自分内裁判とご飯とクッキーと
前回
レンが人の姿になりました。 王様は…どうでも良いや。
さてさて、王様を全身打撲(全治2週間程度)したけど、これから何しよう?
「レン。どっか行くか?」
あれ?返事が無いぞ。
まさか迷子か?いや、むしろどこでもドアを使ったのかも…
「まったく、うちの猫は落ち着きが無いことで。」
さてレンは何処にいるのかな?ドアを開けばすぐだけどね。それじゃつまらないよね〜
だから、そこらを歩いて行こうかな。ほら言うじゃないか。えっと…急げば廻るだっけ?え?漢字が違う?しかも使い所が違うって?気にしない、気にしない。気にしたら負けだって。…誰にだろ?
「それはともかく、レンを探しに出発!!!!」
とりあえず食堂に行ってみるか。 流石にすぐには見つからんだろう。え?もし食堂に居たら?何でもやってやるよ。……いや冗談ですよ。
* * * * * * * * * * * *
「もきゅもきゅ…もきゅもきゅもきゅもきゅ…。」
居たよ。しかも美味しそうに色々食ってやがる。 かなり少ないけど… それにしても、“もきゅもきゅ”ってかわいいな〜
「もきゅもきゅもきゅ…ゴクン! あれ?お兄ちゃんだ。どうして此処にいるの?お迎えに来てくれたの?」
そしてレンは100万ドルの笑顔を向けてきた。
ぐばぁ!!!!!
あ、危なかった!少しでも抑えるのが遅れてたら辺り一面真っ赤になってた所だよ。 …あれ?辺り一面真っ赤だ。俺は鼻血出してないよ?
あ。 周りにいた兵士の人達がロケットもかくやの勢いで鼻血を噴いてる… ある意味シュールな光景………なのか?むしろ地獄絵図かな? 多分直視したんだな。兵士1は恍惚とした表情で逝ってるし、兵士2はビクンビクン動いてる。兵士3は「なんて綺麗な川だ。それに向こう岸にはたくさんの美人が…あれ?俺呼ばれてね?よっしゃぁぁ!今行くぜ!美女たちよぉぉぉ!!!!!」 って逝ってる。誤字にあらず。
「ってお前ら帰ってこい!それと最後の渡るんじゃねぇぞ!そっちに逝ったら帰れねぇから!」
さすがにそんな死に方は嫌だろ。にしても、此方にも三途の川あるんだ。
「お兄ちゃん。そんな変な生き物ほっといて、ご飯食べようよ。」
兵士3、お前に同情しよう。君は変な生き物に決定されてしまった。だが安心しろ。君の仲間も鼻血を噴いて倒れてるから。あと色々ごめんなさい。
「そうだな。よし!お兄ちゃんが何か作ってあげよう!」
…本当にごめんなさい。
「ワーイ!ありがとうお兄ちゃん!ならお兄ちゃんの分は私が作ってあげるね。」
「それは嬉しいな!じゃあ今すぐ作ろうか。」
俺よ、何故にそこまでスルー出来る?目の前には血の海が広がってるんだぞ?それ以前にせめて起こすぐらいしてあげよう。このままだと本当に逝っちゃう。
「でも流石にこのままじゃ嫌だな。目の前に死人がある部屋で食いたくない。血も凄いし。よし…」
おお!ついに俺が彼らを起こしてあげるようだ。さすが俺!優しいぜ俺!さあ、手始めにそこの兵士を起こすんだ。出来るだけ優し「ドグシャ」く……へ?
「起きろよカス共。お前らの血で部屋が汚れてんだろうが!さっさとてめえで掃除しやがれ!」
ちょっとぉぉぉ!?!?
いきなり何言ってんだよ!?それ以前に何してんの!何で蹴り上げてんだ俺!?変な生き物君が口から血を吐いたぞ!?
「このままじゃ…レンの飯が作れねぇだろうがああああああ!!!!」
ふざけんなああああああああああああ!!!!
