表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
~それは城を奪い合うデスゲーム~  作者: りんご
第Ⅲ章 クラン作り
75/118

第071話 策士(2)

週二投稿初となる水曜投稿です。多分気がつかない人一杯いるだろうなぁ。加えて今回は8000文字近くなっております。……。いやぁ申し訳ありません<m(__)m> 複数にわけることも考えたのですが、分からなくなるという事で8000文字の投稿を決断しました。


 ミシャラク城の王の間には廊下側に出る扉とは別に窓側にバルコニーがついており、モトヤはそこで佇んでいた。日が沈み辺りが薄暗くなっていくなか、モトヤはバルコニーの手すりに肘をつきもたれ掛かっていた。先ほど聞いたマオの言葉がモトヤの頭の中で何度も木霊していた。


『バルダー城と白老の命…………、これをあなたにプレゼントするわ』


 ……アレは本気なのだろうか?


 モトヤは、バルコニーの手すりに中指の腹のあたりを叩きつけコンコン鳴らす。この行為に特に意味は無い。ペン回しのようなものだ。だが、考え事をしてる時は自然とその癖が顔を出す。


 モトヤはマオが何を考えているのか分からなかった。


 本当に仲間になりたいのだろうか? それとも、そう思わせて何か他に狙いがあるのだろうか? だが、マオの話が実現すればゲームクリアに大きく近づく事は間違いなかった。バルダー城を手に入れることで持ち城は2つになり、そのうえオリジンの実質的なリーダーである白老がこの世から消えてなくなるのだ、これ以上の戦果は無い。後ろから足音が聞えた。ゆっくりと近づいてくる足音はモトヤの隣にくるとピタッと止んだ。モトヤは間接視野で金色の髪を捉えた。アリスだった。


「マオは何て言ってきたの?」


 モトヤは何と答えるべきか少し悩むが、やはり本当の事を言った。三人寄れば文殊の知恵と言うし、何よりアリスの意見を聞いてみたかった。


「マオが仲間になりたいんだとさ……。まぁそれは前から知ってるが、その証としてバルダー城と白老の命を俺達にくれるのだそうだ」


 アリスはやや驚いた顔をし、モトヤの方を見た。アリスの気持ちはよく分かる。実現不可能な話に聞こえたのだろう。


「くれるって……。適当な話をでっちあげて牢獄から出ようとしているのかしら?」

「俺も最初はそう思った……。だが、聞けば聞くほどマオの策が現実味を帯びているような気がして……。どちらにせよ、後から検証できる部分はしてみようと思う」


 アリスは溜息をつくとモトヤに改めて聞いた。


「あの女は、どういう方法でバルダー城を奪うって言ってたの?」

「…………キューウェルというクランを覚えているか?」

「一時期バルダー城を占領していたクランね。M&Jを結成してから2週間後くらいにオリジンにやられたんだっけ?」

「そう、それ」

「でも、その話って“この話題”に何か関係あるの?」

「うん、関係あるんだ。というのも、今回同じ方法を使いバルダー城を奪うのだそうだ」

「?……同じ方法って? 確かあの戦いは誰に聞いても……」


 アリスが口ごもったのを見てモトヤは指を鳴らした。


「そう……、誰に聞いてもハッキリした証言を得られなかった珍しい戦いだ。戦いがあまりにも短時間で終わってしまった為に、どの情報屋もキューウェルとオリジンのバルダー城での戦いが“どんな戦い”だったか全く把握していなかった……。周辺の調査時にギリギリ出てきたのが《バルダー城方面が急に明るくなった》という木こりの話くらいだった。もっとも、時期も時間も曖昧だということで参考にはされなかったがな……」


 アリスは細かく何度か顎を動かした。モトヤは話を続ける。


「でも、マオの話を聞いて納得できた。戦闘期間が短かった理由、それに木こりの証言もね。マオの話によると、そもそもオリジンとキューウェルの間で戦闘らしき戦闘は行われなかったらしい。何故ならキューウェルの側が小型の核爆弾のようなもので一方的に殺されたからだ」

