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~それは城を奪い合うデスゲーム~  作者: りんご
第Ⅱ章 バルダー城の戦い
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第023話 乾燥地帯(3)

 ザッザッザッザッ


 ――眩しい……はっ。


 モトヤは、眩しい朝日に照らされ目を覚ます。いつのまにか鎖に繋がれたまま鉄格子の中で寝ていたようだ、それを裏付けるかのように口からよだれが垂れていた。


 ――よだれまで再現するのかよ。相変わらずクオリティ高けぇなキャッスルワールドは……。


 すぐ前を見ると、ノッポの男とチビの男の二人組がモトヤの入ってる牢を人力で引っ張っていた。

 そう、こいつらは二人組だったのだ。


 モトヤは、捕まった時の事を思い出す。


 捕まった直後、牢の中で鎖に繋がれ足掻くモトヤの目の前に居たのはノッポの男であったが、遠くから別の男がモトヤの前に現れた。それは泥棒のような髭をたくわえた太ったチビの男だった……。 その手には先ほどモトヤが食べていたのと寸分変わらぬ大きさの肉があった。


「いやぁ~兄貴、やっぱ兄貴の作戦は本当に良いなぁ」


 ノッポの男が感心するように言う。チビの男が得意満面の笑みを浮かべる。


「ふふふ、だろ? 東大法学部卒業の俺の作戦は絶対的な効力を発揮するのさ。まぁ、プロの劇団員であるノリユキがいなきゃこれもできないけどな」


 ――完全にしてやられた! しかし、一体どういう方法でやられたんだ?


「ノリユキ、こいつに沈黙呪文(サイレント)かけてくれ、ギャギャーわめかれてもムカつくしな」

「OK兄貴、沈黙呪文(サイレント)!!」


 するとモトヤのからだがうっすらと透明に光り出す。


 ――? 何かされた?


≪一体テメェー俺に何をした!!≫


 ――あれ?


 モトヤの声が空気中に聞こえなくなった……。 モトヤは目をパチクリさせる。もう一度声を出してみる。


≪あーあー、おーーい! あいうえおーーー! ヤッホーーー≫


 やっぱり声が聞こえない。一瞬耳が聞こえないのかと思ったが、チビとノッポの男の作業音やら話声が聞こえるので耳がおかしくなったわけではない。


 ――声だ……「サイレント」……直訳すると「沈黙」……そしてチビの男の言った言葉……『ギャーギャーわめかれてもムカつくしな』……つまり声が出なくなるスキルを喰らったわけだ。


 モトヤは天を見上げた。自分が大マヌケであったことを思い知らされたからだ。勝利を確信し敵の目の前であるにもかかわらず、ジュンの事やら地図の事やら遠くの事を考えてしまった……目の前の敵に集中しなければいけなかったのに……。


「ふふふ、マヌケだなお前は~」


 モトヤは前を見る。すると肉をほおばりながらチビ男は話しかけてきた。モトヤは声が出せないので思いっきり睨みつける。


「睨むなよ(笑) 捕まったお前がマヌケなんだ。俺が用意した偽りの答えを本当の答えだと思いこんだんだからな。そしてノリユキを侮った。こんなデカい肉をトラップに使うマヌケだとな『こんなマヌケが考えた作戦だから、低レベルの罠を張っているに決まってる』ってな。そう思いこんで疑う事をしなかった。キヒヒヒヒ、本当にマヌケだぜお前(笑) お前、少し自分を過信してるようだな。自分が賢いとでも思ってるのか? 違う、本当に賢いのはこの俺だ! サミール街のナスリ様だ!! 俺のような真に賢いものは、中途半端に賢いお前のような人間の驕りを誘うのさ」


 モトヤは、もうぐうの音も出なかった。全てこのナスリというチビの言うとおりだったからだ。頭脳勝負において完膚無きまでにやられたのだ。おまけにまだ自分がやられた方法すら分かっていないのだ……この世界に来てからモトヤはこれほどの敗北感を味わった事がなかった。





 そして現在にいたる。



 朝方の日光はモトヤの目にしみた。


 ――しかし、こいつらはこの牢を引っ張って夜通し歩いたのだろうか? 頭がいいならもっと方法ありそうなのにな、抜けてるというか……アホというか……。


 そんなことを思いながらモトヤは何気なく目線をもう少し前方に移した。

 モトヤは思わず大きく目を見開く。



 そこには大きな街があった。



 始まりの町ほどではないが、遠目でも街にはそれなりに人がいるのが分かる。モトヤは、久々にみた街の姿に感動した。


「おおおおおお!!」


 その瞬間、自分自身に驚く、声が出たのだ。


――声が出た! 声が出たぞ! 沈黙の効果はまる1日程度なのかな?


