7:結末?
ジリリリリッ。ジリリリリッ。
けたたましい目覚まし時計の音に、俺は目を覚ました。
寝ぼけまなこのまま、枕元にある目覚ましのボタンを押す。
朝日の差しこむベッドの上で、俺はしばらくまどろむ。頭の中が、少しずつ覚醒してくる。
それとともに、薄れていた意識が徐々によみがえってきた。
……あれ?
俺、いつのまに……。
たしか、ハロウィーンの夜に……
お菓子が切れたから、小さな子どもたちに倒されて、不思議な力でおさえこまれて……
カーテン越しに窓の外を見る。どう見ても、朝だ。
俺はベッドから起きると、スマートフォンを探した。ミニテーブルの上に置かれていたそれを拾い上げ、時間を確かめる。
午前九時十二分。十一月二日の。
「――えっ。え、え、えええええっっ!?」
俺はあわてた。十一月二日。月曜日。つまり平日。
つまり、出勤日。
スマートフォンに表示された日付をもう一度確認してみる。二日の月曜日。自分のほおをはたいてからもう一度確かめてみる。二日の月曜日。
何度見てもそこには「十一月二日(月曜日)」と表示されている。まちがいない。遅刻だ。
でもなんで?
俺は自分の記憶を疑った。ハロウィーンは三十一日の土曜日。今日が月曜日。日曜日の記憶が全くない。出張とハロウィーンの気疲れで、丸一日寝ていたのだろうか。
それより、どうやって俺がこのベッドまで移動して寝たのか。その記憶もない。
――とにかく、会社に連絡しないと。
俺はスマートフォンを手にとり、会社に電話をかけた。出たのは職場の上司だ。
「あ、係長ですか? 鈴木です。あの、も、もうしわけありません、寝坊してしまったようで――」
「ん? 君はだれだ。本当に鈴木か」
「えっ」
言いながら、俺も気づいた。
声が、おかしい。いつもの聞きなれた声より、数段高い。
あいまいな返事をしたあと、俺は電話を切った。
いまの声――。俺はためしに声を出してみた。
「あー、ゴホンゴホン。えー、私は鈴木タケルです――」
――女声だ。
いったいどうなってるんだ。俺は自分のノドを確かめようと視線を落として、さらに驚いた。
Tシャツのすき間から、あるはずのない二つの胸のふくらみがのぞいている。
俺は自分の体を両手で探った。胸も、腰も、足も、いままでの俺の体と違う。短髪だったはずの髪の毛に触れると、あきらかに長い。
俺はすぐさま浴室にむかった。
その手前にある洗面台にある鏡で、自分の姿を確かめた。
「おい……どうなってんだよ、これ……」
俺はおもわず目をむいた。
がく然とした。
何が起きたのか、わけがわからない。目に映る光景が、信じられない。
鏡に映っているのは、どうみても女性だった。
胸のふくらみに、体の曲線、肩までのびる髪が、否応なしに女らしさを主張している。
そしてさらに、驚くべきことがあった。
女性になった自分の姿に、俺は見覚えがある。
目鼻立ちが整っている、きれいな顔。茶の混じる髪。スタイルのいい体。清楚でおしとやかな見た目の、三十代くらいの女性。
それはどうみても、俺にいつもなれなれしい態度で接してくる、男勝りな性格の――
「大家、さん……?」