クリスマスはこちらにもあるらしい
はい、勢いで書いたけど後悔してないです
ちなみに本編と直結してます。番外編っぽいけど番外編ではありません
クリスマス、それは刹那に取って忘れられないトラウ……思い出である
そのせいか、ディアナにクリスマスが今日だと告げられた瞬間
何故かケーキを作りに行ってしまった
「私は何してればいいんだ?」
『姫ー、遊ぼー♪』
「うわぁぁ?! のし掛かるな潰れる! あと私は刹那と違ってお前の言葉は分からないんだー!」
トラは刹那が居なくなるとき、寝ていたので元気一杯だ。のし掛かられたディアナは満身創痍だが…
「よし、折角のクリスマスだ! たまには私が何かしてやらないとな! トラ、プレゼントを買いに行くぞ」
『あいー♪』
そして、刹那の為に買い物に行く一人と一匹だが……果たして無事に買えるのだろうか?
= = = =
AM10:00 小物取扱店にて
「むぅ、手持ちは金貨二枚か」
買い物をするには充分だが……どれだけ使っていいのかが分からない
そもそもこの金貨は【刹那から預けられた金】なのだ。お菓子は5個まで許されたが、それ以上使っていいのか分からない
「まあいい。働いて返せばいいんだ」
さて、今更ながら金額の説明だ
銅貨は円に換算すると約10円の価値がある
銀貨は銅貨100枚分の価値がある。つまりは1000円だ
そして銀貨は、銀貨は100枚分の価値がある
つまりは……10万である
そんな大金を預ける刹那もだが、それを簡単に使おうとするディアナも非常識である
「むぅ……良い物がない。刹那は可愛いの好きみたいだし……こんなチャラチャラしてるのダメだよな」
長い時間悩んでいると……不意に唸り声が聞こえ始める
『姫ー、まだー?』
「ひいぃ?! こ、こんな所に魔獣がー?!」
もちろん、トラが来ているのをしらない者はパニックである
「ここ以外の所で買おう。トラ、待たせてごめん。次に行こう」
『あいー♪』
その後、服屋、装飾屋、武器&防具屋など行ったが……結局いい物はなく、気が付くと夕暮れになっている
そして、トラがある匂いを察知する
「いいのないな」
『姫ー、あっちから不思議な匂いするー♪』
「わ、待て何処に行くんだ! そっちは変な匂いがするから嫌なんだー!」
ある店の前まで来てしまった。外装がボロボロで今にも崩れそうなイメージがある。煤けた看板にはうっすらとだが【運命屋】と書いてあった
「トラ、今すぐに帰ろう。な、なんか出そうだ」
「何も出やせんよ」
ディアナが怯えていると中から優しそうな声が聞こえた。中を覗いて見ると優しそうな笑顔を浮かべた老婆がいた
ただし……
「ひぎゃあぁ?! 出たー!」
怯えてたディアナからすればお化けにしか見えなかった
『姫ー、落ち着いてー♪ あれ生きてないけどー、死んでもないよー?』
「いや、私は生きとるんだが……今のは流石に傷付いたぞ?」
「な、なんだ生きてたのか。ご、ごめん。失礼だった」
「気にしなさんな。よく言われるよ。まあそれはそうとお嬢ちゃん、何か見ていかんかね?」
「あ、うん。見させてくれ!」
ディアナが探し始めてすぐに……2つの物に目が止まった
まずは蒼い石がはまったブレスレットだ。その石は何の飾り気もない。だが……何故かどんな宝石よりも輝いて見えた
そしてもう一つは…
「首輪?」
「チョーカーと言った方が聞こえが良いと思うんだがね」
それは可愛らしい鈴の付いた赤いチョーカーだった。ディアナは何故か分からないが、この2つを気に入った。両方刹那に似合いそうだ
「値段は?」
「いらないよ」
「え、そ、そんな訳ないだろう?! お金が欲しいから店を開いてるんだろう?!」
「違うね」
驚いた。そんなの店として成り立っていないではないか
「普段はね、お金を取るんだよ。でもね、ふふ……こん小さな女の子が、好きな相手にプレゼントをしようと頭を悩ませる姿を見たら、胸が温かくなってね」
たっぷり5秒の間ディアナは固まり、ようやく戻った時、顔が熱くなるのを止められない
「ち、違ッ?! あ、アイツはただの友達で、す、好きとか嫌いとかじゃない! ぜ、ぜぜぜ絶対にない! ないったらないー!」
「そうかそうか。まあ、サンタさんからのプレゼントだと思いな」
「う、ううぅ〜……!」
その後、ディアナは逃げるように店を出た。トラはゆっくり後をついて行くが、一度だけ振り返り
『アレー、本当になんて物なのかなー?』
どう考えても人に対する感想ではない事を呟いていた
= = = =
刹那は大量のケーキ片手に部屋に帰っていた。ちなみに現在は机の前で膝をついて落ち込んでいた
「……何で、こっちの世界でもケーキ作ってんだよ。ちくしょー、コレもう強迫観念だよ。作らないと空高く殴り飛ばされる気がするとか病気だよ……うぅ」
若干、刹那の身体から負のオーラが滲み出ている気がするんだが……気のせいだろうか?