 モトヤの声にノッポが振り向く。


「起きてたのかよ、マヌケ野郎」

「いやぁ……あのよ」

沈黙呪文(サイレント)


≪またかよおおおおおおおおおおおおお≫


 二人は、モトヤが中に入っている牢をサミールの街の中にある二階建ての建物の手前に運んで行く。そこには“更に大きな牢”があり、その中には複数の男女がいた。


「少し、じっとしてろ」


 チビのナスリは、モトヤの首のあたりにナイフを突き付けた。

 モトヤにナイフを突き付けている間にノッポの方が“大きな牢”の中にいる人達になにやら呪文を唱え、それが済むと次にモトヤのいる“小さな牢”の中でモトヤの両手両足を拘束してる鎖を一度外し、大きな鉄格子の中の鎖と付け替えた。

 この時、モトヤは一瞬逃亡しようかと思ったが、すでに全ての武装が剥ぎ取られているので戦闘になった所で勝てそうにないと悟り、ここはチビとノッポに従う事にした。


「こっちの大きな牢に入れ」


 そう促されモトヤは、指示通り大きな牢の鉄格子の扉を開けその中に入ろうとした……。その瞬間、モトヤは後ろからケツを蹴られ、思いっきり前かがみに転倒した。


「ははははは」


 ノッポとチビは、自分の蹴りによってモトヤの顔が砂まみれになりケツを突きだしたような態勢になっているのが可笑しいらしく。指をさして笑っていた。


≪クソッたれ≫


 ギィィィ……、ガチャン


 大きな牢の鉄格子の扉が完全に閉じられ鍵をかけられ、モトヤはノッポに声をかけられた。


「おい、逃げだそうなんて変な事を考えるんじゃねーぞ」


 そしてノッポとチビは建物の中に入って行った。どうやらここが彼等の根城みたいだ。

 モトヤは、自分のいる牢の中に目を移す、そこには男が2人と女が2人いた。


 よろしく、と言いたかったが今は声が出せない。するとあちらから握手を求めてきた。拘束されている人々が何も言わない所を見ると、ここの人々も声が出せなくなる魔法を喰らっているのかもしれない、そう思った。


 だが、あのノッポとチビはこんなに人を集めて何をしようと言うのか……。


 モトヤは、男2人と女1人と握手をした。だが、この大きな鉄格子の中にいる女の子はもう1人いた。その女の子は、先ほどからモトヤに興味関心を見せない。ずっと鉄格子の外を眺めたままだ。

 その髪は金髪にちょっと赤みがかった色をしており、髪型は頭の少し後ろのほうでまとめてあげたような感じになっていて左右のもみあげのあたりを長い髪がサァーっと流れたようになっており、目も金色で……、まるでハリウッドの主演女優みたいな顔つきをしていて……美しかった……。


 ネーム表示で名前が見えた。


≪アリスっていうのか……≫


 母さん、一目ぼれとはこんな感じなのだろうか? ここはゲームの世界であり、そのキャラクターも自分で作り上げたキャラだ。おかげでこの世界は美男美女がゴロゴロしているが、その中でも彼女の容姿はなにかウソが無い容姿に見えた。いや理由は何でもよかった。兎に角一目見た瞬間からそのアリスという子が気になってしまった。


 だが彼女はモトヤのことを嫌っているのだろうか? ずっと外を眺めたままだ。


 元来ヘタレな性格のモトヤは、何も思ってない人には余裕で握手にいける癖に、気になる人には一向に握手にいけない。来るのを待つのみである。そもそもモトヤは色恋に関してはさっぱりで、今まで一人の彼女もできたことがない。対する淳二はモテモテで淳二と一緒に下校している最中に淳二が二人から同時に告白されるという珍事がおこった瞬間を見た事もあった。そのときモトヤは強くこう思った“俺とジュンの一体どこが違うのか”と……。一時は嫉妬に似た感情をジュンに持った事もあった。だが今も昔も良き友であり色恋の相談相手だ。


 ――ジュンならどうするだろう?


 ――きっと握手しに行くかもしれない、あいつならきっとそうする。恐らく、深く考えずにそうするだろう。なら俺もそうしてみようかな? 


 モトヤは、きっとこの子なら笑顔で返してくれそうな気がしたのだ。


 モトヤは、アリスの座っている牢の一番奥のところまで行くと握手を求めた。アリスは少しモトヤを不思議そうに見つめ、そして軽く握手をした。キャッスルワールドはリアルである。握手した肌の質感と感触と温かさがモトヤの感覚に伝わってきた。



 これがモトヤとアリスの出会いだった。



≪ふふふ、これでジュンに話す土産話ができたな≫


 今のモトヤの声はノッポの沈黙の効果のスキルにより、何を喋っても聞こえない。そのせいで口の動きから言葉を察するしかないのだが皆そんなことはできない。


 多分おれの口の動きをみて“よろしく”と言ったと思ったのか、アリスも口を開いた。モトヤは唇が読めるわけではないがハッキリと分かった。


≪よろしくね≫


 それは声こそ聞こえなかったが最高にスゥィートな“よろしくね”だった。


 ――どひゃあああ、どうしよう。すんげー嬉しいんだが!!!



 牢屋に閉じ込められて脱出不可能になったはずのモトヤではあったが、何故かこのキャッスルワールドに来て以来一番愉快な気持ちになっていた。



 ――ああ、早くこの話をジュンにしてーなー、あいつどんな事いうかなー。



 実際のところジュンが生きているという保証はなかった。だがモトヤよりも何倍も強いのだから生きていて当然だという感覚がモトヤにはあった。


 ――大丈夫、こんなところ直ぐに抜けだしてこの娘と戻る! まってろよジュン!


 なぜかモトヤは、既にこのハリウッド女優のような美貌の持ち主の少女とジュンのところに帰るシュミレーションまでしてしまっていた。アリスの側からすると非常に気持ち悪い事この上ない。




 そしてそのジュンこと杉原淳二はというと

 今まさに城攻めを開始しようとしていた。


 キャッスルワールドに5つあると言われている城の1つ、バルダー城へ。


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