はい、異世界統轄局です4 *異世界召喚案件*
夏休みに読んでみませんか?
書籍『享年82歳の異世界転生!?〜ハズレ属性でも気にしない、スキルだけで無双します〜』第3巻。
コミック『享年82歳の異世界転生!?〜ハズレ属性でも、スキルだけで無双します〜 』第3巻。
WEB版に、多少加筆もしてますので、ぜひ!!
『異世界転生』『異世界転移』『異世界召喚』とは、元の世界で一般人だった人が異世界へ訪れることである。一般的に『異世界転生』『異世界転移』の場合、元の世界で病死だったり、トラックに轢かれたりなどの事故死だったり、稀に大往生だったりする。
異世界人が、元の世界での知識や常識を活用することで、この世界を変えていく。それにより危機を回避できたり、逆に危機に瀕する場合もある。そこで異世界人が、世界の均衡を崩さないため管理、取締をする組織がある。
それが、異世界統轄局(Another World Control Division)。通称、A.W.C.D。
***聖女案件***
プルルル、プルルルルル……。
「ーーはい、異世界統轄局 窓口の山口です。転生ですか? 転移ですか?」
窓口の仕事とは、発明王が作った魔道具フォンでお客様からの話を聞き取り、迅速に判断し各部署への連絡すること。ここにくる話の内容は似たようなものが多く、ようするにテンプレ対応にはマニュアルがある。私もそれに則って、お客様から内容を聞き出し必要事項用紙に記入していく。
「え? 保護? いつの間にか知らない所にいた? 魔法陣の上? 失礼ですが、貴方様は……はい、あ、プランタン侯爵様。セゾン王国の。……ええ、はい、なるほど。では、すぐに担当の者から折り返しお電話致しますので、しばらくお待ち下さい。……はい、では一度失礼します」
私はお客様との通話を終え、自分の記入した必要事項用紙を確認して魔道具フォンの短縮番号を押すと、2回のコール音で担当部署に繋がった。
《ーーはい、召喚部 三浦》
「げっ……お、お疲れ様です。窓口の山口です」
《おい、お前、今『げっ』って言ったよな?》
「いやいやいやいや、そ、そんなわけないじゃないっすか!」
《ッチ。まーいや、で? なんだよ》
「え、あ、はい。詳細はメールしましたが、セゾン王国のプランタン侯爵より召喚の疑いがあると連絡がありました」
《あ? あーこれか。……セゾン王国か……》
「もしかして未申請だったりします?」
《だな。ここ最近、その手の報告が多いんだわ。まぁ、やっとくわ》
「お願いします!」
私は相手が電話を切ったのを確認すると、はぁ〜と深いため息をついた。三浦さんは私が入局した時の直属の上司だった。今や、部署が変わって接することが少なくなったとはいえ、未だに緊張する。
昔は理不尽な事で怒られたこともあったっけ……。まぁ、部署が変わったことで、理不尽な上司でも仕事ができる人だったことを知れたのは発見だったけど。
同部署だった時よりは丸くなったとは思うが、それでも声を聞くだけでもビクッとするのは致し方ない。
ーーー三ヶ月後の休憩室。
朝からひっきりなしに魔道具フォンが鳴り止まず、ようやく入れた休憩。私が休憩室の一角の喫煙室でドアを背に紫炎を燻らせていると、ガシッ、と音がしそうなほど豪快に頭が鷲掴みにされた。
「痛たたたたたたっ! 誰!?」
「ガッハッハハハ。痛いか? 山口」
「み、三浦さん! そりゃ痛いですって! 何すか? サボりっすか?」
「あん? うるせぇーよ」
あ、サボりなんだ……。まぁ、それを知ったところで私には何も言えないけど。
三浦さんは、しれっと私の横で喫煙し始めた。私との今のやり取りを見ていた人たちは、苦笑いをしている。それもそのはず、同じ部署の頃はそんなやり取りをよくやっていたから、古参のスタッフからは見慣れた光景だと言われていた。
「あーそーいやぁ、アレ終わったぞ。ようやくな」
「あ、この前の結局どうだったんです?」
「ふーっ。アレなぁ……」
三浦さんからの報告は、おおよそ予想通りだった。
通常、召喚する際は、事前に申請し審査を受け許可を得たことで召喚出来るのだ。つまり審査で許可が出なければ召喚を行えない。また許可がおり召喚する場合は、A.W.C.Dの職員の立会が必要となるので今回のようなことは起こり得ないのだ。