「……小型の核爆弾?」

「そうだ、光の力で建物は壊さずにプレイヤーだけを一瞬で焼き尽くす……、そういう人生スキルがあるらしい。木こりの見た光は恐らくそれだろう」


 モトヤの説明にアリスは目を丸くさせた。気持ちは分かる。モトヤも最初マオから聞いた時同じリアクションだったからだ。そんな理不尽な人生スキルがこの世界に存在するだなんて思わなかったからだ。


「なにそれ本当なの? そのスキルで城を占領する人々を消し去ったというの? 一撃で?」

「状況的には……、一番納得がいく回答だった。戦闘後のバルダー城は前のジュン達との戦いのように色々な場所に死体が散乱しているといったことはなく、しかも短期間で戦闘が終わった。木こりの見た光とも合致する。何よりマオはオリジンの人間だ。同じオリジンに所属する味方の動向を知ってて当然だろう」

「……」

「ただ、強力なスキルなだけあって爆発させるにはいくつか条件があるらしい。まず、第一に爆発させる相手に《爆弾の原液》を飲ませなければいけないそうだ」

「爆弾の原液?」

「最初は無色透明の液体なのだそうだ。特に味はなし。で、一ヶ月かけて原液を飲んだプレイヤーの体の中で爆弾が作られる。つまり、爆発させるためには最低一ヶ月間は待たなくてはいけない」


 アリスは顎に手をあて、しばし考え込む。


「……でもその条件もマオに聞いたんでしょ?」

「そうだ」

「モトヤは簡単に信じたわけ?」

「いや、半信半疑ってところだな……。だが、マオに“こう”言われたのが大きかったよ」


『そうね、私があなたの立場でも私の嘘を疑うでしょうね。でも、私としては嘘発見器でもほしいくらいね。あなたが疑り深いせいでちっとも話が前に進まない』


 アリスは顔を横に振った。


「そう言って正直に話している“フリ”をするのがあの女の手かもしれないじゃない? でしょ? モトヤ」

「そうかもしれない。だが、そのおかげである事を思い出した。確か前にでん助が言ってたんだ。 《嘘を発見する人生スキル》を保有する人物がいると……。クランメンバーが死にちょうど空きができた。先の戦闘で死んだ欠員を埋める5人を阿南に探させていたが、4人だけにしてもらった。1名は嘘発見器の人生スキルを持つ者に使おうと思う。その為の手紙をさっきでん助に送ったところだ……。だから、上手く行けばここ一週間二週間以内にアイツの話を検証する事ができる」

「もしも、今まで話した事が全部嘘なら? ……その時はどうするつもり?」

「その場でマオを殺す」


 二人の間の時間が一瞬止まった気がした。モトヤは呼吸を整え、話を続けた。


「だから……、実際に検証可能になるまではなるべくマオから話を聞き出そうと思った」


 アリスは深く頷いた。


「分かったわ。でも、少し頭を整理させて……。え~と……つまり……今回やろうとしている事は、その人生スキルを使ってバルダー城の中にいる誰かに爆弾の原液を飲ませ爆破する……という話なの?」

「要約するとそういう事だな」

「その小型の核爆弾を使う能力者って私達の捕えた囚人の中にでもいるの?」

「いや、いない」

「え?」

「今はオリジンの一員としてどこかで何かをしてるらしい」

「何そのアバウトな情報は……、じゃあこの作戦の実行自体が無理じゃないの? しかも、そいつが私達に協力すると決まったわけじゃないんでしょ? そんな状態でどうやってバルダー城にいる敵に飲ませるの? ちょっと待って……という事はマオが一声かければその能力者はこちらに寝返るという事?」

「いや、マオは寝返らせる事は不可能だと言っていた」

「じゃあ、やっぱり無理じゃない?」

「マオに言わせると……」


 モトヤはここで一拍置いた。少し自分でも頭の整理をしたかったからだ。そして、数時間前の記憶を辿る。薄暗い独房の中でマオの話した言葉の記憶を……。




 =数時間前=




 マオの妖気な吐息がモトヤの耳に吹きかかった。


「ふぅ……。つまり、この計画はリーダーには無理に思えるわけね」

「そうだ。仮にお前の言ってる事が全部真実だとしても、バルダー城をその人生スキルによって爆破させるなら最低でも人生スキルの保有者をこちら側に抱きこまないことには無理だ」

