第014話 りっちゃんと一緒
モトヤとジュンはクラン名「りっちゃんと一緒」に所属することになった。「りっちゃん」というのはあの野太い声を出す男の娘のネームである。なんでも本名が「倫太郎」なので「りっちゃん」なんだそうだ。オエエエエエ。
クランはかなり小規模でモトヤ達を入れて8人程度のクランで拠点はボコタから草原に出て1kmほど北にある山の頂上のコテージだった。
りっちゃんは力説する。
「いいか、俺達はこのキャッスルワールドに取り残された子羊だ。俺もお前も皆もだ。だが子羊のままじゃ、この世界は生き延びていけない、だから成長しなければならない。ここはそういう情報を提供したり、また研鑽してゆくクランだ」
つまるところ、ここは皆が自分の職業や特性や世界のルールやモンスターなどを研究するクランであるというのだ。
「ここのクランのルールはただ一つ。己の技を研鑽し、研鑽結果をこのノートに記す。皆だからノートは持てよー!! ノートは重要だぞー! そしてこの情報は俺を通じてこの世界で共有されることになる! お前達の抱えている情報がこの世界を救うんだ!」
なるほど、前の町でも情報の売り買いをしてる人を見かけたが、ここもそういう情報を売って儲けるクランなんだな。まぁ恐らく儲けはりっちゃんが全ていただくのだろうが……。悪く捉えればここはりっちゃんがお金持ちランキングの上位100位以内に入る為の手段として俺達から情報を引き出すだけのクランだが、良く捉えれば俺達はここで誰に邪魔されることもなく己の能力を研鑽する機会を与えられるわけだ。
モトヤは竜虎旅団ではゲームスタート直後の恐怖に駆られてダラダラ過ごしてしまったが、このクランではじっくり己の特性を理解できそうだと感じていた。
「ではお前ら己の技を研鑽しろ! 1分1秒を惜しめ! そしてそれをノートに記載し俺にもってこい! いいな!?」
――よし、やってやる。
「じゃあなジュン成長しろよ」
「それは俺のセリフだぜモトヤ」
そういうとモトヤはジュンと別れ、まず用意された自室に寝転んで自分は何からすべきか考えた。
――まずは己を知る事だな、孫子もそう言ってるし。
自分の情報を知る……その上で大事なことは、まず何を知っているかを知ることだった。
竜虎旅団時代に知った事は装備品や道具の効能、素材の売り買いや寝る事によるHP回復効果などの冒険における基礎的情報のたぐいであった。まぁそこでSPのメーターに目がいかなかったのは痛恨のミスではあったが……。自分の職業である魔物使いの情報はというとスキル蘭が空欄だったことでたいして調べもしなかった。
だが……あの時とは何かが変わってるかもしれない。
モトヤは自分のステータス画面を呼び出し魔物使いのスキルの蘭を見た。
――お?
モトヤの目の前に表示された項目には、そこには以前存在しなかったスキルが二つ確かに表示されていた。
――おお! スキルがある! スキルがあるぞ!!
モトヤはその二つのスキルの項目を開く。するとスキルの説明文が表示される。
スキル【 おいでおいで 】 『=おいでおいで=とは、このスキルを使う事により、周辺のモンスターがあなたのそばにやって来てあなたを含めた周囲の人間達を襲います』
――俺も襲われるのかよ……糞スキルじゃん
――もう一つはどうだ?
スキル【 兄貴やめて下さいよ 】 『=兄貴やめてくださいよ=とは、あなたがモンスターの攻撃を受けた際にできるモンスターへの降伏の合図です。運がよければモンスターの子分になれます。※必ず子分になれるとは限りません』
――……何このスキル……ぶざけてんの?
――しかし、俺はいつのまにこんな糞スキルを身に付けたんだろう? ほぼ普通に生活してただけなんだけどな……。スキルの発現に関する説明って無いのかな? うん? これかな? よっと。
モトヤはオプションの説明書にあった『スキル発現方法』の項目を開く。
『スキルは大きく分けて“職業スキル”と“人生スキル”があり、スキルが発現するのは完全なランダムです。主には戦闘中に発現しますが、スキルによっては歩いている最中に発現する場合もあります。ただ基本的には自分の職業に応じたスキルが発現するので、魔法使いが戦士のスキルを発現させるという事はありません』
『スキルの9割がこういった“職業スキル”です。対する“人生スキル”はあなたがゲームの中で過ごした経験や主義や思想などを基にソフトが判断し、ある日突然あなただけのオリジナリティ溢れたスキルが発現します』
――つまり、この糞使えないスキル二つはここまで過ごした一週間の生活の中のどこかのタイミングで発現したという事か……。多分、ホラフキン達と戦った時かも……。
――ん、なんだこれ?
モトヤは説明書の下の方にあった“ある表示”に目が行く。そこにはこう書かれていた。
『職業特性』
――気になるな……。よっと。ポチッ。
『“職業特性”とはその職業に先天的に付与されている能力の事です、例えば魔物使いであれば倒したモンスターを仲間にできるという特性を有し――』
――お??
モトヤはそこをもう一度読み直す。
『魔物使いであれば倒したモンスターを仲間にできるという特性を』
モトヤは自分の右拳をガッチリ握った。
「これだよこれ! こういうのを待ってたんだよ! なんだ職業特性だったのか、そうとは知らずにスキルのところばかりいじくってたよ~」
モトヤはそういうと自分のステータス画面を呼び出し、特性の項目を開く。
『魔物使い:特性:一定の確率で倒したモンスターを仲間にできる。仲間にできる数はレベルに応じて変化する。プレイヤー“モトヤ”がモンスターを仲間に出来る数“1”』
その下に0/1との表示がある。
杉原淳二ほどのゲーマーではないがそれでも一端のゲーマである和泉智也はこの表示の意味を瞬時に理解した。
分母の部分が現在モンスターを仲間にできる最大の数。
分子の部分が今現在モンスターがモトヤの仲間として加わっている数。
これはつまりモトヤが既にモンスターを仲間にできる状態であることを示していた。
「うおおおおおおテンション上がってきたああ!! モンスター仲間にしてええええええええええええ!!」
「そうだ、ジュン? ジュン?? ジュンいるかーー」
モトヤはジュンはジュンで己の技の研鑽をしているという事をすっかり忘れ、ジュンを誘いモンスターを仲間をするために近くの林に行くのであった。