今回の召喚は、隣国であるセゾン王国の王立魔術学校の生徒による無許可召喚。しかも、召喚中に術者の魔力切れで召喚地がずれ、連絡をくれたプランタン侯爵家の中庭にいたらしい。プランタン侯爵はセゾン王国の外務大臣ということもあり、A.W.C.Dはのことを知っていたそうだ。
召喚されたのは、15歳の男の子。召喚前は、日本の高校生だったようだが、孤児院で生活していたこともあり、虐めを苦に自殺をしようとしたところ足元が光り、気づくとこちらの世界にいたらしい。言葉については、召喚の際のチートなのか何の問題もなくプランタン侯爵と会話できたらしい。
召喚した術者は、魔法陣について研究をしていた5人の生徒たち。魔法陣を研究していく上で、召喚魔法についても興味を持ち軽い気持ちで召喚してみた、と。そのことで被害者がいることを伝えると
「やったー! 俺たちもやればできるんだ!」
「よーし、今度は成功させるぞ」
「そのためには魔力量を増やさねば」
「魔力操作も訓練だな」
「やるそ、やるぞ、やるぞー!」
「「「「「おー!!」」」」」
などと騒いでいたので、生徒たちはその場で拘束、すぐさま魔力吸収ブレスレットの装着をされた。魔力吸収ブレスレットは、その名の通り魔力を吸収し一切使えなくする魔道具だ。その後、学校長と保護者が揃う中で「異世界無許可召喚罪」「未成年者誘拐罪」と、罪名が読み上げられ、その場で罰金と終身刑が言い渡された。それを聞き、生徒たちは呆然し、母親たちは泣き崩れたそうだ。
そう、今や召喚は犯罪だ。そのための申請だし、許可を必要とする。そして実際に召喚した場合は、召喚時に対象者に対して召喚理由、滞在期間、滞在中の保証などを説明して、対象者が了承したら初めて成功と言えるのだ。なので、対象者から拒否された場合は速やかに送還しなければならない。送還については、対象者に説明している間は術者があちらの世界との繋がりを切らないようにしているので可能だ。
今回は、無許可の召喚であり対象者に対しての義務も果たされず、魔力切れのためにあちらの世界との繋がりも断たれたので送還も不可能。生徒たちは、1人の人間の人生を狂わせたのだ。いくら召喚対象者が自らの命を終えようとしていたとしても、それはそれだ。
今後、対象者はこの世界で生活する為に、後見人、生活費など色々なことが必要となる。対象者にかかる費用については、全て術者である生徒たちに支払い義務が発生する。その為、家が傾くであろう多額の罰金と刑期中の作業報奨金は、対象者に譲渡されることになる。
「あー、興味本位の召喚で身の破滅っすか」
「それだけのことをやらかしたんだ、自業自得だ」
「まぁ、それは確かに。で、その少年ーー」
「拓海だ。細野アキール拓海。トルコ系アメリカ人の父親と日本人の母親とのハーフだとよ。両親が事故で亡くなって孤児院生活で今春から高校生だったんだとよ」
「へぇ。で、召喚かぁ。波瀾万丈っすね。んで、その拓海くんは?」
「今、局の研修所にいる。こっちで生活していくにも後見人の設定やら基本的なことを学ばないといけないからな」
「そっか、まだ未成年だから学校も行かないといけないですしね」
この世界での成人は16歳。そして学校を卒業する18歳までは後見人が必要となる。
「ふーっ。まぁ、後見人はA.W.C.Dでも良いし、プランタン侯爵も名乗り出てきてるから、拓海次第だな。A.W.C.Dなら日本のことを知っている人間も多いからな。それに、貴族はなぁ」
「あー、貴族になると学ぶこと増えますしね」
「色々と面倒だからな。特に言葉の言い回しやらあってなぁ〜」
「いやいや、それ、三浦さんが言います? 次期侯爵なのに?」
「あん? うるせーよ。ったく。あー、今日飲みいくぞ。わかったな! じゃあな」
「え!? あ、ちょっと……行っちゃったよ」
相変わらず自分本位すぎる……。飲むのは良いけど、さすがにサシ飲みは勘弁して欲しい。誰か誘わないと……。
そう、考えていると私に声をかける人がいた。
「あ、山口だー。お疲れ〜!」
「あ、ホントだ。おっつー」
「あきちゃん、洋子先輩! っしゃー!!」
「「え? 何?」」
「今日、飲み行きましょ! スポンサー付きだから」
「あ、もしかしてジャイ○ン?」
「ピンポーン! サシ飲みはキツいんで一緒に、ね?」
「もー、しょうがないなー」
「私も大丈夫だよ」
こうして、終業後の飲み会は元の同部署メンバーの飲み会となった。




