はみがき
歯磨きは大事。
少年は不思議な歯みがき粉を見つけたようで…
家の洗面所にあった 誰のか知らない歯磨き粉。
ちょうど切らしていたから、両親が買ってきてくれたんだろう。
その日の夜に、新品のそれは俺のコップに立てかけてあった。
パッケージには綺麗な白い歯や、モコモコの泡が描かれていた。
(使ってみよ…)
チューブを押して歯ブラシにつける。
シャカシャカと磨いているうちに不思議なことに気づいた。
味が変化しているのだ。
最初はオレンジのような柑橘系の味、次はチョコレートの濃厚な苦味、カスタードクリームの甘み、イチゴの酸味…
コロコロと変わる味は面白くて、泡立ちもいい。
歯を磨いていて面白いと思ったのは初めてかもしれない。
(次もこれ買いたいな…)
しばらくたってから、うがいと共に吐き出す。
白いかけらのような物が、吐き出した水の中にあった。
(…なんだコレ)
気味悪く感じたものの、口の中はスッキリとし、眠くなった俺は自室で眠りについた。
「おはよ〜!」
次の日の朝、妹の声がした。
「おはよ…」
まだ小さい妹は朝に弱い俺を毎日起こしに来る。
「なんかね…わたしね、くちがへんなの」
妹は寝起きの俺の手を引っ張りながら言った。
「口?」
あーんと口を空けてもらうが、何も変なところはない。
「…俺には何ともない感じに見えるけど、一応パパとママにも言いなよ?」
元気に返事をする妹の頭を撫で、俺は顔を洗いに行った。
いつも通り顔を洗い、その後は歯を磨く。
母親に口を見せているのか、「何ともないよ〜?」という声が聞こえた。
「あ、歯みがき粉使ってくれてたの?あんまり見ないお店で買ってきたの。珍しいと思って。」
母親の声がする。
「ありがとう、コレ使いやすいよ味変わるの面白いし」
シャカシャカ…シャカシャカ…
モコモコとした泡が口の中を埋め尽くし、コロコロと味は変化する。
メロン、キャンディ、マシュマロ…
ガリッ
変な音がした。
(…?)
吐き出すと、そこには小さな白い欠片があった。
(歯ブラシが欠けた…?)
そんな事はありえないと思いながら歯磨きを続ける。
ベッと吐き出すと、そこには昨日と同じような欠片がまたあった。
(…魚の骨、じゃないもんな…)
その日、俺は少し不気味に思いながら学校へと向かった。
そして、夜。
いつも通り風呂から上がった俺は歯磨き粉を見る。
少し使うのを躊躇したのだが、特に大きな問題があったわけでもない。
また歯を磨き出す。
シナモン…コーヒー…バニラ…
その瞬間、
口の中の泡が全て細かく、固くなった。
「んっ…!おぇっ…!」
ボロボロと口の中から何かがこぼれ落ちた。
小さな歯が沢山口から出てきたのだ。
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
悲鳴を上げて歯ブラシを投げた俺の耳に今度は母親の悲鳴が聞こえた。
ダッシュで階段 を 駆け上がる。
母親を探すが見当たらない。
母親は自分の寝室ではなく、妹の部屋にいた。
床に散らばったそれを拾い上げて。
ゆっくりと、口元へ運ぶ。
「これ…なんだよ…?」
キョトンとした妹が俺を見る。
その口の中には、歯が一本もなかった。
虚ろな目。
母親が、こちらを見た。
歯みがき粉のパッケージのような、白い歯で笑いながら。
最後まで読んでくださりありがとうございます!
自分が歯を磨いている時にこんな事があったら怖いよな〜と想像しながら作成しました(>ω<)
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