三・そして、悪夢は進化してゆく
《 三・そして、悪夢は進化してゆく 》
「??」
顔色を変えるハッシュの様子に、愛華が目をしばたたかせる。
一体、何がハッシュを驚かせているのか、わからなかったのだ。
困惑する愛華を見上げ、バライドルは苦渋に満ちた顔で愛華の左手を取った。そして、爽やかにきらめく碧眼の瞳で命じる。
「…アイカよ。何も訊かずに、とにかく『はい』と言え」
「――は? 何でよ?」
偉そうな口調にかちんときて、眉を寄せる。
しかし、彼はひどく気真面目な様子で――しかし、やはり、全裸の露出狂スタイルのままで、要求を繰り返した。
「いいから、言え! でなければ、大変なことになるぞ」
その瞳は、変態にあるまじき真剣さと鋭さがあって、無意識に腰が引ける。
「…た、大変なことって何よ?」
怖々訊ねる愛華に、彼は握ったままの手に力を込めて、
「――無論、大変なことだ」
「…いや、だから、その大変なことってどんなことなのよ?」
「だ、だから、とにかくものすごく大変なことになるのだ!」
「具体的にはどうなるっていうのよ?」
「そ、それはその――筆舌に尽くし難いというか何というか――とにかく、取り返しのつかないようなすごいことが起きるのだ!」
しどろもどろに答える様子から、何も考えずにその場のノリで吐いたセリフなのだということがわかった。
「……意味わかんないんだけど。っていうか、マジで遅刻したら嫌なんで、そろそろ解放してくれない? 変態馬鹿王子に付き合ってる暇はないの」
冷やかに突き放そうとするが、バライドルは手を離さない。
「誰が放すものか! いいか、『はい』と言うまで絶対に離さないからな!」
意地になっているのか、駄々をこねる子供みたいなことを言い出した。これが、幼稚園児ならば多少の可愛げもあるが、年上の男、それも全裸の変態に言われたところで、何も感じない。それどころか、ウザいだけだ。
「いいから、離しなさいよ、この変態! 無闇に女の手を握るのも犯罪になるんだからね!」
適当な嘘で脅そうとするが、逆に強くつかまれてしまった。
「だったら、なおさら、離すわけにはいかん! アイカよ、観念して、さっさと『はい』と言うのだ! そうすれば、解放してやる! さあ、言え、今すぐ言え、ほら、早くしないか!」
「それを聞いたら、ますます言いたくなくなったわ! こうなったら、あんたを半殺しにしてでも帰ってやるっっ!」
「はっ、やれるものならばやってみろ! この僕の魔法がなければ、貴様はどこにも行けず、帰ることすらままならないのだからな! 一生、世界の狭間を漂うがいい!」
「なっ、何て外道! 露出狂な変態のうえに、外道だなんて――あんた、王子の資格ないわよ! それ以前に、人間として失格だわ!」
「うるさい、こうなっては背に腹は替えられんのだ! 王子の資格以前に、命あってのもの種だからな!」
「知らないわよ、あんたがどうなろうと! いいから、手を離しなさいよ!」
「い、や、だ! 死んでも離すものか!」
ぎゅうっと両手で手首をつかまれたので、腕を振り回してみるが、男の力に敵うわけがない。かといって、空いた右手で顔をはたいても、足で蹴り飛ばしても、どういうわけか彼の身体は微動だにしない。
いい加減息が切れて、体力の限界に陥ったとき――二人の様子を見つめていたハッシュが面倒くさそうな口調で提案してきた。
「……無意味な争いは、何も生みません。どうでしょう、ここは二人の意見を尊重しつつ妥協案を模索することにしては」
「妥協案って――そんなの、必要ないわ。私は、元の世界に帰りたいの。ただ、それだけ。この変態王子が魔法をちょちょいと使ってさえくれれば、解決するのよ」
愛華の言葉に、バライドルが不服げに反論する。
