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俺の異世界物語  作者: 夜つ七
第一章:拉致られ異世界へ
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意味の無い緊急会議と護衛


前回

本当に色々あった。泣いてもいいですか?





―ウィリアム視点―




ん?今回は私の視点から話を進めるのか?

私よりもフラウやレンさんの方が良いと思うのだが…まあ、折角選ばれたなら頑張らせてもらおうか。



私は刹那君の願いを聞いた後、いつもどおり家庭菜園の整備をするつもりだった。

だが、刹那君のスキルがあまりに危険なため、今後の対応を決めるため緊急会議を開いく事にした。



「さて、皆も知っていると思うが先日我が息子のフラウの作品によって此処に来た少年がいる。彼の処遇を決めたいのだが、何か意見がある者は言ってくれ。」


私が話を切り出してすぐに何人もの貴族が馬鹿な事を言い始めた。


ある者は追放しろと、ある者は換金しろと、さらに過激な者になると暗殺しろと言う者までいる。



それは自分の首を絞める愚行だ。

追放した後、彼が他の国に雇われる可能性がある。それでは我が国と戦争になった時かなり不利だ。相手はこちらの作戦など視るだけで解るのだからな。

監禁など不可能だ。彼はフラウとの決闘で勝利している。しかも両者は傷を負っていない。これは実力にかなりの差が無いと無理だ。身内贔屓ではかもしれないがフラウはなかなか強い。シンゲンの弟子であり、第一騎士団副団長のリキュルの懐刀と呼ばれる程だ。第二騎士団団長のリクスですらフラウの事を認めている。そんなフラウが負けたのだ。並の騎士では話にならないし、もし捕まえる事が出来たとしても見張りにはリクス以上の騎士が居ないと抜けられてしまうだろう。

暗殺など失敗すればこの国にどのような被害がでるか分からない。場合によればこの国が物理的に墜ちる可能性がある。


そのような事では意味が無い。民には危険が及んではいかん。


「それらの意見は状況から見て現実的ではない。故に許可できない。」



意見を言った者は悔しそうだ。それもそうだろう。彼等は国の為ではなく、自分の安全の為に言ったのだから。



少し時間が経ち、ある者が案を出した。

「王よ、結界に封じ込めるのは如何でしょう?リキュル程の術者なら永久に封じ込める事も可能では?」



ふむ。確かに悪くない。むしろこれでダメならシンゲンに頼むしかない。

リキュルの結界は私より上だ。彼女の結界が破られたのは一度しかない。誰が破ったかは…言わなくても良いだろう。



「試してみる価値はあるか。誰かリキュルをここに呼び出せ。」



私が命令を出してすぐ、いきなり血相を変えた小さな少女――リキュル・エルメス――が飛び込んで来た。

あまりのタイミングの良さに今まで居たのでは?と思う程だ。



「何を慌てているのだリキュルよ?まさか隣国が攻めて来たのか?」


リキュルは肩を上下させながらこちらを見る。だがまだ話さない。どうやら呼吸を整えている様だ。

収まったのか彼女は話始めた。



「ある少年に結界を破られました。少年は最短ルートで城から逃亡したそうです。」



周りの者が驚愕の声を上げた。私も同じ気持ちだ。彼女の結界を破った者は私が知る限りではシンゲンただ1人。



「その少年はどのように結界を破った!?そして結界の発動から破界までにどの程度の時間だった!?」



あのシンゲンですら結界を破るのに2日程かかった。それも全力で暴れてだ。



「あまり信じたくないのですが、発動から僅か5分程度で破界されました。少年は歪な短剣で扉を刺しただけです。それだけで私の結界を破りました。いや違う。破ったなんて荒々しいものありません。まるで結界を解いたかの様でした。」



有り得ない…

流石にそれだけは有ってはならない。

結界を破るのと解くのでは意味が違う。

どちらも結界が消滅するが2つの消滅はあらゆる意味で正反対だ。


結界を破る

それは結界を破壊すると言うこと(ちなみにこの事を破界と言う)。これは完全な力業だ。破る事が出来る力があれば出来てしまう。


結界を解く

こちらは術者が自ら術を止める場合だ。結界は術者以外には解くことが出来ない。何故なら術者が1から創り出す世界だからだ。同じ結界はこの世に1つも無い。故に解除方法は術者以外知ることが出来ない。