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ただいま自分内全自分裁判中です。
裁判官(以下裁)「そんじゃ今日の仕事を始めるよ〜」
誰か(以下誰)「んじゃ前出ろよ」
欲望(以下よ)「俺は悪くねぇ!ただ本能に従っただけだ!」
理性(以下り)「ふざけるな!そんな理由が通じると思うな!」
裁「静粛に静粛に!とにかく落ち着こうぜ。自分自身で罵り合いは見てて虚しいぞ。」
よ・り「「ふざけた事を言うんじゃねぇ!それと虚しいって言うな!」」
裁「だから落ち着けよ。欲望はレンのために善かれと思ったために起こしただけだ。それは理性も分かってるだろ?」
り「当たり前だ!だけど他にもいくらでもやり方があるだろ!」
よ「そりゃそうだが…」
り「だったら少しは自制しろ!」
よ「いや無理だろさすがに。俺は本能だぜ?自制なんて出来ねぇよ。そもそもそれはお前の仕事だろ。」
り「あ」
裁「はい。それじゃ真犯人は理性と言う事で裁判を終了します。」
誰「ま、こんなの俺の妄想なんだけどね…」
自分内全自分裁判終了
犯人:理性
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よし…。なんとか落ち着いた。 それにしても、理性の野郎…。仕事をサボりやがって!
「お兄ちゃん!さっきから何ボーッとしてるの?」
「いやごめん。ちょっと自分探しをしてただけ。」
「?よく分かんないけど、掃除終わったよ。」
本当だ。血が消えてる。匂いすら残ってない。…どうやったの?
「それよりお兄ちゃん。あの人達どうするの?」
「え?」
「「「………………」」」
兵士の方々が……土下座してました。しかもめちゃ震えてる。 なんでさ?
「この度はすみませんでした!出来ることは何でも致します。だから、だから自分達の事を許して下さい!」
「別に怒ってないです。コッチこそ蹴り上げてごめんなさい。」
いきなり蹴るわ怒鳴りつけるわ、何様だよ俺…。
「許していただけるのですか!良かった、本当に良かった…」
「それにしても、何でそんなに震えてるんですか?」
「え?いや、王子の客人だと皆が言っていたので失礼をしたら首が飛ぶ、と思いまして…」
「違う違う!俺はあの馬鹿の発明品で酷い目にあった一般市民Aだよ。」
「そうですか。貴方もフラウ様の発明で酷い目に…」
「俺の時は何だっけ?…確か『どんなに魔法を受けても大丈夫な楯を作ったぜ!よし!お前が実験台になれ。』って言われて楯を構えたら、魔法をくらった瞬間楯が爆発して全治3週間の大怪我だったな…。しかも医者が里帰りしてて応急措置しかできなかった…」
「馬鹿野郎!それならまだ良いよ!俺なんて『今までに一度でも行った場所に一瞬で着くことが出来る帽子を作ったぜ!よしお前がやってみろ!』で、侍女達の部屋に出ちまった。しかも着替え中。侍女達はキレて花瓶で殴ってくるし、何人かは魔法で攻撃してくるし。挙げ句の果てに屋根から逆さ吊りにされたよ。そのせいで軽く高所恐怖症になりかけた…」
スゲー遠い目をしてるな。にしても楯が爆発って意味無いだろ。移動先が更衣室(着替え中)とか天国のち地獄だ。
「お兄ちゃん!ご飯作ろうよ〜」
「そうだね。そろそろ作ろうか。あ、皆さんも食べます?お腹減ってるみたいですけど。」
「良いんですか!?邪魔じゃないならお願いします!実は今日、料理長が休みでして。朝から食事を摂ってないんですよ。」
よくそれで仕事をサボらなかったな。俺だったらストライキおこすぜ?
