黄泉帰り…
皆様に楽しんでいただけていれば嬉しいです。
前回
三途の川から戻って来ました。…何か他にもあったような?
ここはアイギス城医務室。そこでは小さな女の子がある少年の顔を割りと本気で叩いていた。
最初は頬をつついていただけだったが、段々エスカレートしていったのだ。
「お兄ちゃん!早く起きてよ。地味なおじちゃんが呼んでるよ。」
地味なおじちゃん――ウィリアム・クロム・シルディア――はかなり困った顔をしていた。
ただ単に彼がこれからどうするかを聞きに来ただけだったのだ。 別に今すぐに聞く必要はない。
「あの〜レンさん?別に今すぐじゃなくても良いんですが…。」
少年の顔が腫れていくのを見て流石に止めに入った。だが少女――レン――は、
「ダメだよ!大事な話しは直ぐにしないと大変なんだよ。お母さんが言ってたもん。」
と、言うだけで叩くのを止めない(ちなみに少女の母親が言っていたのは軍事会議のことである)。
このやり取りをやっている間にも叩き続けている。いや叩くより殴るの方が的確かもしれない。
先ほどまでは手のひらだったが今は拳である。
グシャ、メチャ、グチャ
「・・・・・・・・って痛いわあごぶふぇ?!」
少年――如月 刹那―ーは流石に(すぐに意識を刈り取られそうになったが)起きた様だ。
それに気付いたレンは拳を止め、
「お兄ちゃんおはよう!」
と、花も恥じらう様な笑顔をむけたのだった。
* * * * * * * * * * * *
「おはようレン。また三途の川に逝くところだったよ。」
目覚めて二秒程でまた逝っちまうところだった。軽い皮肉を言いながら挨拶をしたが…
「川へ行くの?ならお弁当持っていこうよ。」
サラッと流されたよ。
ここは戦法を変えるか。とりあえず泣き落としをしてみるか。
「それよりレン。何で殴ったんだ?お前がそんな事をするなんて、お兄ちゃん悲しいよ。」
わざとらしく涙まで流してみせた。
だけどさ、やっちいけない相手っているよね。
「え、お兄ちゃん悲しいの? もしかして僕お兄ちゃんに酷いことしたの?僕お兄ちゃんに嫌われちゃったの?」
逆に涙を目に溜めてこんな事を聞かれた。コレをやられて俺は…
「い、いや別にレンが嫌いな訳じゃないよ。むしろ好きだよ。うん!」
「…ほんと?」
「本当だよ。俺はレンが大好きだよ!」
「わーい!僕もお兄ちゃん大好きだよ〜」
はい敗け。むしろ惨敗。多分これからも勝てない。
「刹那君。取り込み中済まないが話があるんだが…」
いつから居たんだよアンタは。もしかしてステルス搭載してない?
「話は良いですけど…今ですか?」
「………だよね」
現在の状況を説明しよう。
俺→黄泉帰り直後。ちなみに顔は悲惨な事になってる。
レン→俺に抱き付いた格好のまま熟睡中。そろそろ痺れてきました。
王→地味。話したい。
こんな感じかな?
「私の説明だけ簡潔すぎないかい?」
「気にするな。それより明日じゃダメか?」
ダメって言っても無視するけどね。
「ああ、それで構わないよ。じゃあ用件だけ伝えとくよ。……かくかくしかじか……なんだが。」
何故俺は“かくかくしかじか”で分かるんだ?
いや確かに便利だけどさ…
「分かった。明日までには考えておくよ。それで全部か?よし帰れ。」
「ああ、また明日。」
そう言い残し、王は出てった。
そして俺はある事に気が付いた。
「確か全身打撲(全治2週間ほど)にしたから簡単に動けないはずだけど…?」
う〜、面倒だけど明日聞くか。
次回辺りに新キャラを出したいです。