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Halcyon  作者: I_Aryth
第一章 未知なるもの
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第六話 夜更かし



━入隊五日目━



朝食時



「なあ黒間」


「……」


「最近やっと訓練にも慣れてきたな」


「……」


「まあそれでも腕立て200回は相変わらずキツイんだけどな。俺なんかいっつも筋肉痛だぜ」


「……」



二日目からも朝食時、瑛斗は黒間に話しかけていた。

未だに黒間は自分から話そうとしない。

しかし、初日とは大分変わったことがあったようで、



「でさ~……」


「……」



黒間は自分が食べ終わっても、瑛斗が食べ終わるのを待つようになっていた。





そして午前の体力付けが終わり、

振動砕の訓練。もとい振動砕を使えるようにするための、弾の装填などといった基礎の訓練がまだ続いていた。


カチャカチャと音をたてながら、入れては戻し、入れては戻し、という作業を毎日三十分もやっている。



「初めて見た時から思ってたけど春士、弾入れたりするの本当に早いよね」



高色が作業をしながら言う。



「そうか?」



春士も作業を続けながら答える。



「使ったことがあるんじゃないかって疑問に思うよ」


「お前たちだって一日目使ったじゃないか」


「あれより前だよ。そもそもあれはあくまで仮想(バーチャル)だし」


「そうだな..….俺もそんな記憶なんて無いんだが、何故か使い方が分かるっていうか、馴染むんだよなあ。それこそ、昔から知ってたように」


「それは一種の才能だね。羨ましいよ」



作業を続ける高色の手は初日のようなぎこちなさはもうなく、ただ淡々と作業を続けていた。








PM11時

基地内の訓練生の多くが寝静まった夜。

いつもなら既に寝ているはずだが、この日は春士達は起きていて、誰が持っていたのか部屋にはランプの明かりのみが灯っており、ひそひそと呟くように会話していた。



「おい、もう就寝時間過ぎてるんだが」


「いいからいいから」



というのも夕食時四人揃っていた時に瑛斗が、今日は寝る前にどうしてもやりたいことがあるから少し寝ずにいてくれ、と半ば言い逃げのようなことをしたからだ。



「で、やりたいことって何?」



高色が質問する。



「これだよ!」



ダンッ


とは力強く取り出せなかったが

瑛斗からはそれに準ずるものが感じられた。


出てきたものはカードが何枚も入っていそうな箱だった。

というより、



「これどう見てもトランプだよね?」


「そうだ! 俺はトランプがしたいんだよ。寝るだけじゃ、体は回復しても精神は回復しないからな。どうだ? いい考えだろ?」



少し間があって、初めに口を開いたのは桐李だった。



「一理ある。俺も、特に弾の装填なんか延々とやらされて気が滅入りそうだったからな。いいんじゃないか?」


「あれは疲れるよね、精神的に。うん、僕も久々にトランプしたくなってきたよ!」



三人の意志が固まったところで視線は残る一人、春士に注がれた。



「だってよ。どうする春士?」



もう完全にやる流れじゃないか

なぜ止める側であるはずの高色や桐李がノッているのだろうか


と、

春士は一度ため息をついた後、ニヤリとして言った。



「仕方無い。やるからには手加減はしないからな」


「決まりだな」




それから四人は大富豪、ポーカー、真剣衰弱、スピード、ダウト。まるで溜まったものを晴らすようにいろいろなゲームをしていった。

喜び笑い合い、悔しがったりしているうちに気付けば2時間程経ってしまった。



「マジ春士強すぎだろ!」



十四連敗を期した瑛斗は後ろに倒れながら言った。



「バカが。お前が弱すぎんだよ」



ここまで様々なゲームを行った結果、

春士

1位 13回 2位 5回 3位 1回 4位 0回

高色

1位 5回 2位 10回 3位 3回 4位 1回

桐李

1位 1回 2位 3回 3位 10回 4位 5回

そして瑛斗...

1位 0回 2位 1回 3位 5回 4位 13回


という結果になってしまった。

(勝敗は1位と2位が勝ち、3位と4位が負けと考えた場合)



「桐李も、昔からトランプ苦手だよね~。ちょっとは強くなろうよ」


「「くっ」」



二人は歯を噛み締めるが言い返すことも出来ない。



「くそっ、じゃあこの20戦目で...」


「20戦目がなんだ?」



突然、野太い声が聞こえた。こんな声、四人の中にいたっけな?



「そりゃあ、20戦目は大…富……ご……」



瑛斗は声のした方を振り返りながら少しずつろれつが回らなくなっていった。



「そうかそうか、貴重な睡眠時間をまさか遊びに費やしていたとはな」



結論を言うと声の主は風越少尉だった。



「違うんです、理由があるんです、肉体面だけでなく精神面も回復が必要だと判断したため、遊びに興じることで、それを見込んだんです」



瑛斗は混乱した頭で必死に言い訳をする。



「ほう、それで」


「つまりこれは、その……そうです! 訓練の一貫であります!」


「そうか、お前の言い分はよく分かった。他の三人は言いたいことはないのか?」



風越に聞かれても瑛斗以外の三人は汗を流しながら目を背けるばかりだった。

死刑宣告が近付いてくるような感覚を春士達は感じていた。



「では俺からも一つ言わせてもらおう──




──お前ら! こんな時間まで何やってんだ! コラァ!!」




その声は階全体に響き、上官による説教はそれから1時間ほど続いたのだった。


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