侵入者、つまり俺だ
グダグダです。
楽しんでいただけたら嬉しいです。
前回
レンが味方で嬉しいです。
―???サイド―
『お父さんへ
今日の朝方に何者かが我が学園の結界をすり抜けて来ました。しかも学園で一番強固な風壁結界をです。
まあ、結界に異常があった場合は職員室に報告が行くので問題は無いのですが…何故でしょう?嫌な予感がしてなりません。なんだか平穏な学園生活が失われてしまいそうで怖いです。
侵入者は今だに捕まっておらず、先生方に追われています。先生方はとても素晴らしい魔法使いです。すぐに捕まえてくれるはず…でした。
先生方は一度は侵入者を捕まえたそうですが、侵入者が口を開いた瞬間に先生方はその場に泣き崩れたそうです。お父さん。このままでは学園が大変な事になります。至急、騎士団の方を向かわせて下さい。出来ればシンゲンさんも来て頂けるとありがたいです。
貴方の娘より』
私は書き終わると同時に、手紙をお父さんの仕事部屋に送った。この時間ならお父さんがいる筈…でしたよね?あれ?違いましたっけ?
とにかくこれで明日までには解決できる筈です。
「・・・それにしても、いったいどんな人が侵入して来たんでしょうか?」
案外可愛い女の子かもしれませんね。
と、私が考えていると休憩時間が終わった。
「次は実戦の授業でしたね。」
正直やりたくないですね。
* * * * * * * * * * * *
―刹那サイド―
「何故こんな事になったんだ?」
意味が分からない。
ただ上から来ただけなのにいきなり侵入者扱いかよ。しかもレンとは離れるし…
「此処に逃げたぞ!」
さっきから追ってくる変な奴等(頭に角だの尻尾があるだの)が此処まで来たみたいだ。
「しょうがない。他の場所に行くか。」
今までいた場所から走り、コロシアムみたいな場所に向かう。
「居たぞ!捕まえろ!」「奴は闘技場に向かったぞ!」「殺せー!」
先頭にいた奴が俺を見つけ追い掛けて来た。
て言うか、
「お前等仕事やれよぉぉぉぉぉ!!」
* * * * * * * * * * * *
―???サイド―
私が闘技場に着くと何故かクラスの皆がフィールドの中心に集まっていた。
「何か有るのでしょうか?」
私も気になりフィールドに上がった。
そして近くに居た友人―リキュル・エルメス―に聞こうと…思ったが止めた。
何故なら鼻血を出しながら恍惚とした顔をしていたからだ。あの状態の彼女は話が通じない。
「・・・他の方に聞きますか。」
少し離れた場所に居るリクスに聞くと、
「凄く可愛い女の子がいるんですよ。」
と言われた。
可愛い女の子…気になりますね。
「すいませんが、私にも見せてくれませんか?」
リクスはすぐに私を中に入れてくれた。
そしてそこには…銀の髪に緑と赤の目を持つ少女がいた。
周りの方々は自分の弁当やお菓子などを与えようとしていたが「僕はお腹減ってないよ」の一言で終わった。
「あの・・・貴方は誰ですか?」
あまり怖がらせないように聞いてみると、
「僕はレンだよ。」
と教えてくれた。
「レンちゃんは何で此処にいるのかな?もしかして迷子なの?」
初等部の子が迷子になったのでは?と思い聞いてみた。だが返ってきた答えは信じられないものだった。
「違うよ。僕はお兄ちゃんを探してるんだよ。さっき変な人に追われた時にはぐれちゃって。」
と言われ、私を含めクラスの(リキュールを除く)全員が固まった。
何故ならこの時、私達の頭の中では
変な人→侵入者
と言う考えが浮かんだからだ。
そしてリクスが、
「許せない。」
と言ったのを聞き、皆が口々に叫んだ。
「侵入者を探せ!」「見つけ次第八つ裂きにしろ!」「殺せ!」「生きたまま地獄を見せてやる!」「心をぶっ壊してやる!」「凍らせてやるわ!」「生かさず殺さず絶望を見せてあげるわ!」
等々の言葉が飛び交う。
もちろん私も許すつもりは無い。
そこに担当の先生の使い魔が連絡をくれた。
私はそれを読む。
「・・・なんですって?!皆さん、侵入者が闘技場に向かってきたそうです!」
それを聞き皆が不敵な笑みを浮かべた。
「リクス。リキュルを起こして!」
リクスがリキュルを殴り起こした。
そして結界を張らせた。
「各自、自身の使える最強魔法の詠唱開始!」
皆は詠唱を全て言うまで五秒と掛からなかった。
「目標が侵入次第、全魔法を発射!」
そして一分程経過し、リキュルの結界に入ってきた。そして侵入者が来た瞬間、
「一斉射撃!!!」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドーーーーーン!!!!!!