「いいや、それでは僕の問題が解決しない! この件に関して、妥協案など始めから存在しないのだ」
「はあ? 何、言ってんのよ。あんたがさっさと私を帰してくれさえすれば、万事まるく収まるのよ。ほら、アホなこと言ってないで、さっさと魔法使いなさいよ」
「ふん、そんなことを言われてホイホイ言うことを聞くわけがないだろう。貴様が『はい』と言いさえすれば、家だろうがどこだろうが好きなところに連れて行ってやる。だが、そうしないというのであれば、貴様は一生、この空間から動くことはできん」
「…変態のくせに、偉そうに」
「ふふん、何とでもいうがいい。恨むなら、無能な己を恨むのだな」
ああ言えばこう言う。何とも腹立たしい露出狂だ。
むむむと睨み合い、火花を散らしていると、埒が明かないとばかりにハッシュが次の手段に出た。
「――わかりました。つまりは、お二人とも譲る気どころか話し合う余地すらないというわけですね。ならば、中立の立場である私がどちらの意見が最もな言い分であるかを判断する、ということにしてはどうでしょうか?」
「……中立って…貴様は、僕の味方ではなかったのか?」
バライドルのツッコミを無視して、ハッシュは話を進める。
「…私の見たところ、利はアイカ様にあります。時間がなかったとはいえ、いきなり王子を守る魔法少女にされた挙げ句に、異空間に転送されたのですから。これで文句を言うなというほうがおかしいでしょう」
「うんうん、その通りだわ」
愛華がご機嫌に頷くと、そちらをちらりと一瞥して、ハッシュがさらに話を続ける。
「ですが、王子の言い分にも一理あります。己の守護天使であるアイカ様の忠心を得られないようでは、国民を導く者としての沽券にかかわります。意地でもアイカ様を服従させようとしても、何らおかしなことではありません」
「うむ、その通り――って、服従? いや、別に服従させたいわけではなくてだな」
王子の言葉を遮るように、ハッシュは声を大きくして言う。
「以上のことから、アイカ様には表面上の忠誠を誓ってもらい、その代償として、王子が空間転移の魔法を使い、アイカ様を自宅に戻す、ということにしてはいかがでしょうか」
「は? 忠誠を誓うですって? この変態に? 冗談じゃないわ!」
愛華は、嫌悪感たっぷりの眼差しで反論し、それに負けじとバライドルも声をあげる。
「そ、そうだ、冗談ではないぞ! 何故、僕が代償を支払わねばならんのだ! そもそも、この女が、王子である僕に意見すること自体が間違っているのだぞ! その点を考慮して判断すべきだろうが!」
「もちろん、考慮しました。ですが、考慮したところで、王子の未来は変わりませんので、あえて無視しました」
「なっ、何だと? それは、どういう意味だ?」
「どういうも何も――王子は、アイカ様の部屋に全裸で不法侵入したうえに、拉致監禁までなさってらっしゃるわけですから、どんなに優秀な弁護士をつけたところで死刑は免れません。それならば、最後に一つくらいは善行を行うべきではありませんか?」
「!!!!!!」
目に見えて、バライドルが恐怖におののいた。
「し、死刑、だと?」
「はい、それも、ただの死刑ではありません。斬首の前に、アレをああされてこうされてそうされてから、狂気の果てに死ぬのです。想像するだけで死にたくなってしまいますね」
「!!!!!!」
ここまで言われてしまっては、返す言葉もない。
今にも卒倒しそうな馬鹿王子の様子に、わずかばかりの仏心が愛華の胸に生まれた。
「…ま、まあ、死刑とまではいかなくても、情状酌量の余地はあるかもしれないわよ」
つい、そんなことを口走ってしまった。ハッシュが、余計なことを言いやがってとばかりに冷やかな眼差しを向けてきたが、無視する。いくら、アホで馬鹿でどうしようもない主人ではあっても、さすがに、ここまで脅すのは可哀想すぎる。
