダー城でM&Jの誰か(モトヤはナナが爆発していたとは知らない)が爆発した。




 ……信じられなかった。天地が引っくり返るほどの衝撃だった。




 あの嘘発見器が全て嘘だったのではなかったのかと思ったほどだった。


 だが、マオに嘘発見器のスキルを使う前に別の数人にスキルの効果を試したのだ。


 結果……100%の確率で嘘を見破っていた。つまり、ルカは本物の能力者なのだ。ここは間違いない事実なのだ。


 つまり人から人へ移動した爆弾のルートや最初に確かめたマオの能力に偽りはないはずなのだ。


 マオの能力は人から人へ職業や効果を移動する能力、ただし複製コピーはできない。よって獲得した爆弾を増やす事はできない。


 ならば何故2回爆発が起こったのか……ワケがわからなかった。




 最初に頭に浮かんだのは……外部からの爆弾の入手……。



 ――しかし、マオはそもそも独房の中にずっといたのだ。独房の鍵は俺が持っている。つまり、俺の知らない所で外部と接触することなど不可能だ。マオが独房から出たのは数回。


①マハーバリからミシャラク城の独房に移る時、

②ナナの中に入った爆弾をマオの中に移動する為にマハーバリに行った時

③トールマンとナギ盆地で会った時、

④王の間で話あった時、

⑤作戦を決行するかどうか幹部に決を採った時、

⑥作戦決行時。



 だが、①~⑥のどの場合でも外部と接触するのは至難の業だ。何故ならM&Jのクランメンバーに常に囲まれているからだ。唯一のチャンスは③になるが、となると会った時の会話が不自然すぎる。爆弾を外部から入手する為にはトールマンの体内にあらかじめ爆弾がなければならない……。だがトールマンはそんな態度を微塵も見せなかった。


 ――あ? そうだ! そういえば!

 モトヤは聞いたのだ、トールマンとの会談を終えたばかりのマオに……。


『もうお前の体内に爆弾はないのだな?』


 つまりトールマンから爆弾を入手しなかったことだけは確かなのだ……。だが……ならば一体どこから爆弾を入手したんだ? マオは何故2回爆発させることができた?


 さっぱり意味が分からなかった……。モトヤは苦虫を噛んだような顔になり、思わずボソッと呟いた。


「外部と接触できないなら……何で2回爆発したんだ……何で……」


 すると耳元から甘い吐息が聞えてきた。


「んふふ、気になるわよねリーダー。あんなに沢山嘘発見器を私に試したのに……どうして私の謀略を見抜く事ができなかったのかってね。答えは意外とシンプルよ」


「え?」



 モトヤはもう一度考えを整理する。


 トールマンと接触してきた後マオの体の中に爆弾がなかったという事は、少なくとも、2つ目の爆弾はこれ以後に入手したことになるハズだ……。


 だが、外部と隔絶されている状態でどうやって爆弾を入手したんだ……?

 いや、できない。外部からの入手なんて出来るわけがない。いや待てよ……例えばワープみたいな人生スキルを使う能力者がいるのだとしたら可能かもしれない……。だが、そんな能力者が独房の中に現れればマオはそのプレイヤーを殺し人生スキルを奪うのではないか? そしてさっさと独房から逃げ出すだろう。


 …………分からない。


 モトヤは胸が苦しくなる思いがした。答えが分からなければ分からないほど、自分の能力の低さと愚かさを感じざる得なかった。


『もしそうだとしても対処してみせる!! 俺が!!』


 アリスに自分が叫んだ台詞を思い出した。「よく言えたものだ」自分のかつて口から出たセリフに吐き気を催し、そう呟いた。愚かなだけではなく……傲慢だったのだ。いつの間にかいい気になっていたのだ。


 ――もういい、教えてくれ……頼む、頼むから。


 モトヤの心はマオに懇願するような気持が支配していた。それは紛れもなく敗北者の精神だった。


「もういいだろ。お前の勝ちなんだ。俺には分からない……」


 モトヤは観念した声でマオに聞くが、マオは答えなかった。代わりにヒントを出してきた。


「大ヒントよ。私が獄に繋がれた部下達にあげていたキャンディの事は覚えているかしら? アレはね……実は麻薬に近い衝動をプレイヤーの脳に与えるモノなの。どうやって作ったかについては知らないわ。ライナルエリアで売っていた物を買っただけだしね。これは本当よ。で、その……習慣性とでも言えばいいのかしら? 私があの地下牢の前を通るたびにキャンディを求めてくるの、しつこくね。だから私はキャンディをあげて頭を撫でてあげるの……優しく……優しく。ふふふ、これで分かったかしら?」


 アリスは、こうマオが言い終った辺りからそわそわと周りを確認し始めた。モトヤはアリスが何を気にしているのか分からなかった。


 それにマオが何を言っているのかも分からなかった。キャンディがどうしたというのだ。麻薬だろうがなんだろうか、それと爆発と何か関係があるのか? 思考が止まっているのか、それとも精神の許容量を超えた出来事が起こってしまった為か、いやそんな事どうでもよかった。知りたかったのだ、何故自分が間違えてしまったのか、何を間違えてしまったのか、何故こんなミスを犯してしまったのかを……。


 ――いや……ちょっと待て……。




 ――………………撫でた?



 悲しみに浸かっていたモトヤの脳が急速に回転を始める。


 ――たしかにソコについて質問した事がなかった……。それに……。


 その時、モトヤはバルダー城でのマオとの会話を思い出した。ルカがモトヤに抱きついたまま会話した……最後の会話を……。


『なぁ今の話……全て本当か? 』

『ええ、もちろんその通りよ』



 ――あの時……赤バンドは光った。光った……アレが5回目の質問だったハズだ……。だが――。


 モトヤは上空に佇むマオを見た。目を細めた。小さいが……ハッキリと分かった。依然赤いバンドが張り付いたままになっていた。




 ――そうか…………そうだったのか…………。



 モトヤは急に息が荒くなった。


 全てに気付いた瞬間だった。そして自分が如何にマヌケか気づいた瞬間でもあった。



 ――……なんで…………もっと早く。あの時……くそっ!!


 モトヤは急に立ち上がると地面を蹴り始めた。許せなかった。愚かしい自分が許せなかった。


 モトヤは空に佇むマオを睨んだ。

 そして言った、悲痛に満ちたような声で。




「はじめから……あったんだな?」



 マオは意地悪な子供ように聞き返す。


「何がはじめからあったの?」



 モトヤはゆっくりと手を伸ばし、マオを指した。



「爆弾は…………始めからお前の中にあったんだな?」





 マオは大きく息をつきこちらを向いて微笑んだ。


「ふふふ……正解」


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