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~それは城を奪い合うデスゲーム~  作者: りんご
第Ⅱ章 バルダー城の戦い
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第025話 ジュン編 第一次バルダー城の戦い(2)

 通常、クランの人数には上限がある、それはたったの100人だ。

 バルダー城内で鷹の団を待ち受けるベストコンボイもクラン人数の上限数ギリギリの95人である。これに打ち勝つ為にホークマンは3クラン合同での城攻めを提案したのだった。その数、総勢220人。



 この220人の軍隊はバルダー城近くまで来ると三手に分かれてそれぞれバルダー城の東、西、北に散らばった。東は鷹の団、西はボコットケモンスター、北はジロンダンが担当する。


 合計220人の軍隊がクラン別にそれぞれ分かれて戦うのは、お互いのクランを十分に信用しきれてない側面があったからだ。


 では、そもそもこれから攻める【 バルダー城 】とはどういう作りになっているのか説明したい。



 バルダー城は裸城のまま平地の上にポツンとあるわけではなく、その城の周りを30mほどの高さの城壁で囲んでいる。これを【 幕壁(まくかべ) 】という、または【 カーテンウォール 】という呼ばれ方もするらしい。中世ヨーロッパなどではこの幕壁で街や城をグルっと囲み幕壁より内側にあるものを守るのだ。ちょうど漫画「進撃の巨人」にあるような壁を連想してもらえると分かりやすい。あれよりは随分と小さいが、その壁が城を中心とした正方形の形でそびえ立っていた。一辺の長さはちょうど約200mほどだろう。その正方形の四隅には、それぞれ頑丈な塔が備え付けられており、防御施設の中核をなしていた。


 城門は北側の城壁に設置されており、城壁の内部と外部の通行を一手に担っていた。ホークマン率いる鷹の団は東側からこの城を攻める。となると目の前にあるのは城壁だけという事になる。ではこのそびえ立つ城壁に対しどうやって攻めるのかと言うと……城壁にハシゴをかけ、それを昇って城内へ侵入するのだ。狂気のような手段に思うかもしれないが、他に方法がない。少なくともそれがホークマンの判断だった。



 ホークマンは鷹の団を城壁から400mほど離れた東側の平地に布陣させたところで一人だけ前にでて味方に向かって叫んだ。


「おい! お前ら! 腕章はつけてるか!?」


「はい!」


 腕章とはこの戦いの為に作った腕に巻く印であった。鷹の団は赤色、ボコットケモンスターは黄色、ジロンダンは青色とこの腕章があれば、それぞれを識別できる。つまりこの腕章をしていないものは全て敵ということだ。


「俺達はジロンダンのラッパの合図で3部隊が一斉に動き出し、城壁にハシゴをかけ、そこから侵入する。突入部隊は全員上から矢が射かけられるため盾を装備しろ、いいか忘れんなよ! ジュンお前もだぞ、必ず盾を装備しろ! 東側壁上にあがった後は、まず東側壁上の敵を一掃して東側壁上を占領する。そこからの指示は東側壁上占領後にだす! この戦いは時間との勝負だ! 俺達が3方から一斉に攻撃すると相手は城内の兵力を分散せざる得なくなる。この時間の内に勝負を決するんだ! ハシゴを昇る間に敵は城壁の上から俺達の数を減らそうとシャカリキに矢を放ってくるだろう。その前にハシゴを昇りきれ! いいな!?」


「はい!!」


 ここでホークマンは目の前にいるジュンを見た。


「……じゃ突入はお前にまかせるぞジュン」


 ジュンは小さくうなずく

 そしてホークマンは手を叩きながら叫ぶ


「よーし! じゃ配置につけ!!」


 突入部隊は5つの班に分かれていた。これはハシゴの数と同じで、ハシゴ1つにつき10人の小さな班であった。突入部隊は合計で50人いてホークマンと後衛部隊の30人はこれの援護にまわる。


