表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

2

翔太郎と外に出ると、普通の光景がそこには広がっていた。異常事態はどこにも見当たらない。

「さて、どこ行きますか?」

 翔太郎と歩きながら相談する。まだどこで食べるか決まってないのに、2人の足は自然と動いている。

「決まってるだろ。いつもの油そば屋だよ。」

 2人で昼食をとる時は決まって油そばを食べる。店も同じで、いつもすぐ近所の油そば屋だ。あそこの油そばは不思議と飽きがこない。味変が簡単に出来るのがいいのかも。

 

 

 そんな事を考えながら歩いていると、油そば屋に着いた。駅前だと言うのに、いつもながら繁盛していない。

「大将、やってるかい!」

 翔太郎が勢いよくドアを開けて店内に入る。細長い店内。右側に通路とカウンター席があって、左側に厨房がある。そして、店長は大抵厨房にいる。しかし店長からの返答はなかった。

「いらっしゃいませ。翔太郎さん、あやかさん。」

 代わりにそこに居たのは店長の一人娘のみおちゃんだった。日に焼けた肌に、短く切りそろえた髪。まだ高校生だが、休みにはこうして店を手伝っているらしい。

「あれ、店長は?またいつものヤツ?」

「そうなんです。お父さんまたお店サボってどっか行っちゃったんですよ。」

 翔太郎の問いに、みおちゃんは申し訳なさそうに言う。

「またなの?店長もよくやるわね。」

 まあ、店長の事なんてほおっておけばいいか。

「とりあえず、油そば1つちょうだい。」

「オレも同じので。」

「それが……お父さんがタレの油も持っていってしまって。今日は油そばお出しできないんです。」

「えっ?それホントなの?」

 思わず聞き返す。油そば屋が油そばを出せないなんて、そんな話ある?しかも店長のせいで。

「はい……すみません。」

「みおちゃんが謝らなくていいのよ。それなら今日はオニオンチーズ丼でもいただくわ。」

「オレはチャーシュー丼をお願い。」

「本当にすみません。お父さんが帰ってきたらお母さんによく言って貰うので。」

「ははっ。そりゃいい。店長の奥さんはおっかないからなあ。」

 いつものように会話を楽しみながらお腹を満たした。この油そば屋が持っているのはみおちゃんのおかげだろう。

 その帰り、翔太郎と店長の事を話した。

「さすがにおかしいわよね。タレに使う油を持っていっちゃうなんて。」

「ああ。これもなんかのことわざなんだろうな。」

 


「ふう。疲れた。」

 家に帰るなり、翔太郎はソファに倒れ込んだ。

「全然歩いてないでしょうが。つくならもっとマシな嘘にしなさいよ。」

「いやいや、俺が今まで嘘をついたことがあったか?」

「数え切れないほどあったわよ。」

 翔太郎はすぐ軽口をたたく。

「それはお前が嘘だと思ってるだけだろ?実際は全部ホントなんだぜ。俺が実は超大金持ちってのもホントだし、超能力を持ってるってのもホントだし、次期総理大臣ってのもホントなんだ。」

「はいはい。そんな事言うのは大学生の内だけにしといてね。」



 その時、外で大きな音がした。

「ゔぉおおおおおおおお!!」

 その音は、何回も何回も聞こえてきた。奇妙なのは、その音がだんだん大きくなってきていること。

 そして"それ"は鍵をかけていなかったドアから容易に侵入して、リビングまでやってきた。

「お、鬼?」

 そこには鬼がいた。言い伝え通りの、赤い肌と巨大な金棒。

 人間は野性を失ったとか、そんなの嘘だと分かった。あたしは今、本能的に恐怖を感じてるんだから。足がすくんで動かなかった。それは翔太郎も同じようで、2人とも微動だに出来ない。その静寂を破ったのは鬼だった。

「オマエ、ウソツキ。」

 鬼は翔太郎に近づき、金棒を振り下ろす。

「うおおっ!」

 間一髪、翔太郎は横に転がって避ける。金棒が床にめり込む。逃げないと。

「翔太郎こっち!」

 呆然としたままの翔太郎を大声で正気に戻して、リビングから飛び出して、ドアから逃げる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