第五話 違和感
春士達訓練生には基本的なライフワークが定められている。
朝は6時に起床、三十分で準備をし、そこから一時間朝の体操。 そのまま朝食をとり、9時から訓練が開始される。教官によって休憩時間など異なるが12時に昼食、20時に夕食がある。就寝準備をし、22時半消灯といった流れだ。
初日が案内をされただけだったため、実質今日が初訓練となる。
(遅れを取るようなことはないだろうが、気を引き締めて臨むこととしよう)
食堂で瑛斗と別れた後、春士は風越少尉に言われた集合場所に一人で向かっていた。
その途中ふと見えた窓から外に目をやると、透
き通った青空とその下に病院が見えた。
元々は普通の都市に急遽基地を設置した形になっているのだから、何も不自然な所などないのだが、
「なんだろうな、この感じは」
自分の中に生じた違和感を取り払うように呟き、集合場所への足を早めたのだった。
訓練の主なメニューは体力付け(ランニングや筋力トレーニングなど)や、仮想空間で行う実践訓練だが、15期生は全員、しばらく体力付けの訓練になるだろう。
前日やった仮想訓練は15分程度だったが、実際アルターと交戦するとなると何日か動き続けることもあるからだ。
筋力トレーニングはやりすぎるとあまり効率はよくないのでこの日は休憩時間も多めに設定されており、体力付けは15時くらいに終わった。
15時からは、仮想訓練こそしないものの、振動砕の使い方は覚えていかなくてはならないので、訓練場の中で振動砕と同じ重さのものを装着して動く的に当てる、という訓練を行った。
その訓練も何事もなく進められていたが、一つおかしな点があった。
黒間の動きが昨日までとは別人だったのだ。
悪い方向に、だが。
弾の装填には他の新兵よりも時間がかかり、走ろうとしても、振動砕が重く、満足に走ることもできなかった。
そこに前日の黒間はおらず、いたのはただの一般的な高校生のようだった。
「っはぁ~。早くも疲れてしまった」
「やわなやつだ」
「でも仕方ないよ。本当に辛いからね。僕だって少し疲れたし」
夕食のとき、春士達第3班のメンバーは四人揃って食べていた。班といっても部屋割りと同じメンバーだ。他に夕食を共にする者もおらず、自然と四人集まったのだった。
「……黒間君、昨日のことが嘘みたいに思えるほど、素人の動きだったね」
「ああ、あの動きじゃあ五、六体倒すのがやっとだろう」
高色の感想に春士が賛同する。
「でもよ、やる気が無かっただけかもしれないぜ?」
瑛斗が黒間を少しフォローする。
しかし、そんなはずはないのだ。
やる気がない、くらいで弾の装填に手間取っていたら昨日の53という数字が出るはずがないからだ。
春士たち4人は、いや15期生全員、首をかしげることになった。
まだまだ拙い文章ですので随時改更していきます