「全魔法の命中を確認しました。」
私達が勝利を確信した時レンちゃんが、
「今のお兄ちゃんだよ?」
と、私に教えてくれた。私の背中に冷や汗が流れた。
「皆さん!彼に回復魔法を掛けてください!今すぐに!」
私の言葉を聞き疑問に思ている皆に
「今のはレンちゃんのお兄さんなんです!」
と説明した。
理由が分かった瞬間、全員の顔が青くなった。
そして回復魔法を唱え、彼に駆け寄った。
私はレンちゃんに謝るために話し掛けようとした。
…だがレンちゃんは動かないどころか笑顔さえ浮かべている。そして私に、
「お兄ちゃんだから大丈夫だよ。」
とあまりに信じられない言葉を言った。
その時、
「殺す気かお前等ーー!!!!」
私は声がした方を見ると彼に駆け寄った男子が宙に浮いた。
「え?」
* * * * * * * * * * * *
―刹那サイド―
「殺す気かお前等ーー!!!!」
さっきから何ですか?俺なんかしましたか?
今までのはともかく、今の下手すりゃ死んでたぞ?!咄嗟に『攻撃の無力化』を使ったから助かったが、流石にキレた。
その上追撃しに来たっぽい奴が何人も来るし。
あまりにムカついたから、本気のアッパーを喰らわした。
綺麗な弧を描き地面に落ちた。
周りの奴等は警戒したのか驚いたのか動きを止めた。だが知った事じゃねぇ…
「お前等、五体満足で出られると思うんじゃねぇぞ。」
周りの奴等を睨み、私刑宣告をしておいた。
* * * * * * * * * * * *
―???サイド―
今私は地獄を見ている。
比喩じゃない。本当に地獄だ。
私の前には、形が変わった友人達が転がっている。
ある者は腕を引き千切られており、ある者は全身の骨が折られている。これ等はまだ軽い方だ。
ある者は指から徐々に腐っていき泣きわめいている。ある者は自分自身で腹を裂き、中の物を引きずり出している。彼等は痛覚が残っているらしいく、イタイ、イタイと言い続けている。
「少しは反省したか?」
いつの間にか、彼は私の後ろにいた。彼を見ようとしたが恐怖で体が動かなかった。
私はなんとか体を動かし、彼の顔を見た。
そこで世界に砕け散った。
「・・・え?」
私が今まで見ていた世界は消え、地獄になる前の世界が現れた。
周りを見るとリクスが泣いていた。その近くにいるリキュルは気絶している。
「これに懲りたら喧嘩は人を見てからやろうな。」
彼女達の近くに彼はいた。彼が2人を追い詰めたのか?
彼は周りを見渡すと、
「おはよう諸君!目が覚めたみたいだな。」
と挨拶をしたのだった。
* * * * * * * * * * * *
―刹那サイド―
あれ。また俺視点かよ。
作者、今回変わりすぎだ。
まあそれはともかく、少し説明しないとな。
俺が使ったのは『邪眼』。目を合わせた相手に一分間、現実にしか見えない幻を見せる事が出来る眼だ。それで色々見せた訳だ。
だけど、俺と目線を合わせなかった奴が2人もいた。女の子だったんだけど、いきなり攻撃してきたから1人は気絶してもらった。
もう1人は気絶してくれなかったから、ちょっと酷いけど昔の古傷を抉った。
彼女達に忠告をしていたらいつの間にか周りの奴等が起きた。だから、
「おはよう諸君!目が覚めたみたいだな。」
と挨拶をした。
そのとき、やっとで追い付いてきた変な奴等が現れた。
「貴様・・・生徒に何をした?!」
「うっさいぞトナカイ。少し夢を見せただけだ。」
マジで五月蝿い。此処等で消そうかなコイツ?
「お兄ちゃん、お姉ちゃん達が怖がってるよ。謝らないと。」
「・・・あれ?いつからいたのレン?」
「最初からいたよ。それよりお兄ちゃん、お姉ちゃん達に謝って。」
「分かったよ。皆さん済みませんでした!」
レンに言われるままに謝った。この子には勝てません。
「・・・いえ、私達こそ済みませんでした。侵入者と間違え攻撃を仕掛けるだなんて。」
「・・・・ははは。」
乾いた笑いが口から漏れた。
「レイナさん。この子達は侵入者です。間違いではありません。」
「だから侵入者じゃないって。」
その時、誰かが報告しに来た。
「先生!第一騎士団の方々がいらっしゃいました!」
「そうですか!フフフ、これで貴方も終わりです。観念しなさい!」
いやなんで?
確か第一騎士団ってシンゲンさんとフラウがいる騎士団だよな?
そんな事を考えていると、
「第一騎士団団長シンゲンだ!賊が出たのは此処か?」
「第一騎士団副団長の補佐、フラウ・クロイツだ。死にたくなければ大人しくしな!」
2人が来た。
すると調子にのってるトナカイが2人に話し出した。
「よく来てくださいました。お2人がいてくださればすぐに侵入者を捕まえる事が出来ます。」
「世辞はいい。賊は何処だ?」
「シンゲンさん、俺とレンらしいよ。」
俺が話し掛けると(シンゲンさんとフラウを除く)周りの奴等が凍り付いた。
「あれ?刹那じゃねえか。」
最初に口を開いたのはフラウだった。
「よ、1日ぶりだな。元気してた?」
「ぼちぼちだな。で、なんでお前が侵入者になってんだ?」
「知らねえ。あっちに聞いてくれ。」
急に話を振られたトナカイは面白い程狼狽している。
「ふむ。よく状況が理解できんな。だが、」
シンゲンさんが口を開いた。
「彼は今日からこの学園の生徒になったはずだ。」
その一言でトナカイは真っ青になった。
「つまり、また冤罪になったのかお前。」
認めたくないがこれが俺の学園初日だった。