バライドルときたら、自己中な変態男だが、純粋培養で育った人間らしく、何もかも鵜呑みにしてしまうのだ。このままでは、恐怖のあまり、心臓発作か何かで突然死する可能性もある。
愛華の言葉に、バライドルの瞳が希望で輝いた。
「ほ、本当かっ? 僕は助かるのかっっ!?」
ぎりぎりと愛華の左手を握りしめ、わずかに潤んだ青い瞳が見上げてくる。
(っっ! これは、心臓に悪いわね)
いくら相手が変態とはいえ、あまりにも顔がよすぎて、思わずどきりとしてしまった。
愛華は、わずかに視線をそらし、
「そ、そうね。被害者である私の言うことを聞いてくれるなら、訴えないし、誰かに罪をバラしたりもしないわ。万が一、訴えられるようなことがあっても、味方になって罪が軽くなるように証言してあげる」
「!! な、何と、広量な女だ! 貴様は、神の使いか何かかっ!?」
目を見開き、まるで女神でも見たような表情になるバライドル。その顔面には、どこか崇拝めいた色が漂っていた。
「いや、ただの人間だけど――」
やや引きながら言った愛華は、きらきらした視線をやり過ごすべく、日本人の必殺技・愛想笑いを浮かべた。
「ま、まあ、とりあえず、私を元の場所に帰してくれないかしら? 今日は、大事なテストがある日だから、休めないのよね」
本当は、テストなんて受けたくないし見るのも嫌なのだが、仕方がない。
定期的に行われる、校内学力テスト。年に二度行われるそのテストは、ランダムにスケジュールに組み込まれている。去年は春と秋だったが、今年は夏と冬に行われることになっている。ただ、詳しい日付までは生徒側には知らされていない。とにかく、不意打ちでどこまでやれるかというテストなので、実施三日前まで伏せられているのだ。そして、そのテストが、今日、行われることになっている。ちなみに、それで赤点をとっても、追試や補習などは行われない。あくまでも、己の実力を知るためのものだから、それが原因で内申書の中身が変わることはない。とはいえ、テストを故意に受けなかったりすると、当然ながら罰を受ける。それも、校舎内にあるすべてのトイレ掃除という大変な仕事だ。そして、その故意に受けなかった場合という項目には、遅刻も含まれる。
(…一応、開始して十分以内なら教室に入れるから…)
頭のなかで、間に合うかどうか、計算する。通学路を自転車で全速力で駆け抜けて、約十分。途中で、いくつか信号に引っかかった場合を考えると、十七分ほど。学校に到着して、自転車置き場から校舎までは、走って一分もかからない。しかし、二年生の教室は、三棟ある校舎のうち、一番遠い場所にある。しかも、愛華の教室は、三階の最奥にあるため、嫌がらせかと思えるほどの距離を駆け抜けなければならない。
(靴箱から全力疾走しても、五分ではきついな……)
ハッシュは、どれだけ長い時間ここにいても、元の世界では一秒も経っていないと言っていたが、それが嘘だった場合を考えると、本気でヤバいかもしれない。しかも、運が悪いことに、今日は日直だということを思い出した。日誌を職員室まで取りに行くという、余計な作業が追加される。
(…これは、朝ごはんを食べてる余裕はないか)
テスト中。しんとした空間に鳴り響く腹の虫を思うと、かなりヘビーな気分になるが、どうしようもない。我慢するしかないだろう。
愛華があれこれ考えているうちに、バライドルが魔法を使ったらしい。
破れていたはずの窓は修復され、開きっぱなしだったドアの外には、宇宙空間ではなく見慣れたフローリングの床と壁が見えた。
「も、戻った、の?」
確認するようにきょろきょろ辺りを見回していると、片膝をつき、左手を握ったままのバライドルが頷いた。
「ああ、元の次元に繋ぎ直した。これで、貴様の望みは叶ったか?」
青い瞳に問われて、愛華は頷いた。