 突入を準備する部隊には緊張が漂う、これから恐らく確実に数十人はこの中で死ぬであろうことは簡単に想像できるからだ。壁面にハシゴをかける一番中央の班の先頭に杉原淳二こと「ジュン」は居た。


「ふぅ……ふぅ……」


 さすがのジュンもこの緊張感に負け緊張してきた。


 ――緊張しないところだけが俺のとりえだと思ってたんだけどな……これから命のやりとりをするんだな……。


 アイテム欄にいつでも二刀流が可能なように2本の剣を入れておく。


 ――ハシゴを昇り切るまでは剣は必要ない、盾だけでいい。昇り切ったと同時にアイテム欄から剣をだして切り裂いてやる。


 ジュンのすぐ後ろにはジュンを憎んでいる美女ヴァシリーがいる。ジュンはヴァシリーに声をかける。


「俺から離れるなよ、ピッタリと張りついてこい!」


 ヴァシリーは何も言わずにジュンを睨みつける。その時であった。城の北側のクラン「ジロンダン」のいる方角からラッパの合図が聞こえた。



「ブブボオオオオオオオオオオオオオ」



 ホークマンが大声を叫ぶ右手を大きく前に倒した。


「突入! 開始!!」



 ホークマンの声を聞いて突入部隊5班が一気にバルダー城の東側城壁にむかってハシゴを担いでダッシュする。


 すると後衛部隊も同時にダッシュする。そして壁上の城兵を遠距離で攻撃するのにちょうどいい位置までくると味方の兵に矢を射かける敵の城兵に向かって、矢を放ったり魔法を放ったりした。その様をみてジュンは思った。


 ――あれで敵の数が減りゃいいんだけどな……。


 後衛部隊ではホークマンの怒鳴り声が響く。


「オラオラ!! 野郎共もっと気合い入れて攻撃しろ!! あの城兵が突入部隊に攻撃をできないくらいめちゃくちゃにしてやれ!! 殺せ!! 殺しまくれ!!」


 ちょうど突入部隊がハシゴをかついでダッシュしている上空を後衛部隊の攻撃がピュンピュンと飛んでいく、基本的にはこの後衛部隊の援護が多いと突入部隊に対する攻撃が弱まる事になる。


「はぁ……はぁ……」


 ――やけに城の壁が遠くにあるように感じるな、走っても走っても近づいてる感じがしねぇ


 ピュンピュンピュン


 走っている間にも絶えず敵の矢や魔法攻撃が突入部隊に浴びせられる。この攻撃を左手にもつ盾を正面にかかげることで防ぐ、右手はハシゴをもっているため手がふさがっているからだ。


 ジュンを先頭に突入部隊は右肩に約30mのハシゴを担いぎ一列になってひた走る。遠くから見るとまるでムカデのようだ。


「ぐぇ!!」


 ジュンの居る中央班の一人の「ヘレンキラー」が矢によって喉をいられた。


「ヘレンキラー!!」


 ヴァシリーが倒れた仲間に駆け寄ろうとするが、ジュンに怒鳴られる。


「何してる!! ヴァシリ―! 行くぞ!!」


「でもヘレンキラーが!!」


「あいつは後衛部隊が何とかする! 俺達はここに留まれば全滅だ!」


「でも!」


 ジュンはヴァシリーのえりくびを掴み、むりやり引っ張りハシゴの列に戻すと、またハシゴを担ぎ城壁まで走る。


 突入部隊はやっと東側城壁の下まで辿りついた。


「みんな盾を上に向けながら一気にハシゴをかけるぞ!! せーーーの!!」


 と5班一斉に城壁にハシゴをかけた。

 ハシゴの先端から5mほどは対象の城壁にくっついて離れない仕掛けがされていて、これでハシゴが安定する。あとはこれを昇り城壁の上にいる敵を倒すのだ。そうすることでミッションの半分は達成したことになる。


