やさしい花
僕は君へのやさしい花を探して生きてゆく。
僕、花岡 誠一は今高校の階段前で・・・
「好きです!付き合って下さい!」
告白された。
彼女、矢島 美代は頼み込む様に頭を深く深く下げる。
僕は断る理由も無いので
「うん。良いよ」
と返事をする。
すると彼女は(パアッ)と笑顔になる
「本当ですか!?」
「う、うん」
僕は彼女の勢いにたじろぎながら答える。
彼女が僕の手をとってブンブンと上下に振り回す。
「ありがとうございます。ありがとうございます。この御恩は一生忘れません。」
僕は喜びすぎだと思うのだけど彼女から見れば好きな人に付き合ってくれるということはそれ程嬉しいことなのだろう。
・・・ちょっと行き過ぎな感じがしないでも無いけど
僕は軽い気持ちで付き合ってしまったことに少し後悔した。
こうして僕と彼女は付き合うことになった。
あの日から一ヶ月。
僕は矢島さんと遊園地に来ていた。
「ほら、誠一君次あれに乗ろ?」
矢島さんはジェットコースターを指差しながら僕に聞いた。
「えっ!?あれに乗るの?」
「・・・もしかしてジェットコースターに乗るの恐いとか?」
矢島さんはニヤニヤしながら僕を見る。
「そ、そんなこと無いよ。僕は男だからね。こ、こんなの恐くも何とも無いよ」(ちょっと変だったかな?)
僕は内心びくびくしながら矢島さんの言葉を待つ。
矢島さんは(クスッ)と笑って
「そっか。じゃあ行こうよ」
矢島さんがニヤニヤしながら僕の腕と自分の腕を絡めて引っ張る。
(矢島さんに格好悪い所知られた)
僕は内心で(シクシク)と泣いた。
ジェットコースターは何とか無事終了して暗くなってきたので僕達は最後に観覧車に乗った。
(ガタンッガタンッ)
観覧車が少しずつ動きだす。
「・・・矢島さん今日はありがとう。楽しかったよ」
「・・・・・・・」
僕の言葉に矢島さんは窓の外を見ながら何も返してくれなかった。
少し怒ってるようにも見える。
「矢島さん?」
僕はおそるおそる矢島さんに聞く。
「・・・・いつまで・・続けるの?」
矢島さんが重苦しく口を開く。
僕は意味が分からないので尋ねる。
「何をいつまで続けるの?」
矢島さんは窓の外から僕に目線を変える。
「・・・いつまで矢島さんで続けるの?」
「えっ?」
僕はそれだけしか言えなかった。
彼女の言っている意味が分からないからだ。
僕が何も言わないから矢島さんが(はぁ)とため息をついて僕を見つめる。
「・・・・私達が付き合ってからもう一ヶ月だよ?もう名字じゃなくて名前で呼んでよ。それとも・・」
矢島さんが僕の顔を覗き込む。
「私の名前を忘れちゃったとか?」
僕は首を横に振る。
「その・・・美代・・さん・・・」
僕の言葉に美代さんが(ギュッ)と抱き着いた。
「わっ!?美代さん。どうしたんですか?」
僕がそう聞くと美代さんはさらに力を込めながら首を振る。
「ううん。何でも無いよ。ただこの方が良いからこうしてるだけ」
美代さんが僕の方に顔を上げて目を閉じる。
「えっ!?ここで?」
僕は驚きながら辺りを見回す。
そして、僕は美代さんと唇を交わした。
遊園地からの帰り僕は美代さんの家の前にいる。
だけど、そばに美代さんはいない。
美代さんにここで待ってるように言われたのだ。
僕が美代さんを待っていると美代さんの家の扉が開いた。
中から現れたのは僕が待っていた美代さんだった。
「待たせてごめんね」
「ううん」
僕は首を振る。
僕はある所に目がいった。
「・・・それ・何?」
僕は美代さんの手に握られている・・・・・花を見た。
「これ?これの為に誠一君に待っててもらったんだよ」
美代さんが僕の近くに来て握っている白い花を僕に渡す。
「私ねこの花好きなんだ。だから誠一君にあげるね」
美代さんが僕にやさしく微笑んだ。
僕はバイト(喫茶店)から家に帰ろうと店を出る。
だけど僕は店を出てすぐに立ち止まった。
何故か?それは店の前で僕の彼女、美代さんが電柱に寄り掛かっていたのだ。
