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山田所長あらため山田博士

 山田所長の勢いに押されて、つい入会申込書に記入してしまった太郎であった。

「それにしても山田所長、急に学者っぽい話し方になりましたね」

 山田所長、記入された入会申込書を見ながら、

「太郎君と言うのか、平凡な名前じゃな」

「、、、。余計なお世話です。山田さんに言われたくありません」

「ワシはこう見えても生物学の博士号をもっておるのじゃ。今後は山田博士と呼びなさい」

「山田ハクシ...」

「ハクシではない、山田ハカセと呼びなさい」

「どちらでも良いでは?」

「ハクシはどうもハクチと語呂が近くて好かん」

「ハクチ...?」

「そうか、言葉狩りのせいで最近の若いものは知らんのか。白痴と書いて、高度の知的障害のことを表すのじゃ。同名のタイトルで有名な小説もあるのじゃが」

「ああ、漢字で書いてもらえば意味はわかります」

「最近はなんでも差別用語になってしまってなぁ。ちなみに『ハゲ』も差別用語に分類されることがあるらしい」

「『ハゲ』ではなく、どう表現するのですか?」

「『髪の毛が不自由な人』を推奨している人もおる」

「『毛髪の量にハンディキャップを抱えている人』と言う表現も良いかもしれませんね」

「おお!太郎君、なかなか良いセンスをしておるのう。ちょっと冗長じゃがな」

「山田ハカセが『ハクシ』と呼ばれるを好まないのは、ひょとしたら博士[ハクシ]論文を白紙[ハクシ]に近い状態で提出してしまって、それがトラウマになっているからでは?」


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