Ep.1
護送車の中で、ナギはただ静かに座っていた。
夕暮れ時、薄暗くなりつつある街並みが車窓を流れていく。窓の向こう側では、何もかもが遠く感じられた。彼の視界はぼやけて、時間の流れすら感じないほど、ただひたすらに進んでいく。
彼が今向かっている先――それは、もう二度と帰れない場所だった。
「超死刑」という新しい処刑方法。どんなものか、誰も詳しくは知らない。ただ、その響きが恐ろしいものであることだけは、誰もが理解していた。ナギは、そんな運命に選ばれてしまった。
「どんなことをされるんだろうな。」
ナギは心の中で呟くが、答えはどこにもない。刑務所に向かう途中、彼の頭の中には不安しか渦巻いていなかった。身体の拘束は固く、目の前にいる刑務官の冷徹な視線にすら気づかない。もう、何も感じたくない。
車がゆっくりと停止する。
ドアが開かれ、刑務官が無言でナギを引きずり出す。その手は冷たく、無情で、抵抗する暇もなく彼は地面に足をつけた。周囲の空気はひんやりとしており、鉄の匂いが漂っている。刑務所の冷たい壁が目の前に迫り、ナギは無意識に一歩踏み出す。
「ついてこい」
刑務官の冷徹な声が響いた。
ナギはただ、黙ってその声に従う。足取りが重く、心臓がどんどんと高鳴る。刑務所の中へと足を踏み入れたその瞬間、彼の運命はもう決まったも同然だった。
薄暗い廊下を進み、ナギは静かに歩く。その背中には、数人の刑務官がついてくる。やがて、扉が開かれ、ナギは部屋に入る。
その部屋の中央には、冷たく無機質な椅子が一つ、鎮座している。ナギはその椅子に座らされ、手首を固く拘束された。すぐに機械のような目隠しがされ、周りの音が徐々に遠ざかる。視界が完全に遮られると、ナギは動けなくなる。何も見えず、何も感じないただの空間に投げ込まれる。
「――超死刑、執行」
誰の声ともわからぬ言葉が耳に届いたその瞬間、
「――――――――。」
ふと気づく。何も起きない。
何も変わらない。まるで時間が止まったように、ただそこにいるだけだ。
これの何処が超死刑なんだ?
そう思ったのもつかの間
突然、目隠しが取れる。
目の前に広がっていたのは、全く見たこともない光景だった。
オレンジ色の光が無限に照らし続け、床には2cmほどの水が張られている。その水面は鏡のように静かで、周囲のすべてを映し出している。
ナギは立ち尽くし、ただその異様な空間を見つめるしかなかった。
「ここは、どこだ?」
答えはどこにもない。ただ、目の前に広がる奇妙な世界。
初投稿です。不自然な所があるかもしれません。