冷凍保存のコース
太郎の予想外の反撃(?)に少々たじろぐ山田博士であった。
「た、確かにワシの博士論文は白紙に近かったが、それは内容を整理、吟味し、とことんまでエッセンスのみに切り詰めた結果じゃ。洗練された蒸留酒である焼酎が透明で雑味を持たないのと全く同じであると考えたまえ」
「、、、。すみません、私はあんまりお酒を飲まないので、そのたとえはイマイチよくわかりません」
「そんなことはあまり深く考えなくともまあ良い。それより冷凍保存についてより詳しく説明しよう」
「お願いします」
「冷凍保存には色々なコースがある。『超短期コース』、別目『お試しコース』とも言う、『短期コース』、『中期コース』、『長期コース』などがある」
「たくさんの種類があるのですね」
「他には『ランダムコース』、別名『気まぐれコース』とも言う、や『永遠コース』と言ったものもある」
「『永遠コース』って...」
「あるお客さんの強い希望によって新設したコースじゃ。意識はともかく肉体のみは永遠に残したいと言う要望があった。ただし、価格が青天井になってしまうので、一般的にはあまりお勧めしておらん」
「まあ、人体の冷凍保存自体あんまり一般的とは言えませんね。ところで、山田博士のお勧めのコースはどれですか?」
「太郎君の場合は、目覚めた未来において不治の病の治療をしてもらわなければならない。当然医療が十分に発達した未来でなければならないので『長期コース』がお勧めじゃ。その中でも『5万年コース』がコストパフォーマンスの面でもベストじゃと思うぞ」
「なぜ5万年なのですか?」
「5万年後であれば、どんな病気でも治せる医者がゴマンとおるじゃろうからな」