『刹那ー♪』
「フゴブッ?!」
いきなり扉が開き、トラが飛び乗ってきた。膝をついていた刹那は対応が遅れ、見事に潰されていた。普通の人間なら骨折をしていただろうが、刹那は『心身強化』のおかげで身体の頑丈さが異常な程に強化されていたので無事だった
『ただいまー♪ あれー? 刹那どこー?』
「ぎ、ギブッす。マジで痛いから」
『おー、下にいたのかー♪』
とりあえず退いてもらった。人間として考えるなら、精神年齢5歳程度だから仕方ないけど……多分、そろそろ骨が折れるから飛び付くのは我慢して欲しい。可愛いから許しちゃうが…
「まあそれはそうと、トラ」
『あいー♪』
「メリークリスマス! ほら、ドングリでケーキ作ったから食べね♪」
『やったー♪』
喜ぶと同時にケーキにむしゃむしゃと食べ始める
うん。ケータイで写真撮らねば…
「刹那」
「ん? どうしたディアナ? あ、メリークリスマス!」
「あ、うんメリークリスマス。あ、あのだな……その、あのだな」
何故か話始めると急にモジモジとし始める。なんだ? お花でも摘みに行きたいのか?
「あ、そうだディアナ。ケーキ作ったから食わないか? それと、今日は早く寝ろよ? サンタさん来ないぞ〜?」
「うっ、あ、うぅー……! せ、刹那、コレ、やる! じゃ、じゃあな! もう寝るからな!」
いきなり、袋を投げられる。何か分からないが……とりあえず貰える物は貰っておこう
= = = =
真夜中、刹那はこっそりとディアナの部屋に忍び込む。別に夜這いではない。サンタの格好でプレゼントを持ってきたのだ
「……ディアナ。メリークリスマス♪」
そっと枕元に小さな包みを置いて帰って行く
この時、刹那は一番大事な事に気付かなかった。ディアナは寝ていなかったのだ。目を瞑っていただけだ
運命屋で言われた事が気になり寝れなかったのだ
「……うぅ、なんか私変だ。刹那が来たのに何も言えなかった」
ディアナは刹那が入って来た瞬間、文句を言おうとしたのだ。だが……一度、異性として意識したせいか、身体が硬直してしまったのだ
「うぅー、お婆ちゃん、恨むぞ」
今まで甘えていたのも、我が儘を言っていたのも、そして手を繋いだり、野宿の時に一緒の布団で寝たり(もちろん何もなかったが)していたのも刹那を【男】として意識していなかったからだ
というか、面倒見の良い兄みたいな感覚で見てた
そう、つまり今までの事を男女の中として考えると……年頃の娘として、アレなのだ
「うぅ〜、今までの私を殺したい〜!」
ちなみに……翌朝まで悶え苦しだので寝不足になり、食事中に寝て刹那におぶられて宿を出たのはディアナにとって黒歴史になってたりする