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~それは城を奪い合うデスゲーム~  作者: りんご
第Ⅲ章 クラン作り
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第061話 策を練る


 モトヤ達の現在居住しているミシャラクエリアの街「ベネディクト」は、夕焼け色に染まっていた。

 モトヤは、コテージの窓から入ってくるその妖しいオレンジともピンクともとれぬ光を浴びながら、木で作られたテーブルに突っ伏して考え事をしていた。テーブルに投げ出されていたモトヤの両手が不意にヒンヤリする。おそらく風だ。となると、突然手に風が吹きつけてきた原因は一つしか考えられなかった。誰かがコテージのドアを開け外気が入り込んで来たのだ。


 キィーー、バタン!!


 ドアが閉まった音がコテージ内に響くと、モトヤの耳に多少神経質ともとれる女性の声が聞えてくる。


「まったく……。モトヤ、……いつまでそうしているつもり? 阿南とフィオナの本拠地移転の合意はとれたのに」


 アリスの声だ。モトヤは、アリスの神経質な声に苛立ちつつも、何故アリスがピリピリしたような声を出しているのか理解できる気がした。それはモトヤも同じだったからだ。じゃなければ、モトヤはこうしてただ黙って何時間もテーブルに突っ伏していることも無かっただろう。そう原因はハッキリしていた。


 モトヤは、100人のクランを率いミシャラクエリアのイズマ湖に面する人口の多い街「マハーバリ」を占領し、街を守ると言う名目でそこに住む人々から金を徴収しようと計画していた。この街をたった1つのクランで現在占領しているのが「プラウド」というチンピラクランだ。モトヤは、プラウドを倒す詳細な計画を作りあげていた。


 その計画とは「マハーバリ」という街全体を弱い炎魔法によって焼き打ちにし、プラウドを追いだし、一兵も損ねる事なく占領する……という作戦だ。無論、マハーバリの住民に死人が出ないよう消火計画を盛り込んだ作戦だったのだが……、でん助に言わせるとその作戦は“論外”なのだという。話にならないという意味だ。モトヤは、でん助の助言を思い出していた。


『そんな作戦を実施なんてしてみなさい。M&Jはマハーバリの人々に恨まれ、思うようにゴールドの徴収ができないようになるでしょう』


 モトヤは、バルダーエリアにあるでん助の店まで行き、まだ仲間にならないでん助にアドバイス料を払い助言を聞いているのだ。モトヤは難題にぶち当たった時、いつもそうしていた。その助言がこれなのだ。


 モトヤは、テーブルを爪で引っかきたい想いにかられながら、再度マハーバリに巣食うチンピラ共を一掃する方法がないか思考する……。だが、やはりこの方法しかモトヤの頭では思いつかないのだ。何故ならマハーバリは堅固な要塞都市だからだ。


 ゲーム開始時のマハーバリは中規模程度の街でどこからでも出入り可能なルーズな街だった。だが、キャッスルワールドにおいてイズマ湖を中心に経済が成り立っている事がプレイヤー間で十分に認識されたあたりから、この港町は急に高さ5mの壁を持つ要塞港町へと変貌をとげた。恐らくこの街を支配する「プラウド」が港町の利権を確保する為に行ったのだろう事は容易に想像がついた。


 通常の街は複数のクランが入り乱れることが普通で、それぞれ商人を守る用心棒として戦闘クランが存在していたりする。だがマハーバリのような1つのクランが街をまるごと支配するような場合“税金”と称してそこに住む人々から金を徴収する制度を敷くクランが多かった。もちろんモトヤもこの街を奪った暁にはそうするつもりだった。その為には……「プラウド」が邪魔なのだ。


「ねぇマハーバリじゃなくても別にいいんじゃない?」


 アリスがモトヤに再度喋りかけてきた。モトヤはアリスの声が聞こえていたが敢えて無視した。モトヤにとってこの街は絶対に欲しい場所だった。やがてミシャラク城を占領する為にも“金”が必要なのだ。“アリスは何も分かっていない”モトヤはそう思った。この街を占領すれば莫大な富が手に入る……それがキャッスルワールドをクリアする為にどうしても必要なものだとモトヤは感じていたからだ。


