冷凍保存研究所
「、、、。ところで顔色が優れませんね。不治の病でも患っているのです?」
「、、、。余計なお世話です」
「あ、やっぱり!ピンポーン、図星ってヤツですね。ウチのお客さんではそう言う方が多いのです。どうですか、ウチで体を冷凍保存して、医学の発達した未来において解凍した後に治療を受けると言うのは」
「うーん、アイデアとしては興味あるけど、冷凍保存したあと解凍して本当に元通りに目覚めることができるの?」
「できますとも!証拠をお見せしましょう。いいですか、この水槽の中で泳いでいる金魚を取り出して、この液体窒素の中に入れます」
「あ、金魚が凍って真っ白になってしまった」
「その凍った金魚を元の水槽に戻します」
「あ、金魚の色が戻って、また泳ぎだした!」
「どうですか、一回冷凍された金魚がちゃんと元に戻ったでしょう」
「うーん、すごいような気もするけど、山田所長、何かトリックを使ったりしてませんか?」
「疑り深い人だなぁー。動画投稿サイトの『ようつべ』で『金魚 液体窒素』で検索してご覧なさい」
太郎はスマホを取り出して操作した。
「あ、本当だ!一回冷凍された金魚が水の中で溶けてまた泳ぎだした!スゴイ!!」
「ッタク、最近の若者は自分の目で見たものより、ネットの情報を信じたりするんだから...」
「でも、金魚と人間では...」
「何を言う!金魚も人間も同じ生物じゃ。しかも人間は生物界の頂点に立っておるのじゃ。金魚にできて人間にできないことなどあるものか!金魚は口をパクパクさせるが、人間も口をパクパクさせることができる。金魚も人間も食べ物を食べて、ウンチをする。金魚は泳ぐことができるが、人間もたいてい泳ぐことはできる。金魚は人間より長い間水中にいることができると言う奴もおるが、ワシもお前も、そして人間誰もが生まれる前に母親のお腹の中で数ヶ月間羊水に浸かって生き抜いてきておるのじゃ。逆に人間にできて金魚にできないことはたくさんある。金魚が歩くことができるか?金魚がしゃべることができるか?金魚に釣りができるか?金魚がビールを飲むか?人間にできて金魚にできないことはあっても、金魚にできて人間にできないことなど一つも無い!わかったか!わかったなら、金魚に付き合って一緒に冷凍されなさい。昔から言うじゃろ『金魚付き合い』は大切にってな」