エピローグ
昨日、最上階の「冷凍保存室」の前で...
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「助手A君、お手伝いご苦労じゃった」
「今博士が被っている脳味噌模様の送信機から、太郎君の被っている脳味噌模様の装置に『夢』を送信するのですね」
「そうじゃ、ストーリーは出来上がっておる。太郎君は夢の中で5万年後に行って、そこで治療を受け、タイムマシンでまた現代に戻ってくる。ワシの開発した高性能装置によって、非常にリアルな夢を送ることが可能じゃから、太郎君は夢と思わず、現実と感じるはずじゃ」
「でも、太郎君が治療を受けるのはあくまでも夢のなかであり、実際に治療を受けるのではないので、病気が治る訳ではないですよね」
「『病は気から』とか『催眠療法』と言う言葉もあるじゃろ。病気が治ったと信じれば必ず健康状態は良い方向に変化する。それに太郎君に被せた装置にはホルモン分泌を刺激して免疫機能を向上させる機能も備わっておる。完治は難しいかもしれないが、かなり長い期間健康に過ごすことができるはずじゃ」
「5億円の価値のある『夢』でしょうか?」
「価格は君があらかじめ調べてくれた太郎君の資産状況に合わせただけじゃがな。もうすぐ死ぬという恐怖から開放されるのじゃから、それなりの価値はあるじゃろ。まあ、宝くじとか競馬とか一攫千金をねらうギャンブルなんぞはみんなそうだが、『夢』を買う側にとっては平均すればその『夢』の価値は払った金額より必ず低いものじゃ。それに対して『夢』を売る側は必ず儲かる。今のワシらのようにな」
「ボーナス期待してますよ」
「そうじゃな、大活躍の助手A君は1億円のボーナスを受け取る。君は桁外れの贅沢をして、そのお金を一晩で使い切る。普通では考えられないようなそんな経験に君はとっても満足する。と言うストーリーの『夢』をボーナスとしてプレゼントしよう」
「、、、。」
「それはそうと、太郎君に夢を送信し終わったあと、眠っている太郎君を向かいのシェラスチンホテルに運ばねばならん。部屋は確保してあり、ホテルのスタッフにも連絡済みじゃ。あとで、おぶって行ってくれたまえ」
「了解しました」
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お金で死の恐怖から逃れることができ、流浪の旅に出た太郎、電車に揺られながら、残り少ない手持ちのお金を見ながらしみじみつぶやいた。
「人生で一番大切なものは、やっぱりお金だなー」
謝辞:
このサイトの存在を私に紹介して下さり、また数々のヒントを与えて下さいました、豊洲太郎先生に深謝致します。