 ――でん助のアドバイスは、街を必要とするなら、その街に攻撃を仕掛けるな……というアドバイスだった。そんなこと不可能だ。どんな方法で戦うとしても街自体が戦場になることは間違いない……。どうすりゃいいんだ。


 ふてくされたように突っ伏したままのモトヤの手がまたヒンヤリした。また誰かがドアを開けたのだろう。そしてアリスとは別の女性の声がモトヤの耳に聞こえてきた。


「ったくモトヤはまだふて寝の最中かい? いい加減にしな。アンタ仮にもリーダーだろ? アタイが代わってやってもいいんだぜ?」


 フィオナの声だ。フィオナの声はまだまだモトヤに説教したりないと言った感じで、言葉を続けた。モトヤは五月蠅いと思いつつも耳を塞ぐ事すら面倒で言わせたいままにした。


「第一だ、街中に炎をつけるって作戦が悪すぎる。それじゃ誰だろうとアンタを恨むに決まってるだろうさ。あの坊主眼鏡じゃなくても分かる話だろ」


 次に野太い感じの男の声がモトヤの耳に届く。ドアから入って来たのは2人だったみたいだ。


「姐さんらしくない言葉ですね。むしろ姐さんがやりそうな作戦なのに」

「ふざけんじゃないよオドム! あんたアタイをどういう目で見てるんだい! アタイがそんな野蛮な真似するわけないじゃないの! アタイほどスマートに戦うプレイヤーも珍しいってのに。それにアタイは別にこの街でもいいんだ」


 モトヤは、全く自己分析ができていなさそうなフィオナの声を聞きながら“あるアイデア”が脳裏をかすめた気がした。フィオナであればやりそう……という言葉が何か引っかかったのだ。だがその正体は分からない。だがこの言葉は“何かとてつもないヒントになりそう”という予感を感じさせた。


 ――俺は何を思いつきそうになったんだ?


 モトヤは、突っ伏した状態から少しだけ上体を起こし周りを見た。すると、フィオナがニヤつきながらモトヤに喋りかけた。


「ようやくお目覚めかい?」


 モトヤは、この言葉を無視するとまたテーブルに突っ伏した。今度は顔がさっきとは逆の窓の方を向いていた。この顔の向きを変える行為にさして意味はないのだが、とにかく窓から射す光がまぶしい。そして5時間ぶりぐらいにモトヤは声を発した。


「ちょっとカーテン締めてくんない?」


 この5時間ぶりのリーダーの第一声があまりに情けない事にアリスは怒りを通り越したのだろうか? 呆れた顔をしながら溜息と共にカーテンを締めた。すると光が強すぎていて見えなかったテーブルの横の椅子の配置がいつもと逆になっている事に気付く……が、数秒後に理由を思い出した。今はパプアを商人としてマハーバリの街にスパイとして送り込んでいるのでアリスの席が一つ繰り上がった格好になっていたのだ。


 ――椅子の配置が……逆だった……ん?


 その瞬間雷にでも打たれたかのようにモトヤの頭の中が高速回転しはじめた。モトヤはガバっと上体を起こしアリスの方を向くとアリスに質問した。


「アリス……あの魔法……俺達がアラファトエリアの街に囚われてた頃、確かアリスはレベル表示変えてたよな?」


 アリスは、つい数秒前と別人のようにまくしたてるモトヤを見て驚きながらも答えた。


「ええ、そうよ。そういう呪文なの」


 モトヤはアリスの返答に細かく何度か頷きながら次の質問をした。


「アレはレベル表示だけじゃなくて名前も変える事ができるのか?」


 アリスは腕を組んで数秒考えた後に返答した。


「ええ、問題ないハズよ。ただし疑似ネームをつける場合効果時間は一時間ほどしかもたないの。あと、あの魔法は他の人に向けて使うことができないものなのよ。つまり表示をいじれるのは私だけね」


 モトヤは小さくガッツポーズをした。頭に思い描いた作戦を実行可能かもしれなかったからだ。


「一兵も損なうことなく、更に住民に恨まれる事なく、マハーバリを俺達の手に入れる方法を思いついた。アリス! 阿南を呼んで来てくれ! 皆にマハーバリ攻略作戦を聞かせる!!」



 そして数十分後、阿南、アリス、フィオナがいる席でモトヤは得意げに喋り始めた。



「では諸君、これからマハーバリ攻略作戦の内容を説明する」


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