値段交渉
山田博士の提案はいい加減のようにも思えたが、反論しようにも論拠を持たない太郎であった。
「、、、。わかりました。5万年ですね。料金はおいくらになるのでしょうか?」
「長期コースは1年1万円じゃ。リーズナブルじゃろう」
「1年1万円と聞けば大したことはないように思いますが、5万年だと5億円じゃないですか!」
「不治の病を治すためじゃ。それくらい出しなさい」
「ちょうどその金額の貯金はありますが...」
「おお、ちょうど『ごおくえん』持っているとは、なにか『奥のあるご縁』を感じるわい」
「、、、。駄洒落としてもちょっと苦しいような...」
「まあ、気にするでない」
「でも冷凍保存で全額使ってしまっては、未来での治療費が...」
「安心したまえ。看板にも『長期割引あり』と書いてあるじゃろ。長期コースのなかでも5万年以上はさらに割引が適用されて、2割引きになる。つまり4億円で5万年の冷凍保存が可能じゃ」
「では、残りの1億円を治療費に回せる訳ですね」
「その通りじゃ。冷凍保存の際に枕元に置いておきなさい」
「足元の方がスペースに余裕がありそうな...あ、足元に置くと治療の値段交渉の際に『足元を見られる』からですね!」