「ふふふ」

「何がおかしい?」


 暗闇の中、僅かに動く細い影をモトヤの目が捉えた。笑っていた……、そう見えた。


「想像して……。想像力は大切よ……、キャッスルワールドでも現実世界でもね。どうして私がこんな話をしているのかを想像してみて……」


 このマオのイライラさせる口調を止めさせるため一瞬首でも斬ってやろうかと思った……が止めた。モトヤは呼吸を整え、顎に手を当て考える。


 マオが何のためにこの話をしたか? 仲間であると信用させる為……、もしくはそうこちらに思わせ牢獄から脱出する為……、シンプルに考えてこの二通りが考えられる。だが、どちらにせよ実行可能な作戦とこちらに思わせなければそもそも話をする意味が無い。ということは……この作戦はやはり実行可能なのか? こんな作戦が? だが、相手の能力者を抱きこむ事は不可能……。どう考えてもピースが足りない……。あ、いやこれは、ひょっとして……。


 モトヤの頭が1つの回答に辿りついた。不可能を可能にするにはアレしかない気がしたのだ。少なくともそうじゃなければマオはこんな事を言いださないハズだ。


「何の能力か分からんが、お前の人生スキルなら不可能を可能にすることができる……。そう言いたいのか?」


 暗闇から拍手が聞えた。


「一度で正解に辿りつくなんて、流石私のリーダーね。その通りよ。私の人生スキル【受け継がれる者(ジャーニマン)】は効果や効能、職業やそういったものを人から人へ移動させるスキルなの。残念ながら複製コピーはできないけどね。トールマンの【強烈な悪魔の光(ニュークリアウェポン)】の最初の状態である原液……、アレを私の人生スキルを使って移動させるわ、トールマンの中にね。それでトールマンと白老の両人がバルダー城にいた瞬間を見計らってトールマンを爆発させるわ……ボンッってね」


 マオは拳をグーからパーの状態に変えて爆発を表現した。


 モトヤは深く頷いた。爆発させる液体の体内から体内への移動が可能であるならば原液を飲ませてからでも爆発ターゲットを変更する事ができる。つまり、マオの人生スキルがあるならばこの作戦は可能なのだ……。あれ? でも待てよ?


「なにか言いたそうな顔ね」

「2つ疑問がある。まずお前の能力に関する話だ。爆発させる液体の《体内から体内への移動》なんて本当に可能なのか? スキルの範囲外ということはないか? 試した事はあるのか?」


 吐息が聞えた。


「もちろん検証したわ。爆弾を飲ませ、それを別の人物へ移動させたわ。ちゃんと爆発するかどうかも試してみた。問題なかったわ」


 検証済みである、という言葉にどこか違和感を感じながらもモトヤは次の質問をした。


「次は二つ目の疑問だが……、どうやって実際に爆発させる? 時がたつと自然と爆発するという仕組みでも無いんだろ? ならばバルダー城を爆発させるにはやはりその能力者をこちらに寝返らせない限り無理じゃないか?」


 このモトヤの問いに合わせるように影から手が現れた。白く透き通った手先だった。


「トールマンをM&Jに寝返らせる事は不可能と言ったはずよ。その線は消して、それは流石にできないわ。あと爆弾に関して言えばそうね、この爆弾はスイッチ式。時限式でもないし、触れれば発動するという類の物でもないわ。それでこの爆弾のスイッチだけど……確かにこれは現在トールマンにしか押す事はできないわね。でもトールマンの爆発スイッチは実は他人に権利を譲ることもできるの。まぁそれがこの人生スキルの大きな特徴なのだけどね」

