寝ぼけ眼で隣を見れば、見知らぬ姿の奴がいた。
どういう状況か、まったくわからなかった。
私が眠っている間に、家に入り込んだとしたら、全ての納得がいくような気がする。
なにせ、起きると、見知らぬ男性が私の横で安らかに眠っているのだ。
私はひどい二日酔いのようで、頭ががんがんと痛んでいる。
「ったー…」
言葉を出すのも苦痛だ。
呼吸も、動く動作一つ一つが、私の体を痛めつけている。
どうしてこうなったのか、今の私には、まったく分からない。
「…こいつ誰だ」
モゾリとも動かないが、息をしているらしく、肩が一定のリズムで上下している。
それを見て、少しは安心できたが、相変わらず誰なのかが全くわからない。
昨日の記憶を思い出しながら、冷蔵庫に常駐している栄養ドリンクを飲む。
「何してたっけな…」
会社を出て、先輩と一緒に居酒屋へ行って……
ダメだ、それから先の記憶が全くない。
とにかく、彼が起きてくれるまではどうしようもない。
テレビを付けて、ニュースを見ながら彼が起きるのを待つ。
30分ほどで、どうにか起きてくれた。
彼は二日酔いになることもなく、普通に起きてくれたのがありがたかった。
「…君は誰?」
第一声がそれだ。
「誰じゃないわよ。あなたこそ誰なの」
「僕は、大安財閥会長の息子さ。大安売平っていうんだ」
「大安財閥って…」
世界でも、有数の超巨大グループ。
その会長の息子だという。
ちなみに日本では涼香財閥に次ぐ規模がある。
「ホントなの」
「本当さ。嘘だと思うんだったら、この電話番号へかけるといい」
差し出された名刺に書かれた、手書きの電話番号に、私の携帯を使って電話をかける。
3拍待ってから、誰かが出てくる。
「はい、どちらですか」
「あ、あの、大安さんでしょうか」
「はい。大安安太です」
間違いない、本人だ。
私はそう確信して、彼へと名刺を返そうとした。
だが、名刺を返さなくてもいいという。
「僕が居酒屋で同期と一緒に酒を飲んでいた時に、あなたに絡まれたんですよ。まあ、良い人そうだったので、そのまま絡まれ続けましたが」
「この度は、ご迷惑を……」
慌てて謝ろうとしている私を制止する。
「いえいえ、そんなことよりも、ご相談があるんです」
「どのようなのでしょうか」
「いろんな女性と付きあわせて頂きましたけど、1週間続いたことがないんです。でも、あなたとなら、ずっと生きていけるようなきがするんです。どうでしょうか、僕と付き合っていただけませんか」
「よ、喜んで!」
独身、彼氏なしな私は、その提案に飛びついた。
3分後には、黒服の怖い顔つきの人たちが大量に私の家を取り囲んでいた。
すぐに彼が出ていって、説明をしてくれたお陰で、無駄な血を流さなかった。
「では、行きましょうか」
「ええ、よろしくおねがいしますね」
私は、彼と手をつないで、家から出た。