「よし! 昇れ!!」


 ジュンの合図で突入部隊5班が一気にハシゴをかけあがってゆく。

 ジュンも盾を顔の前あたりにかかげザンザンと降る雨のような矢を防ぎながらハシゴに手と足をかけ昇ってゆく。


「ぎゃああああああ」

「あ……あ……」

「神様ぁーーー!!」


 ハシゴを昇っていた5班うちの三人が敵の矢をどこかしらに受け城壁の下に落ちてゆく。その間にも殺意をもった敵の矢がジュン達を射ぬくため絶えずハシゴに向かって放たれる。ジュン達はそれを盾で防ぎながらゆっくりとだが確実にハシゴを昇っていった。だがジュンはこのハシゴを昇る遅さに不安を感じてしまう。


 ――ハシゴでチンタラしてたら全滅だ。


 その時、ジュンは見てしまった。ジュンの右隣りのハシゴの上に待ち構えてる敵兵が大きな石をもって待ち構えている姿を。


 ――石?? 石だと?? あの石を落すつもりか?? あんなモノ落されたら隣のハシゴを昇ってる奴等は全滅だぞ!!


 ちょうどジュンの右隣りのハシゴを昇っている先頭の兵士は自分の顔を盾で守っているのでまずいことに真上が見えない。


 ジュンは咄嗟にその兵士に声をかけた。


「石だ!! 大きな石を落されるぞ!!」


 戦場は色々な音が混じっていて、声の聞き取りが難しい、ちょうどパチンコ店の中にいると横の人の声が聞こえずらくなるのに似ている。右隣りの兵士も、このような反応をするしかなかった。


「え? なんだって??」


 次の瞬間、ジュンの右隣りのハシゴを昇る兵士達に大きな石が浴びせられ、10人全員が城壁の下に落ちていった。


 この時ジュンに野生の勘のようなものが働き、顔の前にある盾を真上が見える様に少し左にずらした。するとちょうど自分達に向かって大きな石を落そうとしてる男がジュンの視界に飛び込んでくる。


 ――まずい!!


 ハシゴの先頭にいるジュンはハシゴの下の方に向かって叫んだ。


「中央班!! ハシゴにピッタリ張りつき盾を斜めに構えろ! デカイ石が来るぞ!!」


 中央班のジュン以外のメンバーに戦慄が走った。皆、右隣りのハシゴを昇っていた連中の末路を見ていたからだ。みんな素早くハシゴにピタっと張りつくように低く構え盾を斜めにする。

 ジュンも大きな石を受け流せるように盾を斜めに構えた。


 壁上で大きな石をもっている男はおかまいなしとばかりにジュンのいる中央班のハシゴめがけて大きな石を落した。


 ――やられるかよ!!


 ジュンは自分の盾の斜めにした盾に石が当ったのと同時にハシゴと水平方向に思いっきり腕を伸ばした。すると石はやや軌道を変え城壁の下に落ちていった。このジュンの咄嗟の判断により突入部隊の中央班は大石攻撃を無傷で乗り切る。だが無傷といってもこの攻撃はそうそう守りきれるものではないとジュンは判断し、ハシゴの下の中央班の連中に大声で指示を出した。


「次のデカイ石が来る前に昇りきるぞ!!」


 ヴァシリーがすぐに反応した。


「そんなの無理よ!」


「やるんだ!! ついてこい!!」


 そういうとジュンは盾を放り投げ両手両足でハシゴを昇り始めた。

 まさに常識外の行動。上から矢が降り注いでいる状況で盾を放り投げるという行為は自殺に等しい。


 その時“ベストコンボイ”の東側の壁上では“鷹の団”のイカれた突入部隊の一人が頭を盾で守らないで昇ってきていると騒がれる。


「なんだ? 鷹の団っていうのはそんな愚か者がいるのか? 俺が殺してやるぜ」


 壁上にいるベストコンボイの弓使いはちょうどハシゴの真上から攻撃しようとした。ここでもし額や頭にこれが刺さったならば致命傷として、そこでジュンの命は終わりをつげる事になる。


 だがベストコンボイの弓使いは弓を引くと同時にある光景を目にした。鷹の団の頭を盾で守らないヤツ……つまりジュンがまるで走るようにハシゴを昇って来たのだ。


「速すぎる!!」


 ――よし今だ。


 ジュンはアイテム欄からまず一本目の剣「雷神」を呼び出し、それを掴むと躊躇なく自分の真上にいた弓使いの喉を横に斬り払う。相手がショックで自分の喉をおさえるとジュンはその喉を左手で(つか)まえ、右手に持つ剣で次は心臓のあたりを一突きした。


 ――ようやく辿りついたぞ!