僕は走って美代さんの所に行き尋ねる。
「美代さん。こんな所で何してるんですか?」
美代さんは僕にやさしく微笑む。
「待ってたんだよ。」
美代さんはそう言って僕の帰る方向に歩を進める。
僕はこの時彼女がとても愛しく見えた。
彼女のやさしい笑顔をずっと見ていたいと
僕は自転車を押して歩いて僕達は何も無い空を見上げた。
その時、僕は決めたんだ。
君を守りたいとずっとそばで歩きたいと
僕達が付き合ってから二ヶ月が経った。
この日は最悪な一日となった。
僕はいつもと一緒で駅に待ち合わせをした。
ただ今の時刻11時半。待ち合わせの時間から30分が過ぎていた。
「美代さん遅いなぁ」
僕が辺りを見回すと美代さんがいた。
美代さんは走りながらこちらに手を振る。
(キキィー)
(バンッ)
車のブレーキ音と何かがぶつかる音が聞こえた。
美代さんは・・・・いない。
代わりに車が青の横断歩道を横切っている。
僕は突然なことに理解は出来なかった。
その場所に人だかりが出来る。
僕は一歩一歩ゆっくりと足を動かす。
青から赤に変わった横断歩道が見渡せるくらい近くに行くと・・・
美代さんが体から赤い何かを体中から出して地面に横たわっている。
その赤い何かはどんどんと広がっていく。
「・・美・・・代・さん?・・・美代さん・・・・美代さん!」
僕は大声を出して美代さんに近づく。
「美代さん!美代さん!!美代さん!!!」
僕はいつまでも美代さんを呼び続ける。
いつか美代さんが返事をしてくれると信じて・・・
僕は手術室の前で手を組みながらただただ祈り続ける。
不意に手術室の扉が開かれた。
中から医者の様な人が出て来て美代さんの両親がその人に尋ねる。
「美代は、美代は大丈夫なんですか?」
「先生。うちの娘は大丈夫ですよね?」
父親・母親と続く。
それに医者が気まずそうに答える。
「すいません。最善を尽くしたのですが。あとは患者さんのお力に頼るしか・・・」
美代さんの両親はその場に座り込む。
美代さんの病室で両親は美代さんの手を握り閉めていた。
僕は何も頭に入らなかった。
頭の中にあるのは美代さんとの思い出だけ、
僕は今までの美代さんを見ていた。
(私ねこの花好きなんだ。だから誠一君にあげるね)
と言ってやさしい笑顔を見せた。あの時だけを。
僕は・・・走った。
病室を出て病院を出る。行く所が決まっている訳では無いただただ周りを見ながら走り続ける。
「・・・ハッ・・・ハッ・・・ハッ・・・ハッ・・・ハッ」
川岸・公園・花が咲いていそうな所を隈なく探す。
だが、花は見付からなかった。
僕は自分の家に飾っている美代さんにもらった白い花を持って美代さんがいる病院に向かった。
「・・・美代さん!」
僕は勢いよく美代さんが居る病室の扉を開いた。
美代さんはまだ目を覚ましていない。
僕は美代さんの近くに行き、手に美代さんからもらった白い花を握らせてその上から僕の手で握る。
「美代さん。目を開けてくれ」
僕は祈るように美代さんの手を握った。
……突然。僕の後ろから誰かが抱き着いてきた。
「何を書いてるの?」
「ああ。美代さんと僕の出会いを本に書いてるんだよ」
僕はその人に笑顔で答える。
「ふ~ん。ねぇどんな出会いだったの?見せて」
「どうぞ」
僕はその人に今まで書いていた本を渡す。
その時、台所から声が聞こえた。
「澪、誠一君ご飯だよ」
「わかった」
「は~い」
僕・澪という順で声を出す。
澪は僕の子供だ。
僕は台所に行き声の人物に声をかける。
「なあ。あの白い花何処に咲いてたの?」
するとその人物は(クスッ)と笑って
「それは秘密ですよ」
その人物、美代さんが僕と唇を交わした。
僕は君へのやさしい花を探して生きて行く。
BJです。
二作目が出来ました。
これを読んで感想・評価等をくれると嬉しいです。
あと、もっとこうした方が良いとかの知恵も貸してくれたら嬉しいです。
ではまた何処かでお会いしましょう。