「爆弾のスイッチを他人に譲り渡す?」

「そう譲渡可能なの……面白いスキルでしょ。爆発を誘発するスイッチはトールマン本人が相手の手を握り『爆発権限を譲渡する』と言えば、握られた人物はトールマンから爆弾のスイッチを押す権限を取得できる。トールマン自身はその権利を失うけどね。だからトールマンを私の部下にして大事に扱ってきたの。私は彼の上司としてトールマンを教育し、私が必要と感じた時、スイッチを私に譲り渡す事に“何の抵抗も感じないように”育てたわ。まぁ信頼関係で結ばれている……といえば分かりやすいかしら? 私とトールマンはそういう仲なの……。だけど……最後はその私によって殺されるのね……、可哀想な子……、ふふふ」


 一瞬、背筋がゾワッとした。

 先ほどから話に出てきた小型の核爆弾のスキルを持つ男とマオはそれほど近い関係だったのかと……。それならつまり……、この計画は大事に育てた部下を殺す計画でもあったのだ。大事に育てたペットをある日突然なぶり殺しにするような感覚に近いのだろうか? いや追いつめられた先にあった決断なのだろうか? 分からない。だが、これだけは言える。こいつは人として……何かがおかしい。


「そうか……、じゃあバルダー城の爆破は可能ということだな?」


 ここでまた甘い吐息がモトヤの顔に吹きかかる。


「ふふふ、だから言ったでしょ? プレゼントするって」












 モトヤの話を聞き終えたアリスが最初に言ったセリフは“これ”だった。


「やっぱり最低の女ね……アイツ……。自分の大切にしていた部下を……吐き気がするわ。何が信頼関係よ」

「確かにな、利益になるかならないか……、それしかないのだろうな」


 このモトヤの発言に対し、アリスが顎に手をあて考え込むような表情を作った。


「いや、そういう事ではないと思うの……。何と言えばいいのか分からないけど、もっと根本的にあの女と私達は何かが違う気がするの」


 そういうものなのだろうか? モトヤはアリスを見た。アリスはモトヤと同じように手すりに肘をつき外の景色を眺めていた。初めて会った時と同じ美しい横顔がそこにはあった。


「それでアリス、この作戦をやるかどうかについて聞きたい」

「私は反対ね」

「即答だな」


 アリスは覗きこむようにモトヤを見た。


「後で検証できるから、今まで言った話が全て本当だったという前提で話すわ。だとしてもよ、自分の大切な部下さえ見捨てる女よ。いや見捨てるのとは違うわね、積極的に殺そうとしてるんだから……。なら例えここで仲間になったとしても、いつ私達がアイツにやられるか分かったもんじゃないわ」

「だが、バルダー城を獲得できる事と白老を葬れるというのは……正直大きい……」

「いえ、今の私達にはバルダー城は分不相応よ。この作戦が成功したとしてもよ……。私達は所詮“指導者”のいない100人ぽっちの軍隊なの。今その100人でミシャラクエリアを抑えるのに精一杯なのに、指導者がいないままでバルダー城を獲得したとして、どうするつもり? 分かってるでしょ? 絶対に維持は不可能よ! そうでしょ? 違う?」


 ここでモトヤが一拍置いて喋った。


「実は“指導者探し”に関しては進展があった」


 アリスが驚いた目をする。モトヤは左手を操りアイテム欄からある一枚の紙を取り出す。


「マオは以前指導者暗殺の仕事に従事していた。その時に書いていたメモだ。指導者が殺されたクランはこのメモの中で×印がついているんだが……、え~とここを見てくれ、ホラここだ」


 アリスは目を細め、モトヤの指をさした所を見た。そこにはマオの字でハッキリこう書かれていた。


「クランに所属してない指導者可能性地域一覧? ミシャラクエリアベネディクトにて発見報告あり……要検討? これは?」

「この事をマオに聞いてみた。すると以前、赤色のマフラーをした指導者をそこで見かけたという報告を受けたのだそうだ。で、探してはみたがそんな奴はいなかった、だから後回しにしたんだそうだ。とりあえず、その話を聞いた俺はパプアをはじめとする極秘チームを作り、総力をあげてこいつの行方を追っていたんだが……、ついにその服装と一致する男を見つけた。アラファトエリアのダグンという小さな街にいるらしい」