 ジュンはバルダー城の東側城壁の壁上に一番先に辿りついた。ジュンがあたりを見回すと、そこに居たのは弓装備の兵士達ばかりであった。人数は20人弱という所だろうか、その壁上にいる“ベストコンボイ”のメンバーは早くも壁上に辿りついた鷹の団のメンバーが現れた事にパニックをおこしている様子であった。


「馬鹿な! こんな早くにハシゴを昇ってこれるのだ! 馬鹿な!」

「アイツを殺せ!!」

「射れ! 射れ!」


 東側城壁の壁上のベストコンボイの20人が一斉にジュンに向かって矢を放った。ジュンはそれを今殺したばかりの弓使いの肉体を盾にして防ぐ、それと同時にアイテム欄からもう一本の剣「風神」を呼び出し両手に剣を装備した。


 ――誰も近接武器は装備していなかった。全員が弓攻撃なら、一射目を防げばあとは敵は無防備だ。


 この一瞬でジュンが確認した事は、誰も剣なり槍なり斧を装備してジュンを攻撃しようとする者がいなかった事である。


 そして相手の一射目が終わると同時に掴んでいた死体を放し二刀流で20人相手にバッサバッサと斬りかかった。近接武器を装備していない東側城壁の壁上にいる兵士達はほぼなすすべがなくジュンに斬り刻まれてゆく。


「ぎゃあああああああ」

「助けてくれぇーー」

「うわぁあああああ止めてくれぇ!!」



 ほんの数秒程度の間に20人のうちの5人がこの場を離脱、14人がジュンに殺され、戦意を喪失し腰を抜かしている1人だけが残った。


 その戦意を喪失している男は全身が震えておりジュンをまるで別の生き物みたいな目で見る……。そして震える奥歯を鳴らしながらジュンの目を見て言った。


「殺人鬼……。二刀流の殺人鬼……。こ、降伏する……。あ、あんたのクランに入りたい……」


 ジュンは無言で両手をあげ降伏してる者の両手を斬り落とす。男は予想外の出来事に悲鳴をあげた。


「うぁああああああ」


 ジュンは片方の剣を鞘に収め、男に話しかけた。


「すまねぇ、こうしないと危険でな、俺達のクランに入りたいならまずクラン脱退処理をしろ。そして後衛部隊到着までうつ伏せになったままで、ここで待て」


「は、はい!!」



 その頃ハシゴを昇っている部隊は、壁上の異変を感じ取っていた。敵がこちらに攻撃を仕掛けてこないのである。不思議に思いながらもノソノソとハシゴを昇ると、そこには沢山の死体と腹這いの姿勢になってる敵兵と、剣を持ち壁上の通路に立つジュンがいた。


 ハシゴを昇り終えた班が次々とこの光景を目にした。


「これをジュン1人でやったのか?」


 鷹の団のメンバーは信じられないという表情でジュンを見た。ヴァシリーもこの光景を見た……。


「ウソでしょ?」


 確かに自分のすぐ上にいたジュンがハシゴを猛ダッシュで昇って行くところだけは見た……。だがまさか、たった1人で東側壁上の敵を倒してしまうとは……。

 ヴァシリーは背筋が凍るような思いがした。こんなことが人間に可能なのかと、どうやってジュンがこれだけの人数を倒したかというのは分からない……。だが明らかに異質、まるで現代人ではないような感覚。