「うん、これでいいわ。あとは、あんたたちが部屋から消えてくれればいいだけね」
これで、ようやく、悪い夢ともおさらばだ。
そう思っていたら、ハッシュの小馬鹿にしたような声が聞こえた。
「消えるわけがないでしょう。貴女は、王子の守護者である魔法少女に選ばれたのですから」
「…いや、前にも言ってたけど、何なの? その魔法少女って」
「魔法少女とは、王子に守護者として選ばれた、特殊な能力を持つ娘のことです。まあ、ぶっちゃけ、この世界の女性ならば、誰を選んでも大差なかったのですが――選ばれてしまった以上、貴女は、今日から一年間、王子の守護及び世話係を兼任する義務があるのです」
「……え? いや、待って、つまり、どういうことなの?」
「ですから、今日から、我々もこの狭苦しい動物小屋のような空間に住まなくてはならないということです。理解できましたか?」
「……り、理解も何も――ますます、わかんないんだけど!」
一緒に住むとか、ありえないし、許可した覚えもない。だいたいにして、全裸の変態王子と同居なんて、どう考えても危険すぎる。
混乱している間も、時間は着々と過ぎている。
「愛華ーっ、早くご飯食べないと遅刻するわよーっ」
母親の声に、はっとする。
目覚まし時計を確認すると、異空間に飛ばされる前の時間を差していた。秒針が動いているところを見ると、どうやら、ハッシュの言ったことは本当だったらしい。
「…と、とりあえず、さっさと着替えて、学校行って、テスト受けて――」
面倒でややこしい話は、それからだ。
そう思い、行動しようとするが、何故か、バライドルが片膝をついたままのポーズで、愛華の手をつかんで離そうとしない。
「ちょっと、手、離してよ」
ぶんぶん手を振ってみるが、バライドルにその気はないらしい。
「もう、何なのよ! しつこい男は嫌われるわよっ!」
思わず怒鳴ると、彼は実に真面目な顔つきで、
「貴様の願いを叶えてやったのだから、僕の罪を暴露したりはしないだろうな?」
などとほざいてきた。
イライラしつつも、あまりにも心配そうな顔つきをしていたため、愛華はあしらうようにして答えた。
「あー、はいはい。しないから、さっさと手を離しなさいよ――」
言った瞬間、ハッシュの吐息が聞こえた。
「……あーあ、馬鹿なことを…」
それが何を意味して発された言葉なのかを知るのに、五秒もいらなかった。
ハッシュのほうへ視線を向けた一瞬で、違和感に襲われる。何か冷たいものが、左の手首に触れたのだ。
「………? ねえ、ちょっと。これ、何なの?」
いつの間にか、握られていた左手首に見慣れないものが巻かれている。
金色の小さな鎖で編まれたブレスレット。売ればそこそこいい値段のつきそうなそれは、一介の女子高生が身に着けるには高価すぎる代物に思えた。
しかも、一体、いつ、装着したのか、まるでわからない。
何の意味があるのかも、当然、知る由もない。
しかし、妙に存在感があるそれは、自己主張するかのようにぴかぴかと輝いている。こんなものを着けて学校に行けば、即、没収。ついでに反省文を書かされる羽目になる。
「ねえ、馬鹿王子。コレは何? 嫌がらせのつもり?」
睨むようにして問うと、彼は、しまったというような顔つきになって慌てて手を離した。
そして、バツの悪そうな顔つきで視線を逸らした。その頬や額には、何故か大量の汗。その様子からは、嫌な予感しかしない。
「ま、まさかとは思うけど、呪いグッズとかじゃないわよね? あんたを変態呼ばわりした罰とか、そんなんじゃないわよね?」
言いながら、何とか外そうと試みるが、あえなく失敗。どこにもフックのようなものはなく、それどころか、接合部位が見当たらず、完全にくっついているのだ。何かで切らない限り、外れそうにない。