それなのに逃げた少年は解いてしまった。結界に短剣を刺しただけで。



「その少年の特徴を覚えているか?容姿、服装、使用魔法、魔法属性、魔法量。何でも良い。覚えている事を全部教えてくれ!」



今すぐ少年を始末するか仲間に引き込むか。どちらかしか道は無い。



「容姿は…可愛らしい子でした。思い出すだけで鼻血が出てしまいそうな程に。服装は黒一色で統一した軍服のような物を着ていました。…もったいない。魔法は使用していないため分かりません。魔法属性も分かりません。」




ちらほら個人的な感想が出てきたが、重要な事が分かった。美しい顔立ちで軍服のような服を着ている。

軍服はレッドアークか、ガーダルシアしか着ることはない。何故ならその二国のみ軍隊だからだ。他の国は騎士団と呼ばれている。もっとも、鎧を着るか軍服を着るかの違いしかない。



だが魔法属性が分からないのは何故だ?魔力の属性は髪や目に出てくる。炎なら赤、水なら青、風なら緑、土なら黄色、雷なら金、木なら橙色。これ以外にもまだ数種類ある。だから瞳の色や髪の色を見れば分かるものだ。



「魔法属性が分からないのは何故だ?髪や目を隠していたのか?」


リキュルは首を左右に振った後ゆっくりと言った。


「私は、今まであのような髪や瞳の色を見たことがない。あんな綺麗で禍々しい色は見たことがない。私が見た色は黒でした。夜の闇すら生ぬるい純粋な黒。」



その特徴を聞いた時、私は少年の事を刹那君としか思えなくなっていた。


「済まないが、少年は何か言わなかったか?」


「外に出る道が分からないって言ってました。」


一瞬、膝の力が抜け倒れかけた。誰も気付かなかったようだ。良かった。



「済まないがリキュル。少しだけ待ってくるないか。会議を終わらせる。」



リキュルは頷き、私の後ろに立つ。そして軽く殺気を放つ。皆が静まりこちらを見た。



「皆の者。今日の会議は終わりだ。忙しい時に済まなかったな。各自解散してくれ。」



その言葉を言ってからものの数十秒で部屋には私とリキュルしか居ない。


「それでウィリアム。何か用事が有るんじゃないの?さっき私を呼んでたみたいだけど。」



私の名前を呼ぶことが出来る者はこの世に5人しかいない。内3人は家族だ。他の呼ぶことが出来るのはシンゲンとリキュルだけだ。


「ああ。だが必要がなくなった。私が頼もうとしたことは意味が無い様だ。」


「ちょっとウィリアム。あまり人を見くびらないでくれるかな?かな?」


リキュルは私の頬をつまみ伸ばした。


「ふぁめへふふぇ(やめてくれ)。」


「はいはい。離してあげるわよ。で、何か説明をくれないかしら。それなら納得できるから。」



「・・・私が君に頼もうとしたのは刹那君を結界に封じてもらう事だった。」


「どうしてそれを引っ込めるのよ?私の得意分野じゃない。刹那って奴は知らないけどさ。」


「だが結界は解かれた。ものの5分程度で。」



誰の事を言っているか分かったらしい。


「まさか知り合いだったの?あの可愛い子と?まさかそっちの道に目覚めたの?浮気!?」


「まて。何故真剣な話からそんな話に変わる?!それと私は浮気などしていない!」


いきなり訳の分からない話になってしまった。

いや確かに刹那君は女性に見える時もあるが…。刹那君の寝顔は可愛かったな。・・・ってまて私!いったい何を考えているんだ?!相手は男だぞ!?



「ウィ、ウィリアム?どうしたの、いきなり変な顔して。見てて不気味よ。」


「はっ!いや何でもない。うん何でもないよ。」


危ない。本当に危なかった。



「そう?なら良いけど。にしても詰まらないなあ。ウィリアムが浮気してるってお妃様に言いたかったのにな〜。」



まて今なんて言った?