 ヴァシリーは職業が騎士という近接タイプであるだけに死体を見ただけで分かる事があった。その太刀筋である。太刀筋は事故現場におけるタイヤ痕みたいなもので、どこで力を弱めたか、どこで力を入れたかというのが分かる。ジュンの太刀筋はまさしく寒気のするような太刀筋であった。全くためらいがないのである。相手の即死する首や心臓への攻撃においても一太刀でズバンといっている。なかなかできることではない。


 ヴァシリーはジュンを見た。ジュンはただ城内を見つめるだけで、その表情には何かしらの変化もない……人を殺してしまった罪悪感やら嫌悪感といった感情を微塵も見せないのだ。

 ヴァシリーは思った。この男は平気なのだと、殺される側の気持ちというものが一瞬たりとも頭をよぎらないのだと。


 ヴァシリーは今までキャッスルワールドにおいて出会ったどの人間よりもジュンに対し濃厚な「悪」を感じた。そして思った、自分の彼氏であるレビテンスはこんな悪魔みたいな人間にトマトをスパスパ切ったみたいに何も感じることなく殺されたのだと。



 東側壁上を完全に占領したことをホークマンが知るとホークマンは猛スピードで壁上まで上がってきた。そしてそこでジュンの活躍を聞く。


「流石ジュンだな、俺の思った通りの男だ」


 これ以降ジュンは「二刀流のジュン」としてキャッスルワールド内にその名を知られる事になる。


「それでホークマン、早く次の指示を出してくれ、ここにもチラホラ矢が飛んできてるし」


 そうジュンが新たな命令の催促をするとホークマンは待っていましたとばかりに新たな指示を出す。


「みんな左右を見ろ! どっちにも“塔”があるだろ。ここを占領する。まぁ東側壁上通路をおさえているから半分ミッションは完成しているようなものなんだけどな、へへへ」


 ヴァシリーがホークマンに聞く。


「すいません団長、その左右の塔を占領した後は本城を攻撃するのですか?」


 ホークマンはヴァシリーの疑問に答えた。


「いや、本城は攻撃しない、そこはジロンダンの取り分だ。あいつらが攻める」


「え? でも、それじゃ」


「ああ、それじゃゲームで言うところの占領した事にならないっていいたいんだろ? 大丈夫、その先の事はキチンと考えてある。俺に任せろ」





 その後、全ての局面で城を攻撃していた側……つまり鷹の団とジロンダンとボコットケモンスターが勝利し、はじまりのバルダーエリアにおけるバルダー城の権利は『ベストコンボイ』から『ジロンダン』に移る事になった。


 これはバルダー城の本城を占領しているのがジロンダンであるからだ



 鷹の団は「北東の塔」と「南東の塔」を占領し

 ボコットケモンスターは「北西の塔」と「南西の塔」を占領し

 ジロンダンはその城壁に囲まれたお城そのものである「本城」を占領した。


 この分割占領はあらかじめ3クランが揉めないようにという事でホークマンが提案した。

 そしてホークマンの提案には続きがあった。この案こそが合同軍を作るきっかけを与えたのであった。



 少しだけ時間は遡る。



 ホークマンはジロンダンとボコットケモンスターのリーダーであるアッシュボルトと光宙(ピカチュー)を始まりの街から1kmほど離れた平地にポツンとある小屋に呼び出していた。何度もしつこくホークマンからの会談要請があり、それにジロンダンとボコットケモンスターが応じたのだ。

