欲望
人間誰しも必ず一つや二つの欲望を抱えて生きている。
となれば俺にだってそんな欲望はある。
息荒く、走り去っていく姿を、薄れていく意識の中で理解していた。
何が起きたか、それを考えるよりも先に地面へと倒れ落ちていく。
遠くの悲鳴、体から力という力が抜けていく感覚。
そして騒がしい現世との別れ。
体感的には次の瞬間。
病院と思われる部屋で起きた。
腕には点滴、目の前には天井、実際にはかなり天井と距離があったものの、なんとなくそんな風に感じてしまっていた。
ただ一つ、はっきりと知覚できていたものがある。
それはその犯人に対して復讐をするという意識だった。