第3話 知らなかったけど、知っていた気がした
【王家の血とグレイ家の秘密】
記録室を出たあと、僕は少し歩きながら考えていた。
自分の家のこと、家系のこと、そんなの意識したことなんてなかった。
でも、あの本には確かに書かれていた。
“虹の指先を持つ者は、王家の血を引きし者なり”
「ねぇアレン。あなたの家……“グレイ”という姓に、何か伝承とかは?」
「ないよ。僕の家は、ほんとにただの町人の家だよ。
父も母も、普通の人。僕が魔法学園に入れたのも、ギリギリだったし」
「そう……でも、何かあると思うの。直感だけど、ね」
エリナはそう言って、ふと笑った。
「私、調べてみるわ。“グレイ”の家系に何か記録がないか。
あなたが知らなくても、図書塔は何か知ってるかもしれないから」
その言葉に、僕はなぜか少しホッとしていた。
【血に記された証と、始まりの魔法】
その夜、部屋で荷物を整理していた僕は、
引き出しの奥から、古いペンダントを見つけた。
金属のフレームの中に、丸い石がはまっている。
どこか懐かしいような、でも知らないような気持ち。
ペンダントに手をかざした瞬間――
石が、ふわっと七色に光った。
「……また、虹?」
まるであの魔導書の魔法と同じ波長を感じた。
目を閉じると、不思議な映像が浮かぶ。
大広間のような場所。
フードをかぶった男たちが並ぶ中で、一人の少年に魔法をかけている。
虹の光が、空に舞って――
「……アレン……」
誰かが僕の名前を呼んだ。
それは母の声のようで、でも違うようで。
――そして、映像は途切れた。
僕は立ち上がって、窓を開けた。
静かな夜だった。
だけど、僕の中の静けさはもう、戻ってこない気がした。
第3話、ここまでお付き合いいただきありがとうございます♪
アレンくんの過去が、少しずつ顔を出し始めました。
知らなかったことって、知ってしまうと戻れなくなる気がしますよね。
ふうとしても、ここからアレンくんの物語がどう動いていくのか楽しみです。
のんびりペースですが、また次回もよろしくお願いします♪