「リキュル。お前は私を殺すつもりか?それはデス〇サロに装備無しで挑むくらいにヤバいぞ!?」


私は彼女の肩を掴みガタガタとゆする。



「ちょ、ちょっと落ち着いて!話が良く分からないわ。まずデスピ〇ロって何よ?」

む、そう言えば何だろう?

「済まない。だが絶対に言うなよ。そんな嘘。」



「はいはい。この私が嘘を付くと思う?」



今までさんざん付かれてきたんだが…

私の言いたい事が分かったのか彼女は、


「えっと、誰かが呼んでる気がするから帰るね。バイバイ!」



・・・逃げた。


さて、私も戻ろうかな。




* * * * * * * * * * * *





会議室から出て私室に戻る途中で刹那君に会った。

何故か疲れきっている。



「どうしたんだ刹那君?凄い汗だよ?」


「一日中、変態から逃げてた。」


「・・・それはなんとゆうかご愁傷様。」



刹那君は泣きそうだ。いや本当に泣いていたのかもしれない。



「王様、この城にはまともな奴は居ないのか?」


その何気無い一言に私は共感した。彼等は個性的と言うか何て言うか、あくが強い者ばかりだからな。



「確かに少し変わっているかもしれないね。シンゲンを筆頭にフラウ、リキュル、リクス、シオンは私もついていけない時があるよ。」


「いや人を結界に封印しようとしてたのに普通に話してるアンタも充分おかしいぞ。」


この言葉はあまりにも衝撃的で私の体を強張らせた。


「いやそこまで驚くなよ。別に殺したりしないよ。ただ忠告だけでもしようかなって思っただけだ。」



私はその言葉を聞くしかなかった。殺すつもりは無いと言われたが、彼から出ている殺気は普通じゃない。


「俺は楽しく過ごしたいんだ。邪魔なら出てってやる。だが監禁は御免だ。封印されるのはもっと嫌だ。殺されそうなら国を消す。」


彼が喋るたびに嫌な汗が出てくる。


そのまま、数秒が経過した。


「そこまで怖がるなよ。俺は仲良くしようぜって言ってるんだ。それとも脅しに聞こえたかな?」



どう考えても脅しにしか聞こえなかった。

消えた殺気にホッとしながら私は口を開いた。



「脅しどころか殺されるかと思ったよ。」


「そりゃ悪かったな。でも安心してくれよ。アンタが何もしてこないなら俺もしない。なんならアンタの護衛になっても良いぜ?金は貰うがな。」



少し魅力的な提案が出てきた。最近は味方すら敵になりかねない。



「どのくらいなら雇われてくれるのかな?」


「銀貨五枚でどう?」



彼が要求した金額はあまりに安い。護衛は金貨一枚でも安いぐらいだ。それが銀貨五枚…



「・・・刹那君?本当に銀貨五枚で良いのかい?流石に安すぎると思うのだが。」


「いやいや高いって。こっちも学校あるからほとんど来れないし。やりくりしてけば銀貨五枚で充分過ごせる。」



どこの主夫だ?と言うツッコミは呑み込んだ。



「分かった。なら私の娘の護衛を頼んで良いかな。あの子は体が強くないから心配なんだ。」


「良いぜ。銀貨五枚でその仕事を引き受けた。」



「いや金貨五枚で頼む。」


私と刹那君の間に火花が散った。


「いや銀貨五枚だ。無駄に金があると自堕落な生活になっちまう。」

「君はどんな生活を送っていたんだ?せめて金貨四枚にしてくれ。」

「なら銀貨六枚だ。」

「金貨三枚。」

「銀貨七枚。」

「金貨二枚。」

「銀貨八枚。」

「金貨一枚と銀貨五百枚。」

「銀貨十枚。これ以上は仕事をキャンセルさせてもらう。」



「・・・良いだろう。だが普通なら私と君のセリフは逆ではないか。」



「俺は普通じゃないらしい。昔、友人に変人扱いされたしな。」



「それはそうだろう。私だって君の事を変だと思う。それもシンゲン並みに。」


「・・・流石に傷付くな。とりあえず今日は帰って寝るよ。お休み。」



そう言い、彼は部屋へと帰って行った。



今日は刹那君の異常性がよく分かった。

これから何が起こるのか、私には想像も出来ない。





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