 ホークマンは二人を小屋の中に案内し、そして語りかけた。


「まずは俺の誘いに応じてもらった事に対して“ありがとう”といっておこう」


 アッシュボルトと光宙(ピカチュー)は用意された席に座り、そのホークマンの言葉を無言で聞く。


「くくく。手短に話せって雰囲気だな。まぁいい、早速本題に入ろう。なぁアッシュボルド、そして光宙、知ってるか? この世界には“上級職”というものがある事をよぉ」


 アッシュボルトが不敵に笑う


「もちろん知ってるさ、舐めないでくれ」

「……」


 ホークマンが気にせずに喋り続ける。


「その上級職の中にはよぉ、クラン人数の上限を増やす職業があることを知っているかい? ん?」


 話を聞いていた二人にとっては初耳だった。クラン人数の最大値である100人というは既に決まったルールだと思っていたのだ。


「クラン人数の上限は100人ではないのか?」


 二人が驚く様を見てホークマンは話を続ける。


「ああ、その通りだぜ、クラン人数の上限は100人と決まっているわけじゃない【 指導者 】という上級職にクランリーダーが転職すればクランの人数の上限は300人となるだよコレが、へへへ。クランリーダー以外のクランメンバーが“指導者”になっても上限枠に変化はないらしいがな。ただ新たに“指導者”になった者が新クランを立ち上げても上限は300人という事だ。要は外部からでも指導者という職業についた者を自分達のクランに引き入れ、クランリーダーに就任させることができるならば、上限300人の枠のクランが出来あがるってわけだ」


 アッシュボルトが尋ねた。


「その情報の出所は?」


「くくく。ボコタの情報屋でん助だ。なんでも、オリジンというクランのリーダーはこの指導者という職業らしいぜ」


 アッシュボルトが吐き捨てたように呟く。


「なるほど……どうりでオリジンは城を2つ獲得するほど強いわけだ」


 ホークマンがジロジロ二人を交互に見た後に自分の髪をかきあげながら言った。


「という事で、以前から話してある合同軍の話、受けてくれるかい?」


 ここではじめて光宙(ピカチュー)が口を開く


「……なんで、ミー達が合同軍にならなければいけないのヨ」


 ホークマンが渋い顔をする。


「じゃあボコットケモンスターだけで、バルダー城の【 ベストコンボイ 】とやり合うか? 無理だろ? 俺達鷹の団も無理だ、無論ジロンダンもな、単独で戦うと死んじまう。ならば合同軍を組むしかない、数でまずは上回らないと奴等とまともに戦えねぇぞ」


 アッシュボルトが横から口をはさむ。


「分かった、合同軍で戦ってもしも勝ったとしよう。だが城の分配はどうする? そこで揉めるぞ」


 ホークマンが“ま~だ、わかんねーかな~”という顔をする。


「いいかぁ、今、俺は何のために“指導者”の話を出した? ん? この“指導者”とかいう職業の野郎が自分達のクランにいるか、外部からとりこんでそいつをトップにすりゃ俺達は一つのクランになれるという事だ。今はなれなかったとしても、数か月先にはなってるかもしれない。今、俺達のクランは200人程だろ? “指導者”さえいれば上限の300人に達していないから余裕の数字だぜ」


「つまりこういうコト? 普通なら指導者を探してだしてからソイツをリーダーにまつりあげ一つのクランとなって行動するけど……。ミー達は最初に合同軍を作って城を奪って()()“指導者”探しをすノネ?」


 ホークマンは親指をならし、光宙を指さす。


「くくく、そーゆーこと! なかなか面白い案だろ? これなら“今”俺達に“指導者”がいなかったとしても200人を超える軍勢を一つの目的のために動かすことできる。まぁローンで買った家みたいなもんさ。全ての現金を貯めてから家を買うか、金を貯めれる事をみこして家を買うか。この二つには大きな違いがある、それは利益の先取りだ。金を貯めるならそれまで家には住めない……だがローンなら、家に住みながら金を貯めれる。俺達はローンの方を選択するべきだ。“家に住める”という果実を先にいただくのさ。つまり大軍で行動するという果実をな」



 その後3クランリーダー会議は何度も極秘で行われ、この案ならばお互いに利益があるという話になり結果的に3クラン合同軍という形ができあがった。一応別クランでいる間は城のそれぞれの地域を自クランの占領地とすることで、事前に争いを防いだ形だ。



 これが合同軍が出来た経緯であった。その物量の効果は絶大で、何度も敵の攻撃を跳ね返してきたはずのベストコンボイをバルダー城にて打ち破ったのだ。



 これによりキャッスルワールド内の勢力図は塗り替えられた。



 ジュンは鷹の団の団員になることで、このキャッスルワールドの内部に深くかかわり始めたのだった……。




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