『mock』…〜をあざ笑う
妖が視える彼女がなんの不便もなく生活を送れていたかと訊かれればyesと答えるのは難しいだろう。なんでそんなことを言い出したかって?それはな…
「ねぇ、白木!聞いてる?飯をよこせ!」
「はあ?幽霊に飯が必要なのか?」
「一応腹は減るからね。なんなら人間でもいいんだけど…」
「あぁくそ!なんて厄介なやつだ!仕方ない、なんか買ってきてやるから静かに待っとけ!」
自分の家にとても迷惑な居候の騎士様が住み始めたからだ。それもまだ1日目でもうこんなに俺が疲れることになっている。とりあえずは狩衣を着ながら騎士だと宣言したことについて指摘するべきかどうか迷うことで現実から逃げることを今決定した。ちなみに居候が家族に見つかるのではないかという懸念は彼女が身を隠す術を持っていたことで解決されることとなった。
夜が明ければ、必然的に日がのぼり朝がやってくる。朝がやってくれば俺は学校へ向かわなければならない。俺は李花と登校することになっている。まあ付き合ってるからなんら不思議なことではない。だが、俺が李花と会えば当然この居候娘のことを説明しなければならない。それがどうも気が引ける。俺のせいじゃないのに。なにしろこの二人結構性格が似ているように思える。出会った時に一体何が起こるのか、俺も分からない。そんなことを考えている俺の気持ちはすがすがしいほどの快晴の空とは対照的にどんよりと曇っていた。
「まあ考えてもしょうがないか。とりあえず待ち合わせの時間までに向かわないと。」
夢を見た。それもあまり見て嬉しいものではない類の夢だ。小さい頃から妖が見えた、僕が見えていると気付いた妖たちは僕に興味を持ち、そして話しかけてくる奴もいれば、ちょっかいを出してくる奴もいた。そんな妖たちの振る舞いが不快だったか?そんなことはなかった。彼らもなかなかユニークな存在だ、話せば結構おもしろいし、いたずらは困るけど、遊びだと思えば自分の持ち物を追いかけるのだって楽しかった。でも……まわりの人達の反応はあまりよくなかった。視えることを人に明かしたことはない。そうでなくても、やはり妖に関わる私の行動は周りの人から見れば奇異なものにうつったのだろう。いじめにあったりすることはなかったが、周りから離れていく人は多かった。みんな遠くから私を見ていた。遠くから妖と戯れる私を見ていた。
(あ、李花の奴!またなにか見てるぞ!やーい、お前も化け物なんじゃないのか?)
聞こえてくるのはあの頃の周りの無邪気で残酷な言葉。私は妖より私をあざ笑う存在のほうがよっぽど恐かった。そんななか彼が、私も妖も受け入れてくれる彼が現れた。
李花は今の彼氏の顔を思い浮かべながら飛び起きた。
「やば!集合の時間に遅れそうだ。急がないと。」
そして慌ただしく準備を整え、玄関へ向かう。夢を見て曇った心も彼に会えば今の快晴の空のように晴れ渡るだろうと思いながら。その彼がトラブルを抱えてくるとは知らず李花は玄関を飛び出した。
「いってきまーすっ!」