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ドクター・ヤマダ

 気が付いたら目覚めていた。あるいは、目覚めたことに気が付いたと言うべきか。上半身を少し起こして枕元を見たら、1億円が確認できた。

「山田博士はくすねたりしなかったんだ。ちょっと疑ったりして悪かったなぁー」

 そんなことを考えながらふと目を上げると、そこに白衣を着た男性が立っていた。

「お目覚めですね」

「山田博士、いつの間に白衣に着替えたのですか?...あ、すみません、人違いでしたね。ちょっと似て見えたものですから」

「初めまして、ドクター・ヤマダと申します。山田博士から5万年前のメッセージを預かっております。彼とは遠い血縁関係にありますので、少しは似ているかもしれませんね」

「山田博士はどのようなメッセージを残したのですか?」

「『5万年後に目覚める太郎君は重い病気を患っているので、治療して下さい。治療費は枕元にある1億円から受け取ってください』と言うものです」

「このお金は現在でも利用可能ですか?」

「非常に古い紙幣で、保存状態も良いので、金額としては当時の1万倍になっています」

「え、と言うことは1兆円!」

「ええ。ただし、5万年前の金額での話です。その後、インフレとデノミが繰り返されて、貨幣単位が大幅に変更され、5万年前の1万円が今の1円になりましたので、今でもちょうど1億円です」

「なーんだ。一瞬喜んだのになぁー。でも価値が下がっていなくてよかった。ところで私の病気を治してくれそうな医者はいますか?」

「私が担当しましょう」

「治療費はおいくらになりますか?」

「1億円、と言いたいところですが、それでは太郎君が無一文になってしまいますので、半額の5千万円で治療しましょう。1階の部屋で治療します」

 2人は1階の治療室に移動した。治療室には窓があり、すこし離れた歩道を歩く通行人の姿を見ることができた。通行人は男女ともに例外なく脳味噌模様の帽子を被っていた。

「そうか、山田博士が私に脳味噌模様の帽子を被せたのは、5万年後において私が他の人たちに溶け込むことができるように配慮してくれたんだ。でも、5万年後にみんなが脳味噌模様の帽子を被ることを山田博士はどうして知っていたのだろう」

 太郎は心の中でそんなことを考えていた。

「これが治療装置です」

「5万年前に私が病院で検査を受けた際に使われた超音波装置に似ていますね」

「形は似ているかも知れませんが、中身は全く違います。この装置は超音波だけではなく、電磁波など色々な『波』を出すことも検出することもできます。それにより、診断と治療がこれ1台で可能です」

「並みの機械ではないですね」

「なに!『ナミ』の機械ではないじゃと!!何を言う、これこそまさしく『波』の機械じゃ。『波』のつくものであればたいていのものが出せるのじゃ。超音波だけではなくあらゆる周波数の音波、衝撃波、あらゆる周波数の電磁波、さらには重力波も出すことができる。それだけではないぞ、異性に対して秋波を送ることもできるのじゃ。ワシもこの前、若いナースに...そんなことはどうでもよい。軍需企業にはこの装置を大型化して、地震波や津波を出せる兵器を作ろうと企んでいる奴もおるが、平和主義者のワシはもちろん反対しておる。とにかく、この機械を『波』の機械と言わず、何を『波』の機械と言うのじゃ!」


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