「それで……どうなったの?」

「パプアに3人の護衛をつけて交渉しに行ってもらった。もしもの時は捕まえろと言っておいた。とにかく、こいつがこのメモにある人物と同一人物なら、俺達はもう少しで本物の“指導者”を手に入れることができるかもしれない。だからもう100人ぽっちの軍隊ではなくなる。やっと300人でプレイできるんだ。これならバルダー城を維持できるハズだ。だからこの計画を推し進めても――大丈夫だと思う」


 モトヤの顔を見たアリスは明らかに失望の色を浮かべた。


「……この計画を実行したいのねモトヤは……」

「…………そうだ。俺の予想だとオリジンはこれ以上勢力を拡大しない、もうゲームクリア条件を満たす《城を3つ》獲得しているからだ。その代り少ない人数でも防御できるようにバルダー城をはじめとする3つの城を恐ろしく強化する筈だ……。そのバルダー城を攻撃するには相手の10倍の兵力が必要かもしれない、いやもっとかもしれない。そうなったら俺達はそこで終わりだ。ゲームクリア出来ずに死ぬしかない、死ぬしかないんだぞ? これはチャンスなんだ。リスクはあるかもしれないが、目の前にこんなチャンスなんてそうそう転がり込む事は無い……、ならばリスクを冒すべきだろここは!!」


 アリスは大きく溜息をつき、顔を左右に振った。モトヤはそのアリスの態度を見て思わず口に出す。


「何がそんなに――」ここで止めた。だがアリスの口から続きが出てくる。

「気に入らないのかって? そうね、色々言ったけどそういうことじゃないの。根本的な理由は胸にずっと引っかかってることなの……。あの女の存在……、説明できないんだけど悪い予感がするのよ。この作戦は絶対に何かがある。一筋縄でいくような奴じゃないわ。私には分かるの……うまく言えないけど、何かとんでもない事に巻き込まれる……そんな気がするのよ……信じて私を。あの女はここで殺すべきよ。それに私達はこの道を歩むなら《虐殺》をすることになるのよ。やはり、この計画は中止すべきよ」


 モトヤは何か酷く感情的な論理を聞いている気がした。この城だってそれに近い事をして奪った。それに、こんなムキになって感情論を振りかざすなんてアリスらしくないとも思った。


「分かった。じゃあこれならどうだ、この作戦が終わり次第マオを殺す」

「……そうじゃない……そうじゃないのよ……。この作戦自体がマオの罠だと言ってるわけ私は!!」

「もしそうだとしても対処してみせる!! 俺が!!」

「アンタねぇ!! 全員の命がかかってるのよ!!」

「だからこそだ!!」


 ここでアリスがモトヤの顔面を引っぱたこうとする――が、モトヤはアリスの手首を掴んだ。アリスが残った左手を振りかぶったのを見てモトヤはアリスの左手首も掴む。アリスの両手を押し広げた為に、両人の体はピタリとくっつく。モトヤは正面を見た。アリスの顔が自分のすぐ近くにあった。鼻と鼻が触れ合うぐらいの距離。アリスはモトヤの目をみていた。モトヤもアリスの目を見た。


「絶対に上手くいく、いかせる!」

「あなたならこんな作戦を利用しなくてもやれる筈よ! あなたはもっと自分の才能を信じるべきだわ。そうでしょモトヤ?」

「買い被るな。そんな都合のいい作戦なんて俺には思いつかん。だが、この方法ならノーリスクでバルダー城を手にできる! 少なくともやってみる価値はある!」

「こんな方法よりマシな方法が何かあるはずよ!」


「あの~」


 ナナの声が後ろから聞こえた。モトヤが振り向くと、王の間とバルコニーの境目あたりで多少気まずそうにモジモジしているナナがいた。モトヤは自分がアリスの手首を掴んでいた事に気付き、手首を放した。アリスはそれを振りほどくと、そそくさと何処かに消えた。ナナを見ると何やら頬を赤らめていた。完全に誤解されたみたいだ。


「違うからなナナ、誤解だからな。皆に言うなよ。いいかお前の妄想は誤解だ。分かったな? 絶対に皆に言うなよ?」

「は、はい!」


 そう言ったきりナナもバルコニーから消えた。翌日、既に噂は広がっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