「えー!二人で食べるんじゃないの?」
「コラコラ。そう言わないの。二人で食べるより皆で食べた方が美味しいんだ。それにこの人達が腹減りすぎて倒れたりしたら可哀想だろ? だから、今日は我慢してくれ。頼むこの通りだ。」
「しょうがないな〜。じゃあ次は二人で食べようね。」
おお、流石レンだ。話が分かるぜ。
「よし!それじゃ少し待っていてくれ。すぐに作る。…口に合わなかったら済まんな。」
「いえ大丈夫です!私達はあまり味を気にしませんから。」
「そうか!なら絶対美味いものを作ってやる!レン、バックから調理器具を取ってくれ!」
「はい!……お兄ちゃん、これで良いの?」
レンが持ってきたのはお玉、包丁、フライパン、まな板。
「流石レンだ!よく持ってきてくれたな。」
なでなで。
「えへへ〜♪」
凄い嬉しそうだな。よし。撫でた事だし、始めますか
* * * * * * * * * * * *
「凄い…」
「飯が輝いてる…」
「ヤバい。同じ料理だと思えない…」
喜んでくれるのは嬉しいけど、涎を拭きなさい。(ちなみに今回のメニューは和食です)
「凄い!私のより美味しそう!」
うん。この笑顔だけで俺は腹一杯だよ。
「よし!それじゃ食べますか。…ってまだ食おうとすんな!」
俺の言葉を聞き終わるとすぐに手を伸ばした兵士の手首を箸で強打する。
「え!?食べて良いんじゃないんですか!?」
そんなに痛かったのか、涙目で抗議をしてくる。だがこれだけは譲れんのだ。日本人としてな。
「この国ではどうかは知らんが、俺の国では食べる前にやることがあるんだよ。」
「何やるんですか?」
「いただきます。って言うんだよ。」
「いただきます!よし!」
言った瞬間、食らい付いたよ。そんなに腹減ってたのかよ。
「・・・・・・・・・・」
…あれ?食べたら動きが止まったぞ?どうしたんだ。
「えっと、どうしたんだ?」
「おい大丈夫か?…うわ、いきなり泣きやがった!」
「お兄ちゃん。これは何してるの?瞑想?」
「いや違うと思うぞ。」
ホントにどうしたんだ、この人は…。あ、動き出した
「美味い。今までの料理と全然違う。」
「そんな事で意識を飛ばすなよ。大袈裟だな。」
「そこまで喜んでくれるのは嬉しいけど、意識を飛ばさないでね。冷めると不味くなるから。」
とにかく喜んでくれて嬉しいよ。
「「「いただきます!」」」
皆も食い始めたな。美味そうに食うなこいつら。
「ごちそうさまでした。」
ってレン食うの早いな。しかもあんまり食べてないし。
「どうしたレン。口に合わなかったか?」
「違うよ。さっきも少し食べてたからお腹一杯なんだ。ゴメンねお兄ちゃん。」
「いやいや、別に構わないよ。残ったものはあの三人が食べるだろうし。無理に食べてお腹が痛くなったらダメだしね。」
無理に食べさせるのはダメだよね。好き嫌いは治すけどさ。
「いいの?ありがとう!」
「どういたしまして。それより、レンは何を作ってくれるのかな? さっきから楽しみにしてるんだけどさ。」
「あ、そうだ!クッキー作ろうと思ってたんだ。待っててね、すぐに作るから。」
よし。元気になったな。良かった良かった。
ブルル…ブルル…
あれ?ケータイがなってる。 アイツからか…
「ったく。面倒だな。えっと何々、
『差出人:オーディーン
題名:全部食べるな
さっきお前は食堂にレンが居たら何でもすると言ったな?ならレンのクッキーを全部食べるな。死にたくなければな。これはお前のために言っている。忘れるなよ。』…何だこれは?クッキーを全部食べるな?死にたくなかったら?何故?」
「出来た!お兄ちゃん出来たよ!」
お、出来たみたいだな。なんか気になるけどまあ良いか。全部食べなきゃ良いんだし。
「お、綺麗に焼けたな。凄く美味しそうだぞ。」
本当に美味そうだ。でも何故だろう?さっきのメールがあったせいか、嫌な予感がするよ。
「レ、レン。あの三人にも食べさせてあげよう。そんな美味しそうなクッキーを一人占めは良くない。」
「別に良いけど…。お兄ちゃんが最初に食べてね。」
「分かった。一枚くれ。」
レンから一枚受け取った。何故だろう?さっきより嫌な予感が酷くなったぞ。背中に冷や汗が出てるし、体が思うように動かない。
「レン。三人にも渡してあげよう。」「?良いけど…」
「「「もらって良いんですか!」」」
反応早いな…
「どうぞどうぞ。…どうなるか見とこう。」
「あれ?何か言いました?」
「いえ、気のせいでしょう。それより食べましょうか。」
バリバリ…バリバリバリバリバリバリ…ゴクン
「美味いな。」
生地はサクサク。味はやや甘い。売ってる物と遜色ないな。 どこが危険なんだ?
「美味い!こんなに美味いお菓子は初めてです!」
「お前食い過ぎだ!後は全部俺が…」
「ふざけた事を言うんじゃねぇ!全部俺のだ!」
山のようにあったクッキーがもう無いや。…まだ2分もたってないだけど…
「あれ?何か違和感があるような無いような?」
何だろう?兵士達の様子が…。顔面蒼白、全身痙攣、瞳孔が開きっぱなし。唇が紫色。しかも同じ姿勢で動かない。 …あれ?何だ。俺の体が冷たい。冷や汗が止まらない。服が重い。いや体が重いのか?
訳の分からないまま俺の意識は飛んだ。
本当になんでさ?