「ねえ、これ、外してよ。校則違反になっちゃうじゃない」
訴えるが、バライドルは顔を逸らしてこちらを見ようとしない。仕方なくハッシュを見ると、彼は憐れむような瞳で告げた。
「――ご愁傷さまです、アイカ様。こうなった以上、誰にも貴女を救うことはできません。覚悟して、残酷な運命を受け入れてください…」
「ご、ご愁傷様!? 残酷な運命って、どういうこと!?」
説明を求めてハッシュに詰め寄ると、彼は哀れむような声音で言った。
「…そのブレスレットは、王族に受け継がれる婚約の証。正式に夫婦になれば、さらに、指輪を贈ることになっています。つまり、そのブレスレットを受けた瞬間から、哀れにもアイカ様は、王子を守る魔法少女であると同時にバライドル様の婚約者となられたのです」
「……こ、婚約? 何それ? そんなの、受けたつもりないんだけど」
わけがわからない。
しかし、原因がバライドルにあるということだけはわかる。
「どういうことなのよ、馬鹿王子! 説明してよ、この変態!」
怯えたようにこちらを窺うバライドルに詰め寄ると、彼は視線を逸らしたまま、ぼそぼそと言い訳めいた言葉を口にした。
「…い、いや、貴様が僕の身内になれば、僕が罪人として裁かれることはないだろうと思ってな……」
「何、その理由! っていうか、罪人って――」
言って、理解する。
家族や恋人でもないのに、全裸を見せた王子には斬首以上の罰が下るだろう、と脅していたではないか。しかし、それは、愛華の願いを聞き入れることでナシになったはずだが――。
「何で、私があんたみたいな変態と婚約したことになってんのよ? すべて、洗いざらい話しなさい。でないと、あんたを訴えて、死刑にしてやるんだからね!」
鬼の形相で迫る愛華に恐れをなしたのか、バライドルは震える声で告げた。
「…王族の男が片膝をつき、左手を取る。その後、女が『はい』と答えると、婚約の儀が終了することになっている。貴様は、先ほど、言っただろう。はい、と。だから、婚約の腕輪が現れたのだろう」
「…はあ? 言ってないわよ、はいなんて」
身に覚えがない愛華に、ハッシュが呆れたように声を投げた。
「言ったではないですか。あーはいはい、と。つまり、あれがカウントされちゃったわけですね」
「そんな馬鹿なっ!」
あれは、そんな意味で言ったわけではない。
しかし、そんな事情はブレスレットには関係ない。ただ、条件が揃えば、自動的に受け付け完了になるのだ。しかも、一度発動したら、ブレスレットを貰った本人か相手の王子が死ぬまで外れないという…。
「完全に、呪いグッズじゃないの!」
思わず叫ぶと、ハッシュが同情たっぷりに頷いた。
「まさに、その通りです。私も、似たような目に遭ってますから、あなたの不遇の一部は共感できます」
「え、まさか、ハッシュくんも婚約を?」
驚きの展開に声を上げると、彼はこれ以上ないくらいに顔を歪めて否定した。
「そうではありません。主従契約ですよ。当時の私は、まだ若かったからですね。まさか、あんなことで、一生、王子のために働かなくてはならなくなるとは思いもせず……」
「――それは、悲惨ね…」
よくわからないが、愛華同様、不本意な災難に巻き込まれたのだろう。
彼は、どこか虚ろな目つきで己の身の不遇を語る。
「貴女の契約と同じで、バライドル様か私のどちらかが死ぬまで自由にはなれませんからね。これでも、私なりにいろいろと試みたのですよ。さすがに王子暗殺がバレるとこちらの身が危うくなりますから、幾度となく、事故死狙いで、危険な目に遭うように仕向けてみたのですが、悪魔の如き悪運の強さで乗り切られまして――さすがに、異世界ならば、バライドル様を始末してくれるのではないかとわずかながらも期待しているのですが」
その驚くべき告白に、バライドルはぎょっとした。