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猫ちゃん、救出作戦

作者: WAIai
掲載日:2026/08/23

まだ暗い中、1台の車が走っていた。

運転手は小林といい、愛車のジープに乗っている。

暗い中、目を細めながら注意深く進んでいくと、右側から何かが飛び出してきた。

「うわ!!」

とっさにブレーキを踏んだが、何かがぶつかる感触があったので、まずいと思い、小林は車から降りる。

車のライトを頼りに探すと、猫のようだった。

「大丈夫か、おい。大丈夫か?」

猫に触れながら声をかけると、猫は横たわった状態から何とか起き上がったが、ふらふらしており、心もとなかった。

ー動物病院に連れて行ったほうがいいな。

仕事の新聞配達は後回しにして、三毛猫を救おうと、スマホを取り出す。

電話番号を調べ、かけてみると、女性が出た。

「はい。何でしょうか?」

「あ、あの、猫をひいてしまったのですが…」

小林はちらりと猫を見、答える。

首輪をしているので、飼い猫だと分かる。

本当は飼い主に言ったほうがいいのだが、そんな余裕はなかった。

「今すぐ連れて来てもらえますか?」

「今…。…しょうがない」

新聞配達は遅くなるが、小さな命を守るために、小林は承諾する。

「分かりました。今すぐ連れて行きます」

電話を切ると、猫をそっと抱き上げ、助手席に乗せる。

猫は具合が悪いのが、大人しかった。

ごめんな、と一言かけて撫でてやると、分かるのか「ニャー」と答えてきた。

ー少しスピードをあげるか。

動物病院まで時間がかからないが、とにかく猫のこどで頭がいっぱいで、小林は祈るように連れて行く。

「ーあ、見えてきた」

動物病院の建物が見えてきて、ほっとすると、ジープを駐車場に置く。

猫を抱えると、小走りで動物病院のドアを開ける。

「あ、あの…!! 今、電話した小林と申しますが…」

緊張しながら言うと、女性が出てくる。

30代くらいだろうか。

どうやら女の先生のようだった。ネームプレートに、黒川と書いてあった。

「せ、先生、よろしくお願いいたします」

「はい、それではお預かりします」

「それで、その、俺、新聞配達しないといけないので、一旦、離れても大丈夫ですか?」

「新聞配達…。それはお疲れ様です」

「はい。待っている人達がいるので」

申し訳ありませんと、続けると、先生は薄く微笑んだ。

「新聞配達が終わったら、必ず来てくださいね」

「もちろんです!! 行ってきます」

小林は車に戻ると、助手席を確認する。

血は出ていないようだが、猫のことが頭から離れない。

ー無事でいろよ!!

そう願って、ジープのエンジンをかける。

車の全く通らない道路を進みつつ、元へ戻っていく。

頭は猫のことを忘れようと、ハンドルを握りしめる。

飼い主に会ったらどうしようかとか考えるのを止めた。

ーそうなれば、ままよ!!

そう吹っ切ると、小林は新聞配達へ戻っていく。

まだ早いので、電気のついている家は少ないが、郵便ポストへ入れていく。

ー猫のはねたところに…。

新聞を配りつつ、道路を確認するが、何もなかった。

スピードは新聞を配るために落としていたので、それが良かったのかもしれない。

「よし、待っているよ、猫ちゃん」

さすがにご主人達は寝ているらしく、小林だけが正義感強く、仕事をこなしていく。

段々と明るくなってきており、この瞬間が好きなんだよなとほっとする。

暗さと明るさの混じった空。

まるで魔法でもかけられたように、ピンク色をしており、天の愛情を感じる。

小林は車に戻ると、前方に注意しながら進んでいく。

あと少しで、終わりだった。

よし、とやる気を出すと、次々とこなしていく。

「終わった…。早く猫ちゃんのところに戻らないと」

小林は休むことなく、動物病院へ向かう。

何ともないといいけれどと思いつつ、アクセルを踏み込む。

急いでいたせいか、あっという間に着いてしまい、車から降りる。

「黒川先生、猫は…猫はどうですか?」

勢いよく中に入ると、先生は優しくほほ笑んでくれる。

「大丈夫ですよ。軽い怪我で済んだみたいです」

「…良かった…。はあ」

その場に座り込むと、先生が「大丈夫ですか?」と聞いてくる。

「大丈夫じゃないですよ、全く。こっちは生きた心地がしなかった…」

「そうですか。もう心配いりませんからね」

「はい」

先生にはっきりと答えると、待合室の椅子に座る。

すぐに先生が猫を抱えて出てきて、小林は立ち上がる。

「ご主人に言ったほうがいいんでしょうか?」

「言えたら言ったほうがいいですよ。ただ動物病院に来なくていいですからね」

「そうですか。分かりました」

小林はそう言うと、猫を受け取り、治療代を払う。

痛い出費だが、しょうがない。

会計を済ますと、先生に頭を下げ、ジープへ向かう。

「お前、びっくりさせるなよ」

横たわった猫の頭を撫でてやると、猫は分かるらしく、「ニャー」と鳴いた。

小林はびっくりしたが、本当に何もなくて良かったと一安心する。

「暗いうちは、家の中にいること。分かったか?」

猫に語りながら、愛車を転がす。

ご主人様のいるうちに戻るつもりだった。

ーどんな命でも、救うものは救う。

小林のモットーで、猫の様子を伺いながら、進んで行く。

ご主人に何と言おうと考えながら、ジープはまだ黒いカーテンが開かない中、信号待ちをするでもなく、走って行くのだった。

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